『FFXIV』の音楽はまだまだ進化する 祖堅正慶・今村貴文・石川大樹・矢崎早彩が語り合う「7.xシリーズ」を経たサウンドチームの現在地

『ファイナルファンタジーXIV』(以下『FF14』)のパッチ7.1「未知との邂逅」から7.5「彼方に至る路」までの楽曲を収めた最新サウンドトラック『TRAIL TO THE HEAVENS: FINAL FANTASY XIV Original Soundtrack』が9月16日にリリースされる。7.xシリーズの全79曲に加え、EXTRAトラックとして、Blu-ray本編未収録のMP3音源も追加された大ボリュームのアルバムとしてお目見え。
本作の発売を記念し、今回はサウンドディレクターの祖堅正慶氏、コンポーザーの今村貴文氏、石川大樹氏、矢崎早彩氏の4名に、この1年強の制作体制の変化から、各々の推し曲、そして「これ、自分が作ったことにならないかな」と思うほど嫉妬してしまった楽曲まで、たっぷりと語ってもらった。(Yuki Kawasaki)
「新しい風を入れる」から「骨から任せる」に

ーー『FF14』の第5拡張パッケージ『黄金のレガシー』がローンチした2024年7月当初、祖堅さんは「新しい風を入れる」というコンセプトを掲げていましたが、パッチが進むにつれて何か変化はありましたか。
祖堅:いや、そこはずっと同じ感じで。『Dawntrail』(『黄金のレガシー』の英題)からのコンセプトは変わらず、パッチ7.5まで走りきったかなという感じです。ただ、これまでは僕が骨組みを作って、時には半分ぐらい肉付けまでやる、というスタイルだったんですけど、今回は骨組みから任せるようにしました。これまではフィールド曲も、彼らの実力を見ながら少しずつ渡していたんですけど、『Dawntrail』に向けてみんなすごく成長してきたので、もう任せられるなと。討滅戦の曲もみんなに依頼して、割とお互い対等に仕事をするスタイルに変えたんです。
ーーさらに個々のカラーが強く出てきているのが今、という感じでしょうか。
祖堅:そうかもしれないですね。特に石川、今村に関しては『Endwalker』(暁月のフィナーレ )のパッチ6.1以降くらいから顕著だと思います。6.0までは「こうしろああしろ」と言われた通りにやるのがメインだったんですけど、6.1からは「自分の思うようにやってみたら」と進めてもらっています。矢崎もお目付け役はいるものの、『Dawntrail』からは割と自由にしてもらっていて。最終的には自分が最初に描いた楽曲の方向性にやや近づけるというか、調味料の振り方ぐらいしか教えていない感覚です。
ーー矢崎さんは、もともとトライバルというかエスニックな曲を作るのが得意だったんですか? パッチ7.56で実装されたコンテンツ「闘獣練」の楽曲、たとえば「凶猛なる牙 ~闘獣練~」からは、コンポーザーとしての知識の深さを感じました。
矢崎:いえ、もともとはそんなことなくて。『黄金のレガシー』のもっと前、というか『FF14』の仕事をするようになってから、初めて作るジャンルの曲がほとんどです。エスニック系の曲はもともと好きなジャンルではあったので、作るときは楽しんで作っています。民族音楽って「この部分がこのジャンルっぽい」というルールが基本あるので、それを学ぶためにひたすらいろんな曲や動画を漁って掴むようにしています。

ーー『FF14』のサウンドチームに加入される前から、矢崎さんは本作のファンだったとお聞きしました。もともとがゲーマーであるという背景も大きいですか。
矢崎:あると思います。ファンタジーな雰囲気がもともとすごく好きで、『FF14』ではすでに多種多様なジャンルの曲がたくさんあるので。確かにその点では、ずっと前から馴染みがあったのかもしれませんね。
ーーパッチ7.4で追加された、『黄金のレガシー』のレイドシリーズ第3弾『至天の座アルカディア:ヘビー級』は、全曲で作曲者が分かれています。階層ごとの楽曲を別のコンポーザーがそれぞれ担当するのはかなり稀なんじゃないかと思ったんですが、どうでしょうか。
祖堅:メロディ・作曲の部分からアレンジまで一貫して各自にお願いするという形は、確かになかなかありませんでしたね。これには理由があって、レイドは繰り返し遊ばれるユーザーが多いので、なるべくオリジナル曲を用意したいんですけど、時間も人数も無制限ではない。『ファイナルファンタジーXI(FF11)』とのクロスオーバーレイドシリーズである「エコーズ オブ ヴァナ・ディール」が原曲重視で実装される方針だったので、そちらに回すはずだったリソースを『至天の座アルカディア:ヘビー級』に割けたんです。だから“チャンスだ”と思って、1層ごとにオリジナル曲をひとつずつ作っていける状況が生まれました。

