誰がAIを動かすのかーー高まる需要と「計算資源」によって引き起こされる社会問題

AIを巡る「計算資源」の現状と未来

しばらくは“3強”時代が続くか 伸び代のある「法人向けAI市場」を支配する3社

 ここまでは、AI市場の覇権争いを計算資源、つまりはハードウェアの観点から見てきた。こうした考察は、ソフトウェアからの考察を補うことでより現実的なものとなる。

 AI市場の動向を占ううえで重要となるのは、これらのAIを活用する法人が形成する市場である。

 ウェブセキュリティ企業の「Compare Cheap SSL」が2025年12月に公開したブログ記事によると、2026年における世界の生成AI市場規模は年平均成長率が38~45%で推移して、2,100~2,600億ドルになると予想される(※6)。そのうち34%が法人向けAIプラットフォームを占め、一般ユーザー向けAIアプリのシェアは11%と見られている。こうした予想は、法人が有料AIサービスを活用する一方で、一般ユーザーは無料のそれを利用する傾向にあることに起因している。

 2026年の世界の企業における生成AI普及率推定に関しては、少なくとも1つの生成AI活用事例を持つ企業の割合は、87%と見られる。こうしたなか、AIツールを導入している中小企業は42%と推定される。この推定値から、中小企業の生成AI活用にはまだ大きな伸び代があることがわかる。

 法人が利用するAIのシェアについては、投資会社Menlo Venturesが2025年12月に発表したレポートが明らかにしている(※7)。AIのAPI(AI機能を活用する際のアプリ呼び出し方式の一種)ベースで2025年のシェアを集計したところ、1位はAnthropicが提供するClaudeシリーズで54%、2位はOpenAIのGPTシリーズで21%、3位がGoogleのGeminiシリーズの11%であった。

 以上のようにAIのシェアは、提供AI企業が活用する計算資源量と必ずしも相関しない。計算資源量では圧倒的なGoogleが、上位2社を追っているのが実情なのだ。

 とはいうものの、法人向けAI市場は以上の3社が支配する体制は揺るぎないだろう。この3社の技術力は拮抗しており、今後、3社を凌駕する技術で1位に躍り出るような企業は、絶対とまでは言えないものの、少なくとも2~3年のあいだに登場するとは考えにくい。

AIデータセンターの建設も一筋縄ではいかない

 世界の生成AI市場が依然として成長傾向にある以上、当面のあいだ、AIデータセンターは世界各地で建設され続けることだろう。その一方で、AIデータセンター建設に「待った」をかける動きも報道されている。

 日刊ゲンダイDIGITALは2026年5月1日、アメリカ・ニューヨーク在住のジャーナリストであるシェリーめぐみ氏が執筆した、同国におけるデータセンター建設反対運動に関する記事を公開した(※8)。

 シェリー氏によると、Metaがルイジアナ州で建設中のAIデータセンターが稼働した場合、大量に電力を消費するため、建設地域の電力需要を30%押し上げる。また、AIチップ発熱に伴って冷却水が必要になるのだが、その1日当たりの水使用量は約1万7,000人の地元住民が1日に使う量に匹敵する。

 AIデータセンターの誘致は雇用創出や税収増などのメリットがある一方、建設地域への多大な環境負荷が生じるので、誘致に反対する運動が後を絶たないのだ。

 日本におけるAIデータセンター建設反対運動については、テレビ朝日が2026年3月9日に報じている(※9)。この反対運動は、千葉県印西市駅前に建設予定のデータセンターをめぐって起こっている。

 以上の反対運動では、駅前という立地をめぐって、印西市の住民と軋轢が生じている。法令にもとづけば、駅前に倉庫や工場に類する建物は建設できない。こうしたなか、データセンター建設企業はデータセンターを「その他」というカテゴリーで申請して、建設を進めようとしている。

 建物カテゴリーでその他に分類されたとしても、データセンターは“入口の小さい倉庫”のように見える。こうした圧迫感を感じさせかねない建物は駅前の景観を損ねるのではないか、という一部の印西市住民の思いが、データセンター建設反対運動を引き起こしたのだ。

 生成AI市場が成長傾向にあるなか、その成長をインフラ面で支えるAIデータセンター建設計画は今後も推進されるだろう。しかしながら、こうした計画を地元住民の理解を得ずに推進すれば、“21世紀の新たな公害”に発展してしまう懸念があるのも事実だ。

 生成AI開発企業は、AIデータセンター建設による計算資源の確保と同時に、その建設に関して地元住民の理解を得るような、“責任と信頼のあるAI企業”を目指すべきだろう。

〈参考〉
(※1)Epoch AI「AI Chip Owners」https://epoch.ai/data/ai-chip-owners?view=graph&tab=count&mode=snapshot&colorBy=designer
(※2)Epoch AI「AI Chip Owners」の「FAQ」https://epoch.ai/data/ai-chip-owners?view=graph&tab=count&mode=snapshot&colorBy=designer
(※3)Epoch AI「Frontier Data Centers」https://epoch.ai/data/data-centers?view=table&tab=frontier-data-centers&colorPinned=Anthropic-Amazon+New+Carlisle
(※4)Epoch AI「Could decentralized training solve AI’s power problem?」https://epoch.ai/blog/could-decentralized-training-solve-ais-power-problem
(※5)Epoch AI「How far can decentralized training over the internet scale?」https://epoch.ai/gradient-updates/how-far-can-decentralized-training-over-the-internet-scale
(※6)Compare Cheap SSL「Generative AI Statistics 2026: Market Size & Adoption」https://comparecheapssl.com/generative-ai-statistics-market-size-adoption/
(※7)Menlo Ventures「2025: The State of Generative AI in the Enterprise」https://menlovc.com/perspective/2025-the-state-of-generative-ai-in-the-enterprise/
(※8)日刊ゲンダイDIGITAL「巨大テック企業のAIデータセンター開発ラッシュに全米各地の住民が激怒 中間選挙の火種に」https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/387145
(※9)テレ朝NEWS「駅前データセンター計画めぐり住民が提訴 建築確認取り消し求める 千葉・印西市」https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/900185571.html

〈記事サムネイル〉
千葉県印西市のGoogle データセンター

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近年の生成AIの動向は、テック業界におけるトピックのひとつであることを超えて、各国の経済や国際競争にも影響を及ぼしている。日本や…

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