『パラノマサイト』新作は何が変わる? ホラーからの脱却と“正統派ADV”への進化を考察

『パラノマサイト』正統派ADVへ進化?

 スクウェア・エニックスは2月19日、『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』の続編にあたるタイトル『パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語』を発売する。

 大好評を博した前作から約3年ぶりに登場するシリーズの新作は、続編であることにふさわしい評価を獲得できるだろうか。本稿では、発表された情報から変わること、変わらないことをまとめ、ヒットの必要条件を考察する。

前作の発売から約3年 「パラノマサイト」シリーズに待望の続編が登場

『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』トレーラー

 『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』は、2023年3月にスクウェア・エニックスより発売されたホラーアドベンチャーだ。舞台となっているのは、昭和後期の東京都墨田区。些細なきっかけから呪いの力を得ることとなった9人の男女は、本所七不思議の伝承に隠された「蘇りの秘術」をめぐり、それぞれの想いや能力をぶつけ合う。プレイヤーは第三者の視点から、その裏に見え隠れする物語の謎へと迫っていく。

 ディレクター/シナリオライターを務めたのは、推理アドベンチャー「探偵・癸生川凌介事件譚」シリーズや、モバイル向けRPG『スクールガールストライカーズ』などの作品で知られる石山貴也氏。キャラクターデザインを「すばらしきこのせかい」シリーズ、『スクールガールストライカーズ』などに携わった小林元氏が担当した。

 同作は、大手であるスクウェア・エニックス発のタイトルでありながら、比較的小規模の体制で制作された。そうした背景もあり、発売当初はそれほど大きな注目を集めることがなかったが、その後は口コミで話題を広げ、その年を代表する一作に数えられるまでとなった。Steamプラットフォームにおけるユーザーレビューでは、全体の95%超が「おすすめ」とし、最高ランクである「圧倒的に好評」へと分類されている(※日本語のみではなく、すべての言語におけるユーザーレビューを参照※)。

 2023年9月には、ゲーム作品としてのクオリティ、獲得した評価などを考慮し、優れたコンピュータエンターテインメントソフトウェア作品に贈られる「日本ゲーム大賞」の優秀賞にも選出された。また、2025年11月には、原作とは別のキャラクターを主人公に据えたスピンオフ・コミカライズ『パラノマサイト FILE25 霊感少女・黒鈴ミヲの邂逅』の連載が、スクウェア・エニックスの公式マンガアプリ「マンガUP!」でスタートしている。去る2月6日には、公開済みの各話を単行本として1冊にまとめたコミックス上巻も刊行された。

 今回、発売されることが明らかとなったのは、『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』に続くシリーズの最新作。主要な制作スタッフ、「昭和後期の日本」×「伝記/オカルト」というテーマをそのままに、舞台を三重県伊勢志摩地方へと移し、新たな物語が展開される。公式によると、今作のテーマは人魚伝説になるとのこと。新たな土地、新たな伝承、新たな登場人物で、大好評を博したシリーズのゲーム性、世界観が再構築される。

 『パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語』は、2026年2月19日発売予定。対応プラットフォームはNintendo Switch、PC(Steam)、モバイル(iOS/Android)で、価格は税込2,480円となっている。なお、Nintendo Switchでは、上記通常版(ダウンロード専売)のほか、パッケージ版ソフトに事件調査ファイル、オリジナルサウンドトラック、キャラクターアートワークスなど、豪華アイテムを同梱した限定BOX『かめしまのめぐみ』(税込14,980円)も展開される。

ホラー、超常的な能力バトルからの脱却で、「パラノマサイト」新作は正統派のADVに?

『パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語』プロモーション映像

 大好評を博した前作から約3年。満を持して登場する「パラノマサイト」シリーズの新作は、どのような作品となるだろうか。

 概要を見てわかるように、『パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語』のシナリオは、前作『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』と直接的なつながりがない。シリーズ作品として共有しているのは、主要な制作スタッフと独自の世界観、ゲーム性に関連する部分だ。実際に同タイトルでもディレクター/シナリオライターを務める石山氏は、発表を受けて実施されたメールインタビューのなかで、そのことにはっきりと言及している。

 同氏によると、今作は青春群像劇のテイストが強く、前作にあったおどろおどろしい雰囲気は抑えられているという。(※1)オカルト要素は残しつつ、ホラー成分は最小限に。この点は『パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語』における最大の変更点となりそうだ。

パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語

 また、超常的な現象を扱いつつも、登場人物の世俗的な人となりに焦点が当てられていた前作では、物語のカギを握るアイテム「呪詛玉」を使った「呪詛バトル」が、一部で賛否を巻き起こした。今作では「すべてを一新する」という気概のもと、完全に削除する予定であったというが、ファンからの要望もあり、部分的に盛り込まれる形になったという。

 他方、今回の発表にあわせて公開されたスクリーンショットのなかには、「問い詰める」「なだめる」「おどす」「ほめる」などのコマンドで構成された「コミュニケーションバトル」のような要素も見受けられた。これは前作の呪詛バトルに代わる新たなシステムであるとのこと。確認できたシーンが、代替システムの一部であるのか、全部であるのかは現時点で定かではないが、こうした箇所にも前作からの変化が見て取れる。

 一連の変更点にファンからどのような反応が寄せられるかは、当然ながらリリースされるまでわからない。しかし、特に後者のコミュニケーションバトルのような要素については、シリーズの評価点のひとつである「人間模様を軸にした物語」と地続きであり、一貫した世界観を構築してくれるのではないか。前作にあった呪詛バトルも悪くはなかったが、シナリオの軸となっていた世俗的な雰囲気とはやや乖離したシステムであったとも言える。ホラー、超常的な能力バトルからの脱却により、「パラノマサイト」はより、ノベル/アドベンチャーゲームとして物語と世界観の一貫性で勝負するシリーズとなっていくのかもしれない。

パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語

 前作のファンとして気になるのは、並垣祐太郎に代わる人気キャラクターが現れるのかどうかだ。『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』において、「足洗い屋敷」の呪詛玉に取り憑かれた彼は、主要登場人物のなかで唯一と言っても過言ではないほどの“クズぶり”を作中で発揮する。しかしながら、後日、ゲームメディアで行われたファン投票では、「好きなサブキャラクターランキング」の1位に輝いた。(※2)

 ある意味で嫌われ役であるはずの彼がその栄冠を勝ち取ったことは、ファンのあいだでも話題を呼んだ。石山氏が「想定外だった」と後のインタビューで言及するほどに、そのインパクトは大きかった。

 人間味のある魅力的なキャラクターに支えられた『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』のシナリオ、世界観にとって、損な役回りを一手に引き受ける並垣祐太郎の存在は、とても大きかったように思う。ヒットののちに広がったファンアートなどのムーブメントにおいても、彼は存在感を示している。こうした愛すべきキャラクターがいるかどうかも、成功への分岐点となっていく可能性がある。

パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語

 余談にはなるが、先にも述べたとおり、『パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語』は三重県伊勢志摩地方を舞台としている。登場する「亀島」は架空の離島だが、モデルになった場所は存在するとのこと。今後は三重県や鳥羽市の観光協会と協力して、さまざまなプロモーションが展開される可能性もあるそうだ。

 「伊勢志摩地方」「鳥羽市」「島」といったワードから想像するかぎり、モデルとなったのはおそらく、答志島、あるいは菅島だろう。ファンのなかには前者に目星をつけている方も多いかもしれないが、主人公が海女の少年であることを考えると、後者である可能性が高いのではないか。菅島は、全国でも有数の海女の多い地域として知られている。こうした予想を繰り広げることも、人気作が発売される前のひとつの楽しみ方であると言えるだろう。

 はたして『パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語』はどのような体験を届けてくれるだろうか。発売まであとわずか。いちファンとしては、前作超えのクオリティを期待したいところだ。

参照

※1 https://www.famitsu.com/article/202602/64954
※2 https://www.famitsu.com/news/202308/03311170.html

『パラノマサイト』から見る「本所七不思議」 幾度となく語り直された“強度の高い”怪談

本連載「ゲームの元ネタを巡る旅」では、ゲームの下地になった作品・伝承・神話・出来事などを追いかけ、多角的な視点からゲームを掘り下…

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