【ゲームと都市】『ファイナルファイト』から『GTA3』『スパイダーマン2』へ “巨大都市”をめぐるゲームの記憶

【ゲームと都市】“巨大都市”をめぐる記憶

 ゲームにまつわるさまざまなお題について、ライター・しげるが自身の体験を交えて綴る本企画。今回のテーマは「ゲームと都市」。『ファイナルファイト』『GTA3』『スパイダーマン2』を通じて、ゲームのなかで出会った都市の記憶を振り返る。(編集部)

小学生の脳に刻まれた、超犯罪都市・メトロシティ

 ゲームの中で明確に「都市」の存在を意識したのは、友達の家のスーパーファミコンでプレイした『ファイナルファイト』だったように思う。ご存知のように、『ファイナルファイト』の舞台は暴力と死だけが存在する超犯罪都市・メトロシティである。

 このゲームでは各ラウンドの冒頭、そのステージがメトロシティのどの部分に該当するか、地図の中で示されるというギミックがある。地図にはスラムや地下鉄、工業地帯やベイエリア、アップタウンといった表示が入っており、それぞれがゲームのステージとなっている。今となってはかなりシンプルだが、当時ガキンチョだった自分にとって、これは相当刺激的な演出だった。自分が操作しているコーディーやハガー市長は、このメトロシティの中を移動しながらマッドギアと戦っている。そのことが、視覚的にダイレクトに示されたのである。

 ラウンドごとのロケーションの変化も、島まるごとの巨大都市を移動しながら戦っていることを充分に表現していたと思う。一番左端の「スラム」に建っている建物は見るからに汚くて古そうで、遠くにはアップタウンの高層ビル群が見えている。工業地帯はわかりやすく鉄骨が剥き出しだし、椰子の木が立ち並ぶ道路もある。スーパーファミコンの性能で「都市の中を移動しながら戦う」という体験を表現したゲームとして、『ファイナルファイト』は小学生だった自分の脳に刻まれた。

 もうひとつ重要なのは、メトロシティが見るからにアメリカだったことだ。アメリカのチンピラだから敵のチンピラは革ジャンやブーツを身につけているし、金属製のゴミ箱が路上に置かれている。一応設定的にはメトロシティは大西洋沿岸の都市であり、おそらく地形的にもモチーフはニューヨークなのだが、椰子の木が生えていたりする「陽」なムードからはロサンゼルスのテイストも感じられる。とにかく、当時の日本人が想像するアメリカっぽい要素の最大公約数が、『ファイナルファイト』だったと思う。

 もちろん当時の自分にそこまでわかるはずもなく、メトロシティはただ圧倒的な異国・アメリカの巨大犯罪都市として認識された。街といえばショボい地元駅前の商店街か、国道沿いに店舗が並ぶ風景、もしくは親に連れられて出かける名古屋の市街地くらいしか知らない小学生の自分にとって、『ファイナルファイト』で描かれた都市はあまりにも異国だったのである。

『GTA3』で「進む都市」から「歩き回れる都市」へ

 そのまま高校生になった自分は、都市をそのまま丸ごとゲームの中に閉じ込めてしまった衝撃のタイトル『グランド・セフト・オート3』に触れることになる。多くのゲーマーと同じように、初めて『GTA3』をプレイした時は死ぬほど驚いた。あのアメリカのあの都市を、『ファイナルファイト』で戦場となったあの犯罪まみれの大都市を、自由に歩き回ることができる! 歩き回るどころか、持っている武器で通行人を殴ったり撃ち殺したりできるし、走っている車をいきなりパクることができる! 悪事を働けば警察に追いかけ回されるし、その結果死ぬこともある! とにかく腰が抜けるような驚きだった。こんなゲームで遊ぶことができる日が来るとは……!