ーー1層の曲「Sinister ~至天の座アルカディア:ヘビー級~」は、石川さん制作ながら、どこか今村さんっぽいテイストを感じました。石川さんが得意とされているオーケストラよりも、打ち込み系というか。
石川:発注段階でボスのデザインは上がっていたので、「ヒール系、悪役感のある曲で」とリクエストが来ていました。僕の中でアンダーグラウンドなサウンドといえばTR-808やヒップホップだったので、こういうアプローチになったんです。たしかに今までの仕事だと、そういったテイストは今村や祖堅が担当することが多かったので、すごく新鮮な気持ちで作れましたし、最近はジャンルの幅を広げてチャレンジさせてもらえて楽しいですね。『FF14』楽曲のダンス系アレンジアルバム『PULSE』というシリーズがあるのですが、そのVol.1、2と積み重ねてきた中で得た経験が、しっかり活きているのかなと思っています。
ーー一方で、打ち込み系のイメージがある今村さんが担当された2層の曲「The Mirror ~至天の座アルカディア:ヘビー級~」はポップパンクっぽいですよね。今村さんにバンドの経験があるのは存じておりましたが、2000年代にNew Found Gloryなどを聴いていた身として大いにテンションが上がりました。
今村:発注段階ではサーフロックだったんですよ。でもこのジャンルのテンポは戦闘曲向きではなく、最終的にポップパンク的な方向に落ち着きました。それと、ちょうどこのとき、THE PRIMALSの武道館公演の真っ只中だったんですよね。そのタイミングで僕もいろいろ制作に追われていて、なおかつ武道館公演のオープニングアクトとして僕と石川がDJとして出演するっていうのもあって。その準備などで結構追い込まれてる状況だったんです。そうした中で、この曲も1日か2日で完成させないといけないぐらいの状態でした。追い込まれながらも集中して、武道館の公演中に出来た曲です(笑)。

祖堅:提出してきたの、武道館ライブ当日の朝だったね(笑)。この日は朝に今村から曲が届き、ライブはライブであり、公演終了後に年末のオーケストラ公演の譜面を修正するというハードなスケジュールだったよね。メイクも落とさず、楽屋でアレンジャーとオンラインを繋いで夜の11時ぐらいまで作業してました。
トム・モレロ参加の舞台裏
ーー『至天の座アルカディア:ヘビー級』第4層では、Rage Aganst The Machine(以下レイジ)のトム・モレロが書き下ろし楽曲「Everything Burns ~至天の座アルカディア:ヘビー級~」を提供していますね。経緯について改めてお聞きしたいです。
祖堅:時は2年ほど前に遡るんですが、『FF14』で数々の楽曲を歌ってもらっているジェイソン・チャールズ・ミラーと雑談していたときに、「ソケン、レイジのTシャツばっかり着てるけど好きなの?」と聞かれて、「一番好きなロックバンドだよ」と答えたんです。そしたら「俺、トムと友達なんだよね」と言われて。正直そういう社交辞令の「友達」だと思っていたんですよ。でもある日ジェイソンから「トムが話したいって言ってるんだけど、つないでいい?」と連絡が来て。聞いたら、ボードゲーム仲間として『ダンジョン&ドラゴンズ』を一緒にやる仲だったらしくて。「やりたいと言っているから調整して」と言われて調整していたら、曲がバーンと送られてきたんです。「できたよ」って。社内調整も終わってないのに(笑)。ちょうどサウジアラビアでオーケストラコンサートをやっていて吉田直樹(FF14 プロデューサー兼ディレクター)と一緒にいたので、「ちょっとやばいことが起きてる」と報告しました。
ーートム・モレロ氏は『FF14』のことをご存知だったんでしょうか。この曲、いきなり送られてきたにしてはかなり“FF14っぽさ”というか、“祖堅さん節”のようなものを感じます。
祖堅:『ファイナルファンタジー』というゲーム自体は知っていたみたいですが、『FF14』がどういうものかってところまでは知らなかったと思います。ただ彼が「『FF14』の曲を作るんだ」と言ったら、お子さんたちが「お父さんがすごい仕事してる!」と大騒ぎしていたそうです。僕との音楽的な繋がりは自分では分からないですが、やはりずっと聴き続けていることもあって共通する部分はあるかもしれません。やってみて分かったんですが、“憧れの人”と仕事をしても、感動している余裕はないですね(笑)。ただただ混乱があるのみ。たくさんやり取りしたはずなのに、あまりよく覚えていません。仕事をしている最中は近づけたのかもしれませんが、いまはまた遠い存在に戻っています(笑)。
――祖堅さんのミクスチャー感、フレキシブルに様々なジャンルからアイデアを持ってくるところはレイジにも共通する部分なのではと。たとえば「Absolute Tyranny ~至天の座アルカディア:ヘビー級~」は、メタル的な首振りだけでなくスカ的な横ノリ要素もあるというか。
祖堅:確かになんでも好きではありますね。ロックの中で好き嫌いがないというか。「Absolute Tyranny」はチャンピオンと戦う曲なんで、そういう感じを出したかったんですよ。王道というか。その時の僕のイメージは割と、“野郎たちが高らかに歌う”みたいな感じだったんですね。要はYAZAWA(矢沢永吉)ですよ。歌い始めるときにマイクを1回転させるイメージ。


















