沢田チャレンジが語る、時代の変化と音楽の挑戦「全部のオセロをひっくり返したい」

「最初にロックを楽しいと思ったのはユニコーン」

ーーわかりました。ここからは音楽の話をしましょう。こういう話ばっかりしてると、得てして「戦略ばっかりで音楽の話をしてない」とか言われがちなんで。

沢田チャレンジ:ははは、そうですね。

ーーまず、ザ・チャレンジのルーツはどういうところにあるんですか?

沢田チャレンジ:自分の音楽遍歴を紐解くと、最初にロックを楽しいと思ったのはユニコーンなんです。それまでロックンロールは不良の音楽だというイメージがあって。僕は育ちもよかったし、タバコも吸わなかったし、そういうロックには正直あまり惹かれなかった。でも、ユニコーンと出会って「ロックって面白くてもいいんだ」「ロックバンドってこんな自由なんだ」ってことを初めて知ったんです。だったら自分もその世界に飛び込んでみたいと思うようになった。それが最初ですね。

ーーユニコーンはどのアルバムが入り口になったんですか?

沢田チャレンジ:『ケダモノの嵐』ですね。そこから『服部』に戻って、最後にデビュー作の『BOOM』を聴いて「最初はこんなだったんだ」って知ったという。だから、活動休止前、中期から後期にかけてのユニコーンにすごく影響を受けてます。メンバー一人一人が曲を書いてヴォーカルを担当しているのも面白かったし、かつ過去の音楽へのオマージュもたくさん入っていた。ユニコーンのおかげでビートルズも知ったし、いろんなUKロックを知ったんで。

ーー「LOVEってる」は昭和の歌謡曲というか、80年代の男性アイドルっぽい曲ですけれど。これは?

沢田チャレンジ:これは今回たまたまアイドル歌謡をやった曲がリード曲になっているということなんです。昭和の歌謡曲がコンセプトのバンドって思われがちなんですけど、実はそういうことではなくて。そういうのって、ユニコーンでもあったと思うんです。アイドルっぽい曲をあえて書いたり、TM NETWORKのパロディーをやってみたり。だから、ザ・チャレンジが今やってることって、自分の中では全然違和感がなくて、外れているつもりもない。それこそウルフルズとかも通ってきたので。

ーー10代の頃の自分のスターだったものって、ユニコーン以外には?

沢田チャレンジ:その頃は聞いてる音楽もお洒落じゃないとモテない時期だったんで、渋谷系が大きかったですね。小沢健二さんがいて、スチャダラパーがいて、TOKYO No.1 SOUL SET、かせきさいだぁとかのLBネイションの流れがあって。毎日学校帰りに渋谷のHMVに行って、新譜を試聴してLPを買ってました。そっちのサンプリング文化の影響も受けてるんですよ。

ーーなるほど。さっき言ったようにゼロ年代にはあんまり影響は受けていない?

沢田チャレンジ:そうですね。ゼロ年代は僕にとって氷河期でした(笑)。その氷をとかしてくれたのがももクロだった。やっぱり違うところから新しい文化が始まってたんですね。それを見てこっちにもやっと春が来るぞと思った。待っててよかったなって気分ですね。今は10年間の記憶がないくらいの気持ちですから。2005年くらいから10年経って、やっと氷が溶けて世に出てきた感じがある。だからなんか浦島太郎みたいな感覚はあるんですよね。周りに同じようなバンドが一人もいない。

ーーザ・チャレンジの楽曲の方向性についてはどうですか? 曲調の幅は大きいですよね。

沢田チャレンジ:ジャンルにはこだわってないですね。ザ・チャレンジはメンバーそれぞれが曲を書くので、それぞれに聴いてきたものをベースにその時に合わせて最適化して出すのがいいと思っています。昭和の歌謡アイドルみたいなこともやったし、ど真ん中のロックンロールもやるし、それこそ四つ打ちのフェス向きの曲もある。それでいいと思ってます。

ーーメジャーデビューして、やれることもさらに広がりますよね。

沢田チャレンジ:そうですね。メジャーデビューしたかった一番の理由がそれなんです。やれることが多くなる。ストリングスを入れたり、もっと壮大な遊びができる。それがメジャーの醍醐味だと思うんで。今まではバンドで再現できることしかやってないんですけれど、次からはそういう音を入れていこうと思っています。

ーーメロディーについてはどうですか? どんな曲調でもザ・チャレンジのメロディーには共通点がある気がしますけれど。

沢田チャレンジ:メロディーに関しては、シンプルかつキャッチーで、子供でも口ずさめるものっていうのは意識してますね。サウンドは凝っててもいいんですけれど、メロディーは絶対にシンプルであるべきだと思っています。自分自身がそういうものが好きだし、自分がやりたいことは、ユニコーンがそうであったように、ロックの楽しさに気付いていない人にそれを届けることだから。そのためには玄人好みのメロディーを作ってもしょうがない。3歳児でも口ずさめるような、歌詞も一回聴いたら頭に残るようなものにする、というのは意識してますね。それはザ・チャレンジにある唯一のルールかもしれない。

ーーなるほど。

沢田チャレンジ:地方まで届いてほしいんですよ。地方のホストがカラオケで歌えるようなロックバンドが今の時代にいないのがもったいないと思うんで。たとえばウルフルズの「ガッツだぜ!!」はそこに届いた。そういうところに行きたいんですよね。

