「アイマス」如月千早が武道館に“顕現”した夜を見て MRライブの常識を打ち破った最新機材に驚き

バンダイナムコエンターテインメントが、1月24日・25日に開催した「アイドルマスター」シリーズ(以下、「アイマス」)の音楽ライブイベント『如月千早単独武道館公演 「OathONE」』。本公演ではソニーPCLとの企画・技術協力プロジェクトとして、エンターテインメント向け群ロボットシステム『groovots(グルーボッツ)』が演出の一部に導入された。
『groovots』は、無線での移動制御が可能な台車の上部に大型のLEDパネルを備えたロボット。イメージとしては自走式デジタルスクリーンといったところだが、ライブステージ上での位置や方向などを正確に捉える位置精度を誇り、会場の音響信号と高精度に同期しながら、群体として稼働する点が最大の見どころだ。エンターテインメントとロボティクスそれぞれの専門知識を有するソニーグループの強みが遺憾なく発揮されたシステムとなっている。

本公演は、「アイマス」の登場キャラクター・如月千早による日本武道館でのMRライブである。「アイマス」ではこれまで、MR(複合現実)領域の取り組みとして、現実のライブ会場に設置した大型スクリーンに3Dモデルのキャラクターを映し出し、観客の前でパフォーマンスを披露するMRライブを多数開催してきた。
そんな「アイマス」のMRライブ史上初の試みとなった『groovots』の投入。ラインナップとしては約0.3m×1.3mのLEDパネルを備えたロボット(便宜上、小型モデルとする)12機と、本公演に向けて新たに開発されこの日が初の一般公開となったパネルサイズ約2m×2mの大型モデル1機。大型モデルに関しては、身長162cmの千早がすっぽり収まるには十分なサイズ感というわけだ。
実際に大型モデルは、両日ともライブ中盤のお色直しのタイミングにて登場。センターステージでパフォーマンスを終えた千早が、花道を歩いて捌けていく姿を見事に表現してみせた。
この演出を簡単に実現しようと思ったら花道の上に横長のモニターを設置すれば事足りるわけだが、実際に会場で『groovots』大型モデルによるこの光景を目の当たりにしてみるとインパクトは絶大。直前まで視界を遮るものがなかった空間に突如として千早が現れ、左右の客席に手を振りながらゆったりと歩いていく姿には、平面モニターでは出せない臨場感があったように思う。観客席からも「ヤバっ!」との声や、思わず息を呑むような空気を感じた。
対岸の客席のペンライトの光などによってモニターの輪郭が浮き彫りになるため『groovots』の気配は完全には消しきれないとはいえ、あからさまな“映像っぽさ”を感じなかったのは、千早の歩みの緩急に合わせるような精密なスピード制御と、減速時にもブレのない安定した走行性能があったからこそだろうか。
続いて小型モデルもライブ後半で全機お目見えに。星海をテーマにしたパートでは星々を映しながらセンターステージの周囲を衛星のごとく駆け回ったり、『細氷』の歌唱時には氷柱をイメージしたと思われるビジュアルで回転したりと舞台を彩った。
小型モデルは幅の狭い舞台上をかなりのスピードで疾走していたのだが、方向転換や急停止も非常に滑らか。ロボットどうしがすれ違うシーンも幾度となくあったのは、移動制御の精度に対する自信の表れか。12機が円形に広がってぐるぐる周回する場面は、事前情報がなければステージ上にターンテーブルが設置されていたのだと勘違いしていただろう。縦長の高重心そうな形状に加え、全高1.5mはあろうかというサイズ感にもかかわらず、安定した動作ぶりを披露していたのには舌を巻いた。
デジタルな映像をまとった12機のロボットが一糸乱れぬ動きを見せる。こうした有機的な振る舞いをする無機物の群体というと、近年はドローンショーなどでも目にする光景かと思うが、『groovots』はより映像表示に特化した設計であることもあり、初見時の衝撃はSF映画を観ているときのそれに近かった。あるいはゲーム的と表現してもいいだろうか。まばゆい光を放ちながらその場で回転する『groovots』を眺めながら、「RPGによくあるセーブポイントのクリスタルが現実に飛び出してきたらこんな感じだろうか……」と思わずにはいられなかった。
なお、公演初日では1機にトラブルが発生し演目の合間でスタッフに連れられ退場する場面も。ただ、当該機以外は何事もなかったように動作を続けていたことは付け加えておきたい。たまたま全機に波及しない類のトラブルだった可能性もあるだろうが、エンタメ現場での運用を前提とするシステムであるからには不具合にも強い設計になっていると考えても不思議ではないだろう。
アンコール後のエンドロールでは『groovots』が全機クレジットされており、その活躍を称えて客席からは歓声と温かい拍手が送られた。「アイマス」きっての歌姫・如月千早の集大成ともいうべき晴れ舞台を華々しく演出してくれた『groovots』。デジタルと現実の架け橋役としての可能性を秘めた本システム、もとい彼らの活躍に今後も期待していきたい。































