川崎をアジアNo.1エンタメシティに! DeNA元沢伸夫に聞く、新アリーナプロジェクトの狙い

人口155万人を擁し、政令指定都市の中で最も平均年齢が若い成長都市・川崎。その玄関口である「京急川崎駅」隣接エリアで、世界でも類を見ないプロジェクトが進行している。DeNAと京急電鉄が推進する「Kawasaki Arena-City Project」だ。
2030年10月の開業を目指す本プロジェクトの最大の特徴は、従来のデベロッパー主導型ではなく、ソフトコンテンツ企業であるDeNAが「アリーナを核としたまちづくり」を牽引している点にある。アリーナの屋上に「ルーフトップパーク」を設置することや、味の素、三菱化工機といったパートナーとの早期連携、社会実装型サステナビリティプラットフォーム「Kawasaki 2050 Model」など、常識にとらわれない手法で目指すものは何か。
川崎駅前に新アリーナ、2030年10月開業へ 「世界最先端のエンタメシティ」が始動
DeNAと京急電鉄が「Kawasaki Arena-City Project」の新パートナーシップ発表会を開催。新アリーナ開業は…プロジェクトを指揮するDeNAの元沢伸夫氏に、アジアNo.1のエンターテインメントシティ実現への勝算を聞いた。(編集部)
世界でも類を見ない「アリーナを核としたまちづくり」とは?

――まずは「Kawasaki Arena-City Project」の概要について、簡単にご説明いただけますか?
元沢伸夫(以下、元沢):ひと言で言うと、「アリーナを核としたまちづくりプロジェクト」になります。具体的には、京急川崎駅に隣接した場所に、1万人規模のメインアリーナ、2000人規模のライブホール、屋上にはルーフトップパークを設置した複合施設を建設し、そこを中心としたさまざまな複合開発を行うプロジェクトになります。要は、アリーナだけに留まらず、JR川崎駅を降りたところから京急川崎駅前、さらにはアリーナの裏手にある多摩川沿いの一角まで、アリーナを核としたひとつの「まちをつくる」というプロジェクトです。
――メインアリーナは、基本的にはプロバスケットボールクラブ、川崎ブレイブサンダースのホームアリーナとして使用されるのですか?
元沢:そうですね。ただ、Bリーグのホームでの試合数はレギュラーシーズンで30試合ぐらいなので、シーズンオフ――年間200日以上は、音楽ライブや格闘技のイベントなど、バスケットボール以外のさまざまな興行、エンターテインメントのイベント会場として稼働できればと思っています。ライブホールのほうも、スタンディングで2000人程度、着席で1500人程度を予定しているので、そちらでも音楽イベントを中心に、ダンスイベントなど、いろいろなエンターテインメントをやりたいと思っています。こちらはアリーナとの同日開催ができるような動線設計にし、年間300日以上稼働しようと考えています。つまり、365日何かしらのライブエンターテインメントが開催されているような、そんな施設になる予定です。
――「アリーナを核としたまちづくり」ということですが、首都圏では非常に珍しいように思います。どのような発想や経緯のもと、生まれたアイデアだったのでしょう?
元沢:まずは、川崎という街ですよね。川崎市全体の人口は実はどんどん伸び続けていて、今は約155万人、全国で6番目に大きい都市になっています。しかも、全国の政令指定都市の中で平均年齢がいちばん若い。そういった155万人都市の駅前のど真ん中にアリーナをつくるプロジェクトというのは、世界的に見てもほとんどないと思います。もちろん、スタジアムやアリーナを起点としたまちづくりはアメリカなどには結構あるのですが、大体街の中心から車で30分ぐらい離れた場所なんです。

