和田 唱が語る、ポール・マッカートニーへの“愛”　「いつも祈りながらライブを観ている」

　ポール・マッカートニーが4月21日から28日に来日記念公演を行うことを記念し、ムック本『ぴあSpecial Issue ポール・マッカートニー来日記念号2015』が、4月2日に発売された。同書のメイン企画である「Welcome Back PAUL！」では、黒柳徹子、浅井愼平、井上夢人、浦沢直樹、佐野史郎、倉本美津留、森川欣信など、さまざまな文化人・著名人がポールについて語るほか、岸田 繁（くるり）とOKAMOTO'Sによる対談や、山崎まさよし、寺岡呼人、仲井戸“CHABO”麗市へのインタビューなど、ミュージシャンがポールへの思いを明かしている。

　リアルサウンド編集部のある株式会社blueprintが編集制作を行った同書。ここでは、中学生の時にポール・マッカートニーの初来日を観て以来、これまでずっとポールのライブに足を運んでいるという和田 唱（TRICERATOPS）のインタビューを紹介したい。

「『お願いだから、ポールの声が出ますように』って、どうしても力が入っちゃうんです」

――和田さんも、2014年の来日公演を楽しみにしていたそうですね。

和田：去年は本当に大変でした。来日のタームがちょっと早すぎるな、とは思っていたんですけど、国立（国立競技場）での開催っていうのがよかったですよね。武道館と同じ時期、東京オリンピックの1964年の時の建物で。ビートルズのときに武道館でやって、そこから時を経て、もうすぐ閉まる国立でやるっていうのが感慨深いというか。で、電車に乗ってポール情報をネットで見ていたらツイッターで中止らしい、と流れていて。1980年の来日中止を知っている人は結構いると思うんですけど、僕らの世代はそういうのがなかったので。「いや、嘘だろう」って思いましたけど。原宿で降りて国立競技場まで歩いていたら、帰ってくる人たちがいっぱいいるわけですよ。本当にやらないんだって。でも僕は会場まで行きました。そしたらスタッフの人が拡声器を持って「本日のポール・マッカートニーのライブは中止・延期になりました」って言っていて。中止が残念だったのはもちろんですが、一番心配だったのはポールのことでした。とりあえずその日は物販で、パンフレットとトートバッグを買って、国立の写真を撮って帰りました。次の日は家を出る前に中止ってことがわかって。でも、その日もやっぱり国立競技場に行ったんです。

――どうしても、この目で確認したいという思いで。

和田：やらないのわかっているのに行っちゃって、また写真を撮って帰りました。2日間もキャンセルっていうことはよっぽどの容態なんだなと。ネットでは入院したとか、いろんな情報が出てくるわけですよ。下痢と嘔吐が止まらずに、緊急手術をしたとか。俺それで、精神的に参っちゃって。ポールっていったらずっと小さいときから好きで聴いていて、もう、ちょっとした親類のおじさんみたいな感じがあるので（笑）。

――それほど親しみがあるんですね。

和田：だから心配で心配で、帰って、2日くらい寝込みました。

――前年の2013年のライブの体験がよかっただけに。

和田：そうですね、その前が2012年で、11年ぶりで。そのときに「また来ます！」って最後に言ったんですよ。だからずーっと待ってました（笑）。ポールはいつも言うんですよ。「See you next time!」の後に「また来ます」って。

――2013年でいちばん記憶にあるのはどんなシーンですか？

和田：僕、ポールのコンサートって、はっきり言ってあんまり楽しめてないんですよ（笑）。緊張しすぎちゃって。あと、ポールに常にエネルギーを送ってるんで。

――気を送るみたいに？（笑）

和田：そうなんですよ。今でもポールは元気とはいえ、当時の曲も原曲キーで歌うんですよね。みんなが慣れ親しんでいる曲をそのまま聴かせたい、っていうこだわりがすごく強い人だから。気持ちはわかるんですけど、高いキーの曲も多いですし、そういうときは「お願いだから、ポールの声が出ますように」って、うっ！ って力が入っちゃうわけなんです。そうすると、思いが伝わってポール、ちゃんと出るんですよ（笑）。もちろん楽しんで盛り上がりますけど、無事に最後まで終わりますように、いいライブになりますようにって祈りながら観ている感じですね。もう愛ですよ。で、始まったら始まったで、終わってほしくなくなっちゃうから。もうさびしいんですよね。

――すごく複雑な感情ですね。

和田：そういういろんな感情が渦巻きすぎるんです。ポールのコンサートっていうのは。