日本のものづくりはAI時代に何を担う? NVIDIAが示した「フィジカルAI」の可能性

NVIDIAが語る日本の勝ち筋

 AIを搭載したロボットが、工場や物流の現場で働く。その未来に向けて、日本のものづくりはどのような強みを発揮できるのか。

 9月15日、東京・セルリアンタワー東急ホテルで開催された「第4回 GMO大会議・秋・フィジカルAI 2026」。エヌビディア合同会社 ロボティクス事業部 事業部長の平野一将氏は、現実世界を認識し、判断して動く「フィジカルAI」の開発と、日本の可能性について講演した。

「第4回 GMO大会議・秋・フィジカルAI 2026」の会場

 講演の冒頭に流れたのは、日本とNVIDIAの関係を振り返る映像だった。「カンバン」「カイゼン」「現場」といったものづくりの考え方から、ゲームやロボットへと話題が広がっていく。セガとのゲーム機開発にまつわるエピソードも紹介され、その協力がNVIDIAの存続と、その後の技術開発を支えたと語られた。

 ゲームやコンピューティングで築かれた関係は、AI、そしてロボティクスへと続いていく。平野氏は、この映像に日本のものづくりを復興する思いが込められていると説明した。

ロボットに必要な経験は、Webだけでは集まらない

 講演の中心となったのは、AIを育てるデータの問題だ。平野氏は、フィジカルAIにはWeb上の情報を学ばせるだけでは足りないと指摘する。

フィジカルAIの学習データを収集する課題を説明するスライド

 たとえば、物をつかんで運ぶ作業では、対象を見つけるだけでなく、手をどう近づけ、周囲にぶつからずに動かすかまで判断する必要がある。こうした行動を学ぶためのデータは、実際の環境や動作から集めなければならない。しかし、あらゆる状況を現場で経験させるには限界がある。

 そこで重要になるのが、実データとシミュレーションを組み合わせる考え方だ。平野氏は、その開発を支える世界基盤モデル「Cosmos」を紹介した。現実世界の状況や変化をAIが捉え、学習に使うデータを生成するなどして、ロボットや自動運転車の開発を支える技術である。

 実際の経験を仮想環境での学習に生かし、その成果を現実の動作へとつなげる。平野氏は、こうした技術の展開先として製造業、物流、ヘルスケアを挙げた。

日本の強みは、ロボットの「専門性」を育てること

 では、そのなかで日本は何を担えるのか。平野氏が示したのは、幅広い能力を持ちながら、特定の仕事にも習熟する「ジェネラリスト・スペシャリスト」というロボット像だ。

ロボットの汎用性と専門性を示すスライド

 従来のロボットは、あらかじめ設計された動作を正確に繰り返す定型業務を得意としてきた。一方、AIによる学習を取り入れることで、状況に応じた動きが求められる非定型の作業にも対応できるようになりつつある。平野氏は、その能力を現場ごとの仕事に適応させる「スペシャリスト」の部分に、日本の勝ち筋があると語った。

 その方法が、公開されたモデルに独自のデータで追加の学習を行うことだ。NVIDIAが提供するモデルを出発点に、それぞれの企業が自分たちの用途に合う能力を持たせていく。平野氏はデータを守る重要性にも触れ、管理された環境で独自のデータを活用することで、日本ならではのモデルをつくれるのではないかと述べた。

講演するNVIDIA ロボティクス事業部 事業部長の平野一将氏

 筆者は、この説明を、現場で培われた経験をどうロボットに渡すかという話として受け止めた。同じ物を運ぶ仕事でも、扱う対象や設備、求められる精度は異なる。そうした違いを理解し、仕事を成り立たせてきた人たちの知識が、ロボットの専門性を育てる材料になる。

 講演後半では、学習からシミュレーション、実機での動作までを支える開発環境も紹介された。平野氏は、自社や他社のモデルを組み合わせることもできると説明。共通の開発環境を使いながら、各社が独自の能力を磨いていく考え方を示した。

 平野氏は最後に、世界モデルを使いこなし、日本のものづくりに使えるロボットをともにつくっていきたいと呼びかけた。冒頭の映像で語られた「現場」は、講演の終盤ではAIの専門性を育てる場所として、その重要性が示された。そこで働く人たちの経験を、ロボットが学べる形にできるか。その取り組みに、日本のフィジカルAIの可能性があるのだろう。

注目のキーワード「フィジカルAI」とは何か 日本メーカーの活躍が期待される理由と共に解説

2026年になってから、AI業界では「フィジカルAI」というワードが注目されている。本記事では、”フィジカルAIの花形”とも言え…

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる