「さわれるMakuake」が示すオンラインの次にあるリアル、なぜいま「触れる場」をつくるのか

新しい商品を、一般発売前に実際に手に取って試す。そんな体験を提供する応援購入サービス「Makuake(マクアケ)」の体験型ポップアップ「さわれるMakuake」が、9月19日から渋谷サクラステージで始まった。会場には約30のプロジェクトの商品が並び、AIガジェット、イヤホンやプロジェクター、家電から革小物などオンライン上の情報だけでは分かりにくい質感や操作性を実際に確かめることができる。
Makuakeといえば、インターネット上で新しい商品やサービスを知り、応援購入する場所というイメージが強い。そのMakuakeが、あえてリアルな空間を設けた理由は何なのか。常務執行役員の松岡宏治氏に話を聞くと、今回のイベントは単なるショールームではなく、オンラインを中心に成長してきたMakuakeが、リアルとの組み合わせによって次の事業の形を探る試みであることが見えてきた。
なぜ、いまリアルに「さわれる」場が必要なのか

「より多くの人に商品を手に取って体感してもらい、価値を伝えたい、という声はメーカー側から以前からありました」(松岡氏)。松岡氏によれば、ユーザー側からも「実際に触って体感してから購入を検討したい」という声が、コロナ禍以降、2023年から2025年にかけて明確に増えてきたという。特に、高額な商品が増えるなかで、写真やスペックだけでは購入を決めにくいという感覚は理解しやすい。これまでMakuakeでは、外部の商業施設などと組んでリアルイベントを開催してきた。しかし、会場の立地や規模に左右されるという課題があった。そこで今回は、Makuake自身が主催する形で、まとまった数のプロジェクトを一度に体験できる場をつくった。
興味深いのは、これを単なるブランドイベントとして捉えていない点だ。「リアルイベントが良いという肌感覚はありましたが、それが事業成長にどう影響するのかを、論理的に説明できる機会はこれまであまりありませんでした」(松岡氏)。Makuakeは2013年の創業以来、新しいものづくりを応援購入という形で支えてきた。松岡氏自身も創業初期から同社の変化を見てきた一人である。コロナ禍ではユーザーの行動が一気にオンラインへ移り、「おうちユーザー」が増えたことで事業も伸びた。
一方で、その反動としてリアルで人が集まり、商品を触り、作り手と会話することの価値が見えにくくなっていたという。今回の「さわれるMakuake」は、その価値をもう一度確かめるための実験でもあるともいう。
Makuakeを知らない人とも出会いが生まれる
9月19日にスタートしたイベントは、取材時点ですでに好調な滑り出しを見せている。具体的な来場者数は非公表だが、松岡氏は手応えを感じているという。もちろん、来場者の多くは目的のプロジェクトを目当てに訪れている。しかし、そこで見逃せないのが、Makuakeを知らなかった人たちの存在だ。
目的の商品を見に来たわけではない人が会場を歩き、展示されている商品に触れ、「面白い」と反応する。これはMakuakeにとっても、プロジェクトを実行するメーカーにとっても、新しい接点になる。オンラインの場合、ユーザーは検索やSNSなどを通じて自分が興味を持つ情報にアクセスする。そこには効率の良さがある一方、偶然の出会いは生まれにくい。
リアルの会場では、目当ての商品へ向かう途中で別の商品が目に入り、実物を触ってみることができる。そこで初めて知ったプロジェクトに興味を持つ可能性もある。つまり、「さわれるMakuake」は商品を見せる場所であると同時に、Makuakeそのものを知ってもらう場所にもなっている。
ここには、Makuakeの事業モデルとの相性もある。同サービスは、完成した商品を単純に売るECとは異なり、これから世の中に出ていく新しい商品を応援購入する場だ。だからこそ、商品そのものだけでなく、作り手や開発背景を知ることにも意味がある。
メーカーに「場」を預けてみる試みも
今回のイベントでもうひとつ特徴的なのが、会期中に開催される「メーカーズタイム」である。従来のイベントでは、Makuake側がコンテンツを考え、メーカーに参加してもらうという形が中心だった。今回はそこを変えた。
「時間を設けるので、やりたい人は手を挙げてください。時間の使い方はメーカーに任せます、という形にしました」(松岡氏)。メーカーに与えられたのは、いわば「何をするか」ではなく「何を伝えたいか」を考えるための余白だ。
結果として、商品のこだわりをプレゼンするメーカーもあれば、実際に商品を体験してもらいながら質問を受けるメーカー、トークセッション形式で作り手の話を聞かせるメーカーも登場した。その場で新しいプロジェクトをリアルタイムで配信し、ファンも参加しながらプロジェクトをスタートさせるという企画を行った。
同じ「新商品」であっても、メーカーごとに伝えたいことも、ユーザーに提供したい体験も違う。それならば、主催者がすべてを決めるより、作り手自身に任せたほうが、その商品の個性が出る。そして実際に、「直接会えてよかった」という声が寄せられているという。オンラインでプロジェクトを知り、応援購入するという従来の関係に、直接会うという新しい接点が加わった格好だ。ここにも今回のイベントが単なる商品展示会とは異なる理由がある。
オンラインの次にあるリアル
もうひとつ、今回の「さわれるMakuake」を考えるうえで興味深いのが、AIをはじめとする新しいハードウェアの存在だ。AIブームによって、AIを搭載したロボットドッグや人形型デバイス、AI議事録デバイスなど、これまでになかった製品が次々に登場している。情報としてその存在を知ることはできても、それが実際にどんな動きをするのか、操作したときにどう感じるのかまでは、画面越しには分かりにくい。
新しいものほど、実際に触れることの意味は大きくなる。Makuakeがこれまで蓄積してきたオンラインでのプロジェクト情報と、リアルな体験の場を組み合わせることで、商品との出会い方そのものを変えられる可能性がある。松岡氏が今回の取り組みを通じて感じているのも、まさにこの部分だ。
「オンラインだけではなく、実際に会って話すことで生まれるコミュニケーションや笑顔が、今回かなり見えています」(松岡氏)。今後については、今回のポップアップをさらに発展させ、常設店舗、いわゆる路面店の展開も視野に入れているという。現在は交渉段階とのことだが、もし実現すれば、Makuakeは「新商品をオンラインで応援購入する場所」から、「まだ世の中に広く知られていない商品と出会い、触れ、作り手を知る場所」へと、その接点をさらに広げることになる。
この「さわれるMakuake」は9月30日までの全12日間、渋谷サクラステージで開催されている。会場には約30プロジェクトの商品が集まり、一般発売前の製品を実際に手に取ることができる。会場での販売は行わず、気に入った商品はMakuakeを通じて応援購入する仕組みだ。
「新商品が好きな人だけではなく、買い物が好きな人、新しい体験が好きな人にも来てもらえれば嬉しいですね」(松岡氏)。Makuakeをすでに知っている人にとっては、目当てのプロジェクトを確かめる場所になる。一方、Makuakeを知らない人にとっては、まだ知られていない新商品と偶然出会う場所になる。
オンラインで効率よく情報を集める時代だからこそ、実物を手に取り、作り手と話し、思いがけない商品に出会う。今回のイベントが示しているのは、オンラインかリアルかという二者択一ではなく、その両方を組み合わせることで生まれる、新しい「応援購入」の形なのかもしれない。
「さわれるMakuake」開催概要
開催期間:2026年9月19日〜9月30日
開催時間:11:00〜19:00(初日は12:00オープン、最終日は17:00クローズ)
会場:Shibuya Sakura Stage BLOOM GATE(東京都渋谷区桜丘町1-4)
入場:無料(事前予約制/当日来場も可)
展示:約30プロジェクト

































