NANAのテック・アルテミス 仕事に役立つBizテック観測所(第34回)
「Gemini Spark」日本語対応から改めて考えるAIエージェントとは何か AIに「聞く時代」から「任せる時代」へ

Googleは7月16日、AIエージェント「Gemini Spark」の日本語対応を開始した。
そもそもAIエージェントとは、「Gemini」や「ChatGPT」のような生成AIをさらに一歩進めた存在だ。これまでの生成AIは、質問すればその場で答えを返すことが主な役割だった。一方、AIエージェントは、ユーザーの指示をもとに、Web検索やメール、カレンダーなど複数のサービスを利用しながら、自らタスクを進められる。さらに、「来週までに」「毎朝」「会議が終わったら」といった時間や条件も理解し、必要なタイミングで作業を実行できる。
「Gemini Spark」もそのひとつだ。チャットで依頼した内容をもとに、クラウド上で24時間365日動作し、Web検索で情報を集めたり、GmailやGoogleカレンダーと連携したりしながらタスクを進める。たとえば、指定した日時にリマインダーを送ったり、条件に合う情報が見つかったときに通知したりといった使い方ができる。
AIエージェントという言葉は、この1〜2年で急速に広まりつつある。しかし、「生成AIと何が違うのか」「実際に仕事でどう役立つのか」は、まだ十分に理解されているとは言い難い。本稿では、「Gemini Spark」を例に、AIエージェントが従来の生成AIと何が違うのか、そして私たちの働き方をどのように変えていくのかを考えてみたい。
「AIエージェント」で私たちの仕事はどう変わる?

これまでの生成AIの主流は、ユーザーがその場で質問や指示を送り、即座に回答を得る形だった。文章の作成や資料の要約、プログラムの作成など、さまざまな作業を任せられるものの、その都度AIサービスやAIアプリを開き、指示を出す必要があった。
ところがAIエージェントは、その場で質問に答えるだけではない。ユーザーが「何をしたいのか」を伝えると、その目的を達成するために必要な作業をAI自身が判断し、Web検索やメール、カレンダー、ドキュメントなど複数のサービスを横断しながら処理を進められる。
例えばオンライン会議が終わった後、「議事録を作成し、決定事項と担当者ごとのタスクを整理して、参加者への共有メールを作成して」と依頼したとする。従来の生成AIなら、議事録の作成、タスクの整理、メールの作成と、それぞれの作業ごとに指示を出す必要があったが、AIエージェントは目的を理解した上で必要な手順を考え、ドキュメントやメールなど複数のサービスと連携しながら、一連の流れをまとめて実行できる。
つまりAIエージェントは、単に質問へ答えるだけではなく、以下のように横断的に作業できると言えるだろう。
- 目標を理解する
- 自分で計画を立てる
- 必要なら複数のサービスを操作する
- 状況を見ながら判断する
- 完了まで自律的に進める
さらに、こうした作業を「毎朝6時に」「会議が終わったら」「この会社が新製品を発表したら」といった時間や条件に合わせて実行することもできる。重要なのは、ユーザーがその都度AIを開いて細かな指示を出さなくてもよくなることだ。人は「どう作業するか」ではなく、「何を実現したいか」をAIへ伝えることに集中できるようになる。
なぜ各社とも「AIエージェント」に向かうのか

AIエージェントの開発を加速させているのはGoogleだけではない。
OpenAIは「ChatGPT Agent」を発表し、調査や情報整理、資料作成など複数の工程をまとめて実行できるようにした。Microsoftも「Copilot」をWindows全体へ広げ、OSやアプリを横断しながら作業を支援する機能を強化している。LenovoとMotorolaが発表した「Qira」も、PCやスマートフォンをまたいでユーザーを支援するAIとして展開される予定だ。
各社で実現方法や得意分野は異なるものの、目指している方向は驚くほど似ている。AIを、質問に答えるだけでなく、一連の作業を任せられる存在へと進化させようとしている点だ。
ここ半年ほど、国内外の発表会や説明会を取材していると、「AIエージェント」という言葉を耳にしない日はほとんどなくなった。以前は生成AIそのものの性能やモデルの進化が話題の中心だったが、最近は「ユーザーの代わりに何ができるのか」「どこまで自律的に動けるのか」という話へと、関心が移りつつある印象を受ける。
文章作成や画像生成、プログラム作成といった機能は、いまや多くの生成AIが一通り備えるようになった。もちろん性能差はあるものの、「何ができるか」だけでは差別化しにくい時代になりつつある。だからこそ各社が競っているのは、「どこまで一連の仕事をやり遂げられるか」という部分だ。
AIエージェントは、その変化を象徴する存在と言える。ユーザーの目的を理解し、必要なサービスを組み合わせながら、一連のタスクを自律的に進めていく。競争の軸は、「より賢く答えるAI」から、「より多くの仕事をこなせるAI」へと広がり始めている。
振り返れば、ChatGPTが登場した当初は、「AIに何を聞けば便利なのか」を試すこと自体が新鮮だった。それからわずか数年で、「何を任せられるのか」を考える段階まで来た。技術の進歩の速さには、あらためて驚かされる。
もしAIエージェントが当たり前になれば、私たちの働き方も少しずつ変わっていくだろう。メールを書き、資料を調べ、予定を調整するといった細かな作業はAIが担い、人は「何を任せるか」「どこで判断するか」に、より多くの時間を使うようになるかもしれない。
ChatGPTの登場が「AIに質問する時代」の始まりだったとすれば、AIエージェントは「AIに仕事を任せる時代」の入り口になる。その変化はまだ始まったばかりだが、数年後に振り返れば、2026年はAIとの付き合い方が大きく変わり始めた年だったと語られるのかもしれない。






















