KDDI&東急&みずほが“メタバースのルール作り”に注力した理由 キーパーソンたちが語り合う「バーチャルシティコンソーシアム」の歩み

KDDI、東急、みずほリサーチ&テクノロジーズ、渋谷未来デザインで組成している「バーチャルシティコンソーシアム」が現在、注目を集めている。都市連動型メタバースの利活用に向けた 「バーチャルシティガイドライン」を策定するために始動したプロジェクトで、産学連携の象徴的な取り組みだ。
メタバース関連の法整備を一歩前に進めた「バーチャルシティコンソーシアム」についての特集記事の最後を飾るのは、KDDI株式会社 事業創造本部 LXビジネス推進部 エキスパート 兼 慶應義塾大学 大学院 政策・メディア研究科 特任講師の川本大功氏と同社でオープンイノベーション推進本部 BI推進部1G コアスタッフを務める蓬田篤史氏、東急株式会社 文化・エンターテインメント事業部 エンターテインメント戦略グループ 参事の渡邊彰浩氏、みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社 戦略コンサルティング部 マネージャーの阿部一郎氏と同社のデジタルコンサルティング部 コンサルタントである日比野充貴氏の5名だ。
今回の対談は「バーチャルシティコンソーシアム」の成り立ちとして、4社が組んだ背景や前身プロジェクトから受け継いだ理念、コロナ禍前後で変わったメタバースを巡る状況の推移、そのなかで「バーチャルシティコンソーシアム」や「バーチャルシティガイドライン」が果たした役割、プロジェクトの今後などについて、たっぷりと話を聞いた。(編集部)
“手触り感のあるルール”を作るために。「バーチャルシティコンソーシアム」設立の経緯

――まず、あらためてにはなりますが、バーチャルシティコンソーシアムの成り立ちについてお話しください。
川本:2020年に「バーチャル渋谷」をローンチしたのが発端です。当時、企画段階から地域連携や自治体との協働が重要だと考え、渋谷未来デザインさんや東急さんをはじめとしたパートナー様と議論を重ねてローンチしました。
その後、様々な「バーチャル◯◯」が登場しました。それらは「バーチャル渋谷」と近いコンセプトもあれば、異なるコンセプトもありましたが、つまずきそうなポイントや気にしているポイントは似ていると気づきました。そして、「バーチャル渋谷」を作った後、いろんな自治体様や企業様から「似たようなことをやりたいんだけど、このあたりのルールはどうしているのか」といった問い合わせが多く寄せられていたんです。例えば、建物の権利などですね。
同じころ、経済産業省が仮想空間に関する調査として「令和2年度コンテンツ海外展開促進事業(仮想空間の今後の可能性と諸課題に関する調査分析事業)」を実施していました。その調査結果には「ルールメイク」が今後必要な項目として挙げられていました。これは私たちも同感で、同時に何か問題が起きてから国主導でルールを作るのではなく、民間主体で最初から手触り感のあるルールを先に出し、共通理解を作るのがベターだと考えました。
私自身、前職のデジタルハリウッド株式会社ではロボティクスアカデミーというドローンの学校の立ち上げに関わっていたのですが、ドローンは首相官邸の墜落事件などが重なったことで、国が主導となって基準や安全管理についてのルール化が急速に進んでいったんですよね。
それを見ていて、課題や問題が起きてからの国主導のルール作りは、良くも悪くも性悪説の議論が軸になると気づきました。それは正しいことだと思いますが、このやり方では再び問題が起こらないようにするためのルールづくりになるため、事業で可能性を追求しようとする動きとは衝突しがちです。
事業の可能性を探求する上で重要な考え方が共通理解になるよう事前に整理して明文化し、自主規制的に手触り感のあるルールを民間からいち早く提示できるようにする方がよい――この考えが、バーチャルシティコンソーシアムの活動の根幹にあります。
――前身となる動きもあったかと思います。設立以前の流れについてもお話しいただければ幸いです。