――郊外の大型ショッピングモールみたいな感じですよね。
元沢:そうですね。そもそも都市の中心部に土地がないため必然的にそうなるのですが、今回はありがたいことに、京急電鉄さんのほうから「川崎のど真ん中にアリーナを建てたい」というお話をいただいて。これはもう、アリーナを建てるだけのプロジェクトではもったいない、この川崎という街全体を使って、新しいエンターテインメントシティがつくれるのではないかと思いました。ちょうど川崎市さんのほうでも、駅前のあの区画は都市開発のエリアになっていて、行政の意向と我々の意向が合致したところがあったんです。それであまり前例のない「アリーナを核としたまちづくり」というものにチャレンジしてみようということになったと言いますか、いろいろな方々を巻き込みながら、今回のプロジェクト自体がどんどん昇華していったようなところがあります。
世界初「ルーフトップパーク」や365日の稼働を目指すソフト起点の設計

――そもそも、その主体事業者の筆頭に「DeNA」の名前があるのは、どういった経緯だったのでしょう?
元沢:我々DeNAはデベロッパーではないですし、通常の再開発というのは、みなさんがよく知っているようなデベロッパーさんが大体主導します。そもそも我々は、まちづくりのプロでもないわけで。ただ、我々DeNAは、プロ野球やプロバスケットボールを中心に、ここ十数年のあいだ、いろいろなエンターテインメントコンテンツを開発してきた実績があります。端的に言うと、ソフトコンテンツ側の会社です。そういった企業が主導することによって、デベロッパー主導のまちづくりとは違う、みなさんがワクワクして楽しめるようなまちづくりができるのではないか。そういう意味で、「エンターテインメントシティ」というのをひとつキーワードとして掲げているんです。なので、デベロッパーさんから見たらありえないようなことを、実はたくさんやっています。
――たとえば、どんなことを?
元沢:そもそも、アリーナの設計段階からお金を掛けるポイントがまったく違うと思います。たとえば、最初に言ったように、アリーナの屋上に「ルーフトップパーク」というかなり広い庭園、公園そのものをつくってしまおうと思っているのですが、こういったものは恐らく世界初になるんです。なぜかというと、屋上に人を上げるためには膨大な建設コストが掛かるので、デベロッパーさんは絶対やらないと思います。ただ、今回僕らがつくろうとしているアリーナを核としたまちづくりの中で――川崎駅の東口って、いわゆる「憩いの場所」がほとんどないんですよね。ホテルや飲食店などの商業施設はすべてあるのですが、お昼にお弁当を食べたり、ベビーカーを押す親御さんたちが休んだり、子どもたちが遊んだりするような場所がないんです。だったら、アリーナの屋上にそれをつくってしまおうと。そこを「憩いの場」とすることで街の新しいアイコンにもなれますし、そこにもステージを作ろうと思っているので、そこでもライブエンターテインメントをやることができるというわけです。

――デベロッパーではないからこその発想が、今回のプロジェクトの端々にはあるわけですね。
元沢:はい。そのように、あくまでもエンターテインメントが主役であると言いますか、1万人規模のアリーナが最大の「ハレ」の場所になるのですが、その前に2000人規模のライブホールがあって、その前に屋上のステージだったり、京急電鉄さんの駅前の広場だったり、プロではない方々も使うことのできるちょっとしたステージがあって。そうやって、いろんなステージが重層的にあることで、ここに来れば365日、何かしらのエンターテインメントが楽しめるような、そういう場所にしたいと思っています。
――単にアリーナをつくるだけではなく、あくまでもソフト側が起点となって、いろいろなことを考えられているのですね。
元沢:そうなんです。そもそもは、川崎ブレイブサンダースを最大化するためと言いますか、DeNAが展開するいろいろなエンターテインメントを最大限みなさまにお見せするための「箱」が欲しいというところから始まった話なんですよね。だから、大きな「箱」をつくって、それを誰かに貸すようなことももちろんやっていくつもりですが、まずはソフト側の会社として、自分たちでもアリーナで開催できるバスケットボール以外のコンテンツの開発をどんどんやっていこうと思っています。たとえば、昨年の11月に川崎市さんと協力し、市内大型イベントの一つとして音楽ライブイベント「LIVE STOCK」をやらせていただいたのですが、あれも実はエンタメ開発の一環なんですよね。つまり、ハードをつくると同時に、そういったコンテンツの開発も同時にやるところが、実はこのプロジェクトの肝と言いますか、DeNAならではのアリーナづくり、まちづくりなのだと思います。




















