川崎をアジアNo.1エンタメシティに! DeNA元沢伸夫に聞く、新アリーナプロジェクトの狙い

川崎ブレイブサンダースを新アリーナでさらなる高みへ

――先ほど元沢さんの話にも出てきましたが、そこにはDeNAがプロ野球チームーー横浜DeNAベイスターズを運営する中で得たものが、いろいろと反映されていくのでしょうか?
元沢:私自身、ベイスターズには以前4年ほど関わってきて……もちろん、簡単ではなかったです。やはりそれなりの年数が掛かったわけですが、そうなったときの街の人々の喜び――いわゆる「シビックプライド」ですよね。自分の街を誇らしく思う気持ち。そうやって、ベイスターズを通じて街がにぎわう様子を見てきた経験は、今回のプロジェクトを進める上でも非常に大きいと思います。そのあと川崎ブレイブサンダースで同じような経験――それはまさに現在進行中の話ではありますが、今回のプロジェクトが成功すれば、みなさまに間違いなく多くの喜びを届けることができる。そういう確信があって、やっているところではあります。
――今回のプロジェクトは、これまで横浜DeNAベイスターズや川崎ブレイブサンダースで培ってきたことの集大成的な意味合いもあるのでしょうか?
元沢:そうですね。たとえば、川崎ブレイブサンダースは現在「東急ドレッセとどろきアリーナ」という川崎市の施設をホームアリーナとして利用させていただいているのですが、その施設だと、いろいろなエンターテインメントをやるにも限界があります。恐らく、今やっているものがもうマックスだと思うんです。ただ、本当はもっとやりたいことがあるんですよね。たとえば、美味しい名物料理をその場で作ってお客様に届けたいと思っても設備的な限界があります。照明や音響でもっと面白いエンターテインメント空間をつくりたいと思っても、施設の天井の荷重の問題でこれ以上照明を吊ることができない。そういったハード要件が、実はエンターテインメントの制限になっているようなところがあるんです。そういう意味で、今回のアリーナは、自分たちがやりたいことをあらかじめフルに実現できるような設備にしたいと思っています。だから、ただキャパシティの大きい会場をつくるのではなく、これまでとはまったく違うエンターテインメントを展開できるような施設になると思います。

――それこそ元沢さんは、2018年、川崎ブレイブサンダースの社長に就任したときから、ホームアリーナの建設を宣言していましたよね。
元沢:おっしゃる通りです。「B.LEAGUE PREMIER(Bプレミア)」の設立に伴い、高い基準を満たしたアリーナを用意しなければいけないという話が出てくる前、それこそ今おっしゃられたように、2018年に東芝さんからクラブを引き継いだときから、「1万人規模のアリーナをつくります」ということは宣言していて。その背景にあるのは、やはりそれまでプロ野球でやってきたことと言いますか、横浜スタジアムと球団というハードとソフトの一体経営があって初めて最大限のエンターテインメントが届けられるという確信ですよね。だから、そこはもう必須だと思っていました。
――そこからいろいろと話が進んでいって、今回のような「まちづくり」を含めた巨大プロジェクトになっていった?
元沢:そうです。実はもう何年も前から、川崎ブレイブサンダースの新アリーナの候補地として、30箇所ぐらいに声を掛けていただいて、いろんな場所を見てきたんですよね。ただ、その最後に川崎市さんと京急電鉄さんから強力なお声掛けをいただいて。それでまさにこの場所で一緒にやろうという話に落ち着いたわけで、それは非常に恵まれていると思います。僕らの力だけでは、このような立地でやることはできないですから。本当に感謝しています。もちろん、その背景には川崎市自体が成長し続けていることも大きいと思います。
――そんな「川崎」という街について、もう少し話を聞かせてください。元沢さん自身は、この街にどんな魅力を感じ、そこにどのような可能性を見ているのでしょう?
元沢:やはり、エンターテインメントシティだなって思います。特に川崎駅周辺には、昔からのエンターテインメントーーそれこそ、競馬や競輪もありますし、ラ・チッタデッラさんのようなシネコンを中心とした商業施設もかなり早い段階からあって。駅前で言うと、アトレ川崎さんやラゾーナ川崎プラザさんという商業施設があります。ラゾーナさんは、ほとんど日本一と言っていいぐらいのショッピングモールじゃないですか。といった感じで、商業施設や飲食店も含めて、もう街のあらゆる場所にエンターテインメントがそろっている街だと思います。それこそ、もともとは東海道の宿場町でもあって。
――そうですよね。いわゆる「川崎宿」だったわけで。
元沢:そうなんです。東海道五十三次で言ったら、品川の次が川崎なんですよね。さらには、京浜工業地帯もある。いろんな国の方も多いですし、アジアを中心にグローバルなコミュニティもたくさんある。川崎というのは、そうやってすでにいろいろなものがそろっているエンターテインメントシティなのですが、街を象徴するようなエンタメのアイコンがないんですよね。横浜だったら、横浜スタジアムだったり、横浜アリーナだったり、いろいろなものがあるじゃないですか。
――確かに。川崎には、横浜のみなとみらい地区のような、観光客が訪れるような場所もないですね。
元沢:もちろん、川崎大師という精神的な支柱はあるのですが、エンターテインメントの拠点と言いますか、その「顔」になるようなものがないんですよね。なので、そういったアイコンをつくることが、今回のアリーナシティプロジェクトの目的のひとつでもあるんです。もともと素晴らしいエンターテインメントの街に新たなアイコンが加わることで、市民はもちろん、それ以外の場所からもいろいろな人が訪れるような魅力的な街になるのではないか。それこそ、すべてが完成した暁には、少なくともアジアではナンバーワンのエンターテインメントシティになると思います。
味の素、三菱化工機らと目指す“社会実装型”サステナビリティ

――最後にもうひとつだけ聞かせてください。先日、第1弾のパートナーシップ企業として、味の素株式会社と三菱化工機株式会社の2社が発表されましたが、設計前の段階でこのような形で複数企業の参画が発表されること自体、あまり例がないように思います。これは、どういう意図なのでしょう?
元沢:このような形は日本では珍しいかもしれませんが、海外では「ファウンディングパートナー」と言って、決して珍しい形ではないと思います。要は、一緒にまちづくりをしていく共同パートナーみたいな形ですよね。それは、僕らがデベロッパーではないからこそできるやり方なのかもしれません。今回のプロジェクトは、我々DeNAと京急電鉄さんがいて、川崎市さんとも連携して一緒にやるわけですが、それだけで閉じてしまうのは非常にもったいないと思っていて。世の中には、あらゆる技術や知見をもとに面白いことをやっている企業がいっぱいあるわけです。それを結集させたいと思っているんです。実際、このような新しい形のまちづくりに興味を持っていただけるような企業は、いっぱいいらっしゃるんですよね。今回発表させていただいたのはその第一弾になるわけですが、そうやっていろいろな企業の力を借りてつくれたら、もっと面白いアリーナが、もっと面白いまちがつくれるのではないかと思っています。
――なるほど。
元沢:さらに、もうひとつ言うのであれば、今回のプロジェクトは「Kawasaki 2050 Model」として、持続可能な街の開発というのをコンセプトのひとつにしています。「Kawasaki 2050 Model」とは、DeNAと川崎ブレイブサンダースが、パートナー企業との共創を通じて社会課題の解決に挑む社会実装型サステナビリティプラットフォームです。川崎が抱える課題を基に、世界共通の社会課題から5つの重点テーマを選定し、「Kawasaki Arena-CityProject」を舞台に様々なパートナー企業との共創による社会実装を通じて2050年までに設定したゴールを達成し、世界における都市の新たなモデルになることを目標としています。要は、このアリーナシティを舞台に、パートナー企業との共創を通じてさまざまな社会課題の解決に挑み、次世代の都市モデルを目指そうという。そういう意味で、多くの企業と一緒に、今回のアリーナづくりに挑みたいと思っているんです。
――ちなみに、今回発表された2社は、具体的にはどのような形でプロジェクトに参画する予定なのでしょう?
元沢:まず、三菱化工機さんは、川崎のまさに京浜工業地帯に本社と工場がある企業で……アリーナって、多くの人が訪れ、いろいろなゴミが大量に出るわけですが、その一部を水素に変えて、三菱化工機さんの技術を使って再びアリーナに持ってきてアリーナで使用する電源の一部を担っていただくような形になります。すでに、そのための実証実験は始まっています。そして、味の素さんには、食とヘルスケアの領域を担っていただきます。それこそ先ほど言った屋上のルーフトップパークを中心に、たとえば食とヘルスケアのイベントであったり、いろいろな体験を一緒に作っていこうという。そうやって、ウェルビーイングというか、心身ともに健康になるような取り組みを一緒に提供したいと思っています。

――そういった形のパートナー企業は、今後も増える予定というか、まだまだ募集中なのでしょうか?
元沢:そうですね。開業までにはまだ約5年もありますから(笑)。それは「広告看板を出してください」という形のパートナーを求めているわけではなく、まさに一緒にアリーナをつくってくれるようなパートナーを募集しているということであって。広告看板を出してそれで終わりという形ではなく、新しいまちづくりとかコンテンツづくり、環境づくりみたいなところに興味のある企業と、ぜひご一緒したいと思っています。なので、一業種一社で大体20社ぐらいを上限に、今は考えているところです。そうすればきっと、全方位で面白いアリーナができると思うんです。
■Kawasaki Arena-City Project
2030年10月開業予定
公式サイト:https://kawasaki-arena-city.dena.com/




