川本:プロジェクトの経緯を整理すると、最初は渋谷未来デザイン、渋谷区観光協会、KDDIの3社で「渋谷エンタメテック推進プロジェクト」をスモールスタートしました。そこに様々な企業さんから参画したいと声掛けいただき、そういった方がパートナーに入れる座組として「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」を立ち上げました。
そこにコロナ禍が来たので、5Gエンタメプロジェクトの一環として「バーチャル渋谷」が作られました。2020年の5月ですね。その後、年末にルール作りの必要性を感じ、2021年の夏ごろに関係各所にお声掛けし、準備を経て、2021年11月にバーチャルシティコンソーシアム設立を発表しました。そして、翌年の2022年4月に、バーチャルシティガイドライン バージョン1.0を発表しました。
ちなみに、バーチャルシティガイドラインは、メタバース全般を扱ったものではなく、あくまでも「バーチャル渋谷」を作った時や、渋谷に関わる利害関係者とお話しさせていただいた経験から、「バーチャル渋谷はこのように考え、論点をこのように整理しました」いう内容を共有するというスタンスです。
当初はメタバース全般のルールを作るアイデアもありましたが、限られた利害関係者の議論でルールの正当性が担保できるかわからなかったので、「バーチャル渋谷」を叩き台として論点整理をするに留めています。国が議論を始めることも予測できていたので、その際にも参考にしてもらえるような形で公開した、という経緯があります。
多種多様な企業やアドバイザーで形成された「最小のマルチステークホルダー・プロセス」
――参画企業の東急さん、みずほさんは、どのような経緯でバーチャルシティコンソーシアムに参加されましたか?
渡邊:東急は、KDDIさんらによる「バーチャル渋谷」立ち上げタイミングで、「フィジカルな街作りをしている会社として連携できることはないか」と川本さんたちとお話しさせていただいたのがきっかけです。
東急としても、渋谷はエンターテインメントの街としてブランディングしていたので、「バーチャル渋谷」もリアルの渋谷と連動し、相互に送客することで街を盛り上げられると考え、積極的に関わらせていただくようになりました。
阿部:みずほはもともと、渋谷未来デザイン立ち上げの段階で協力させていただいていました。直接的な経緯は「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」を作った時ですね。テクノロジーにも詳しい者の参加が適切と考え、その領域を理解できるみずほリサーチ&テクノロジーズとして参加させていただきました。
川本:スピード感をもって最初のドキュメントを出し、かつ正当性のバランスもある程度確保したかったので、街作りの観点で東急さん、自治体の観点で渋谷未来デザインさん、金融や対自治体・企業の観点からみずほリサーチ&テクノロジーズさんをお招きしました。「最小のマルチステークホルダー・プロセス」と自分は呼んでいますが、街づくりや自治体運用に関する意見が集まるようなキーとなるところへお声掛けしました。
――外部アドバイザーも多数参画されています。アドバイザーはどのような観点で選出されたのでしょうか?
川本:まず、エンタメ活用や、クリエイターサイドとの接点に関する議論が発生すると考え、デジタルハリウッド大学の杉山知之学長にお声掛けしました。ちなみに、お声掛けしてから教えてもらったのですが、『SecondLife』ブーム時にも同じような団体が立ち上がり、杉山先生も参画していたとのことで、そのあたりの知見もご提供いただいています。
2つ目がソフトローの観点で、先行事例として最も社会的にも普及している「クリエイティブ・コモンズ」の運営に関わった渡辺智暁先生にご参画いただきました。オープンなルール作りや、オープンカルチャーに取り組む際のルール検討などで、ガバナンスの重要な視点が必要と考えられたので。一方、現行法との差分についても考える必要はあると考え、法律の専門家として弁護士の道下剣志郎先生にもお声掛けしました。
小泉秀樹先生は街作りの観点から参画いただきました。もともと渋谷未来デザインの観点からずっとアドバイスをいただいていましたが、都市とどう付き合っていくかや、コミュニティをどうしていくかなど、アカデミックな街作りの観点でディスカッションが必要と考え、バーチャルシティコンソーシアムにも参画いただきました。






















