ポケモンが“荒廃した地”を再生? 『ぽこ あ ポケモン』が提示する、これまでにないスローライフの形

2026年3月5日、「ポケットモンスター」(ポケモン)シリーズの最新作として、Nintendo Switch 2専用ソフト『ぽこ あ ポケモン』が発売される。本作は、株式会社ポケモン、ゲームフリーク、そしてコーエーテクモゲームスの三社が共同開発するポケモン初のスローライフ・サンドボックスゲーム(※)だ。
発表当初、その独特な世界観からSNSを中心に話題を集めた本作だが、2月2日に行われたメディア向け体験会で実際に触れてみると、そこには「ポケモン」というIPが持つ新たな可能性と、かつてないほど濃密なサンドボックス体験が広がっていた。
※編注:明確な目標やストーリーが存在せず、砂場(Sandbox)のように広大な世界でプレイヤーが自由に建築、探索、クリエイトを楽しめるゲームジャンル。

本稿では、先行体験で得られた手触りと、本作が目指す「再生」の物語について深く掘り下げていきたい。
「パサパサこうやのまち」から始まる、ポケモンと大地を取り戻すスローライフ
まずは本作の概要を整理しておこう。舞台となるのは、かつて人間とポケモンが共生していた面影をわずかに残しながらも、現在は草木が枯れ果てて砂漠化した「パサパサこうやのまち」だ。
プレイヤーの分身となる主人公は、この荒廃した地で目を覚ましたへんしんポケモンの「メタモン」。メタモンは人間のすがたに変身することで、この世界での第一歩を踏み出す。なぜ人間もポケモンも消えてしまったのか、そして、なぜメタモンは人間の姿を選んだのか。こうした謎は物語の根底に流れる重要な要素と言える。
『ぽこ あ ポケモン』の主な目的は、荒廃した大地の再生、言うなれば環境改善である。最初にプレイヤーが出会うのは、一風変わった姿でパサパサこうやのまちに住む「モジャンボ」。プレイヤーはこの地に唯一残ったモジャンボの導きにより、失われた緑を取り戻していく。
本作最大の特徴は、出会ったポケモンたちの「わざ」を自らのものとして覚え、それを環境再生のツールとして活用する点にある。木や石といった材料を集めて家具や道具を作るクラフト要素や、ポケモンごとに適した生息地をデザインするサンドボックス要素が融合しており、最大4人でのマルチプレイにも対応している。現実の時間と連動した世界で、自分だけのペースで街を作り上げていくのが、本作の基本的な流れとなる。
そして物語の幕開けは、これまでのシリーズ作品とは明らかに一線を画している。パサパサこうやのまちに転がっているのは、かつてのポケモンセンターの残骸や、意味深な文字が刻まれた看板だ。冒頭から漂うミステリアスな空気感は、単なる牧歌的なシミュレーションゲームに留まらない、強い引き込みを感じさせてくれる。このどことなく漂う”寂しさ”こそが、プレイヤーが最初の一歩を踏み出すための強い動機付けになっていると筆者は感じた。
草むらを「探す」から「育てる」へ――受動的な冒険が楽しめる新要素
実際に『ぽこ あ ポケモン』を遊んでみると、まずメタモンのアクションが非常に軽快で驚かされた。ダッシュやジャンプ等のアクションを駆使して、高低差のあるフィールドを自在に駆け回ることができたからだ。
そして、本作の根幹をなすわざの習得が、プレイ体験に鮮烈な彩りを与えてくれる。「フシギダネ」から教わった「このは」を使えば、砂漠化した地面に生命の息吹を与えて緑を増やし、「ゼニガメ」の「みずでっぽう」を使えば、乾ききった大地を潤すことができる。
本来ならば敵を攻撃するために放たれるエネルギーが、本作では世界を育む力へと転換されているようだ。この変換の妙こそが、本作をプレイする上で最も心地よい体験の一つとなっている。ただしわざには使用回数の制限があるため、無制限に自然を書き換えることはできない。このリソース管理が、スローライフらしい「少しずつ良くなっていく」という実感に繋がっていると言える。