ーーメロディだけじゃなく歌詞も大きいですよね。口ずさめるものにしている。

沢田チャレンジ:そこもすごく大事にしてる部分ですね。言語化できるって、すごく大きなことなんですよ。音楽って本来は言葉にしにくいものなんですけれど、それを言語化することによって流通するものになる。例えば「ザ・チャレンジってどんなバンド?」って聞かれた時に「5色のサングラスのバンドだよ」って言えるってことはすごく大事だし。たとえばフェスで30分ライブを観てメンバーの名前を覚えて帰るってことってまず100パーセントないと思うんですよ。「ヴォーカルの人、格好よかったね」とか「右にいた人がよかった」とか、そういう言い方になる。でも、ザ・チャレンジは色で記号化できる。

ーーなるほど。確かにそうですね。

沢田チャレンジ:曲を作る時にもそれはすごく考えてますね。フェスで6曲やったら、それが全部「なんとかの曲」って言えるようにしている。それをすごく意識してます。たとえばタイトルにインパクトがあったり、曲の中に振り付けがあったり。何かしらキーワードが言えるという。

ーー「花金ダンス」みたいなキーワードがあったり。

沢田チャレンジ:まさにそうですね。あとは「ツイッター」ってタイトルの曲があるんです。サウンドは90年代のJ-ROCKみたいな感じなんですけれど、サビで「なうなうなう」って歌ってる。そこにインパクトがあるから覚えてくれる。そういうことは考えてやってますね。あと、ザ・チャレンジって、音楽的な面白さでもアイドルの人達と同じようなところがあって。

ーーというと?

沢田チャレンジ:成功するアイドルの人達って強力な作家陣がついてるじゃないですか。90年代に活躍したバンドマンが裏方に回ってたりする。ザ・チャレンジは自分達がバンドマンなんですけど、そういう作家業をやってるヤツもメンバーにいるんです。だから自分達が狙いを定めたところに確実に曲が到達するんですよ。自信満々に言ってしまうと、そこがウチの強みだったりする。戦略を立てて、そこに向けて狙い通りの曲を仕上げていく。そういう作業がバンド内で完結するのが他とは違うところなのかなと思ってますね。

ーー作家としての自分と、ポップアイコンとしての自分が両方いる。それはどう共存しています?

沢田チャレンジ:その二つは完全に分かれてますね。作る時の自分とやる時の自分はスイッチを入れ替えてる。ステージに立つ時の自分はアイコンになる。だから、アイドルと作家の関係に近いという。やっぱり渋谷系を通ってきてるし、ピチカート・ファイヴも大好きなんで、ポップアイコンを立てることで世の中に浸透するっていう仕組みを見せてもらってきたんです。ただ、そこにはちゃんとメッセージ性もある。ザ・チャレンジのライブって、ワンマンだと最後にお客さん泣いてたりするんですよ。それは、沢田チャレンジが本当に思っていること、歌いたいこと、伝えたいことが届いているからだと思うんです。

ーーわかりました。今はザ・チャレンジというバンドが華々しくメジャーデビューしたタイミングなわけですが、今後の課題はどういうところにあると思いますか?

沢田チャレンジ:課題だらけのバンドだとは思うんですけど(笑)。ただ、これは今回柴さんにインタビューしてもらいたいって思った理由でもあるんですけど、僕達って疑われたまんまなんですよ。海のものなのか山のものなのか、探ったままの人達がすごく多い。全部のオセロをひっくり返したいんですけど、全然まだまだなんですね。自分がやってることには自信があるし、絶対楽しいことをやれてると思ってる。お客さんもそれに反応して集まってくれているんです。でも、音楽通の人達に届いてないんですよ。バンドマン達には微妙な感じに見られてるし、メディアとかライターの人でも、賛同してくれたり、面白がってくれる人もいるんだけど、なんか様子を伺っている人達が多い気がする。ニセモノなんだろうなって見られてるのがすごく悔しいんで、音楽に対しては真摯なんだってことくらいは伝えたい。ちゃんと聴いてもらえれば、そのことはちゃんとわかってもらえると思いますからね。

(取材・文=柴那典)

■リリース情報
『スター誕生』
発売:2015年4月22日
[初回生産限定盤]
内容:8曲+ボーナス・トラック3曲
価格:¥1,800(税別)
品番:UPCH-29182

[タワーレコード限定盤]
内容:8曲+スライダーポーチ&メジャーデビュー記念リストバンド(全5種・ランダム封入)
価格:¥3,300(税別)
品番:PRON-1903
[封入特典]
1. メジャーデビュー記念ライブでのイベント参加券付(全員対象)
2. ジャケット撮影時使用グッズプレゼント応募付(サイン入りバット1名 / サイン入りボール1名 / サイン入りグローヴ3名)
※ 2形態共通

収録曲
僕はアイドルキラキラ (star tanjo mix)お願いミュージック ~メジャーバージョン~LOVEってるマイガール (star tanjo mix)君と◯◯会いたい 会いたい ちょー会いたい ~メジャーバージョン~花金ダンス [ボーナス・トラック](初回生産限定盤のみ)お願いミュージック(沢田チャレンジの歌唱&ダンス指導 ver.) / マイガール(独唱) / キラキラ (スーパーマーケットBGM remix)

■ライブ情報
ザ・チャレンジ メジャーデビュー記念ワンマンライブ 「ブリッツチャレンジ ~スター登場!」
6月6日(土) 赤坂BLITZ

http://thechallenge.jp/

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