 自分は『GTA3』を文字通り毎日プレイした。重要だったのが、当時我が家に導入されたばかりのインターネットを使ってチートコードの存在を知ったことである。「現実の都市」がそのままゲームの中に再現されているだけではなく、チートコードを使えばそのさらに上をいくことができる。警察に追い回されても即逃げられるし、武器弾薬も無限にゲットできるのだ。これが快感でなくてなんだろうか。かくして自分は家のプリンターでチートコードを印刷して丸暗記し、走って警察から逃げながらでも車を運転しながらでも即座にコードを入力できるようになった。その集中力でもっと勉強していれば……と思わないでもない。

移動するだけで面白い……スパイダーマンと都市の抜群の相性

 『GTA3』の舞台となったリバティーシティーは、『ファイナルファイト』のメトロシティと同じくニューヨークをモデルとしている。そしてニューヨークを舞台にしたオープンワールドゲームとして忘れられないタイトルがもう一本。2004年に発売された『Marvel's Spider-Man 2(以下、スパイダーマン2)』である。

 この『スパイダーマン2』はタイトルの通り、映画『スパイダーマン2』をモチーフとしたアクションゲームである。最大の特徴が、実際のニューヨークをほぼ忠実に再現したオープンワールドゲームになっており、摩天楼の間をウェブ・スイングで飛び回ることができたという点である。これがもう、めちゃくちゃに面白かった。

 現在でもスパイダーマンを題材にしたゲームは多数発売されているが、それはおそらくスパイダーマンというヒーローの特徴とテレビゲームの相性が非常にいいからではないだろうか。なんといっても、「腕から糸を発射して巨大な建築物の間をスイングして高速移動する」という移動方法の時点でゲーム向きである。単にスイングするだけでなく、伸び縮みする糸を使ってスリングショットのように直線的に飛んだり、高いところから高速でダイブしたり、慣性をうまく使って急カーブを曲がったりと、動きのバリエーションもつけやすい。なにより、高層ビルの間をスイングしながら飛び回るのは圧倒的に面白い。移動するだけで面白いというのは、『スパイダーマン2』以降の歴代スパイダーマンゲームの大きな特徴である。

 スパイダーマンの攻撃方法は基本的に殴る蹴るだが、同時に糸をうまく使った攻撃を絡めやすいのも嬉しいところだ。糸を発射して相手を縛り上げたり、そのままグルグル振り回して他の敵にぶつけたりと、スパイダーマンの能力自体が一対多数の戦闘が必然となるスーパーヒーローを題材にしたアクションゲームと好相性。そして、その相性の良さをフルに活かしたゲームが、『スパイダーマン2』だったのだ。

 このゲームで、自分は文字通りマンハッタンの市街地を舞った。エンパイアステートビルから飛び降り、ウェブを発射して林立するビルの間をすり抜け、気ままなスイングの間に市民の悲鳴が聞こえてこれば、飛び降りて悪党をボコボコにした。もう完全にスパイダーマンと同化していたし、ニューヨークの地理にもかなり詳しくなった。今から思えば素朴なものだったような気もするが、スーパーヒーローを題材にしたオープンワールドゲームの原体験として、忘れがたいものになっている。現在自分はバットマンのアーカム三部作をようやくプレイしているのだが、『アーカム・シティ』を遊んでいても思い出すのは『スパイダーマン2』のことである。なんか似てるのである、本当に。

メトロシティからリバティーシティーへ――記憶に残る「ニューヨーク」

 「ゲームと都市」というお題だったはずが「ゲームとニューヨーク」みたいなことになってしまったが、節目節目でニューヨークを舞台にしたゲームにぶつかっているのが我ながらけっこう不思議である。もちろん『グランド・セフト・オート・バイスシティ』のバイスシティで『スカーフェイス』ごっこをしたり、『サイバーパンク2077』のナイトシティで敵のシナプスを焼きまくったり、『龍が如く』の神室町で喧嘩したり、『レッド・デッド・リデンプション』でいきなり大都会ブラックウォーターに驚いたりと色々思い出はある。が、そもそもゲームの中の都市のモデルとして、ニューヨークが選ばれがちであるという点はあるのかもしれない。……こんなことを書いていたら、久しぶりにリバティーシティーに行きたくなってきた。もはやレトロゲーとなった『GTA3』を、今夜あたり久々にプレイしてみようと思う。

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