サンドボックスとしての自由度についても、その奥深さには目を見張るものがある。フィールドに点在する素材を集め、クラフト台で家具や道具を製作していくサイクルは、序盤から非常に中毒性が高い。
本作において、プレイヤーは単に自分の住処を飾るだけでなく、訪れるポケモンたちが好む環境(生息地)をデザインしていくことも求められる。それぞれのポケモンには好みがあり、適切な環境を整えることで、初めてその姿を現してくれるようになる。かつてのシリーズで草むらをかき分けてポケモンを探した体験が、本作では「自らの手で草むらを育て、彼らを招き入れる」という能動的な喜びへと昇華されている点は非常に興味深い。
さらに特筆すべきは、本作独自の「ちょっぴりかわったすがた」をしたポケモンたちの存在だ。苔むした体から花を咲かせる「カビゴン」や、薄い毛色とはかなげな表情を見せる「ピカチュウ」など、そのビジュアルはどこかノスタルジックで、世界の移ろいを感じさせる。
ポケモンたちは決して「異質」な存在ではなく、この荒廃した世界を生き抜いてきた適応の結果として描かれている。そんな彼らと交流し、「おねがいごと」(ミッション)を解決してあげることで、荒れた大地にも少しずつ活気が戻っていく。そうした光景を目の当たりにすると、言葉にできない愛着が湧いてくる。ポケモンからの頼まれごとを解決していくことで、結果として街全体が大きく変わっていくプレイ体験は、『ぽこ あ ポケモン』が持つ唯一無二の魅力と言ってもよいだろう。
競い合うよりも「一緒に作る」喜び マルチプレイで垣間見えた、ポケモンたちとの優しい繋がり
体験会ではシングルプレイに加え、マルチプレイの内容も部分的に体験することができた。これもまた本作の大きなセールスポイントになるだろう。
最大4人のプレイヤーと同じ世界を共有し、協力して街を復興させていく過程は、ソロプレイとは異なるダイナミズムを生んでいる。例えば、一人では膨大な資材が必要な「ポケモンセンターの再建」といった大規模なプロジェクトも、仲間と協力すればスムーズに進めることができる。
お互いの建築センスを競うのではなく、共にポケモンの生態系を作り上げていくという連帯感は、今の時代に求められる繋がりの形を体現しているようにも感じられた。なお、マルチプレイのデータはホスト側に保存されるため、フレンドの街の発展を手伝いに行くといった感覚で気軽に参加できるのも嬉しい仕様だ。
ストーリーが進めば、メタモンはさらに高度な変身を身につけていく。「ラプラス」に変身して広大な海を渡り、「カイリュー」に変身して大空を舞う。海の向こうに見える別の街の影や、雲の上に隠された未知のエリア。探索範囲が広がるにつれて、この世界の謎も少しずつ紐解かれていくのだろう。さらに、姿見を使って主人公の服装や髪型を自由に変更できるコーディネート要素も実装されている。お気に入りのスタイルで広大な世界を飛び回るのは、それだけで至福の体験になりうる。
もちろん、SNSで囁かれているような「不穏さ」がまったくないわけではない。作中の舞台からポケモンや人間が姿を消した理由など、物語の端々には大人でもハッとさせられるような深みが隠されている。しかし、だからこそ再生の喜びがより際立つとも言える。枯れた大地に草木が芽吹き、生い茂った緑にポケモンたちが集まってくる。その光景を眺めている時間は、静かな感動に満ちている。
現実の時間と連動した天候の変化や、それに合わせて姿を変えるポケモンたちの生態を観察するだけでも、この世界に浸る価値はあるだろう。急がず、焦らず、自分だけのペースで世界を彩っていく。『ぽこ あ ポケモン』が提供するのは、単なるゲーム体験ではなく、ポケモンたちと共に歩む新しい「生き方」そのものなのかもしれない。
Nintendo Switch 2専用ソフト『ぽこ あ ポケモン』は、2026年3月5日より発売予定だ。

































