「芸能界を許せない」川口春奈演じる週刊誌記者の“複雑な過去”が明らかに 『スキャンダルイブ』4話

井岡咲(柴咲コウ)の経営する個人事務所が、芸能界の大きな闇に飲まれかけている。
看板俳優=藤原玖生(浅香航大)の不倫スキャンダルが報じられてからしばらく。同問題の解決に奔走したところ、最終的に掘り当ててしまったのが、ふたりの前職であるKODAMAプロダクション、そして芸能界きっての重鎮=麻生秀人(鈴木一真)による性加害疑惑だった。
KODAMAプロダクションは、現在進行形で犯されている麻生の性加害を隠蔽すべく、5年前の藤原の不倫スキャンダルを利用した。だとすれば、それを告発しなければならない(もちろん、藤原の不倫自体も許されたものではないが、これはハニートラップだったと前々回までに証明済み。かつ、麻生が高級ホテルの一室にて、ロイヤルブルーのいかにもなバスローブ姿で若い女性の前に姿を見せるシーンは、嫌な生々しさがあった。もちろん、咲たちはまだこの事実を知らないものの)。
なにより咲にとって、これは平山梨沙のためだけではない。「今回のことは、氷山の一角にすぎない。理不尽に傷つけられた人たちの訴えが、忖度や情報操作でかき消される。そんなことが罷り通るのはおかしい」「見て見ぬふりなんてできない」から。しかしながら、麻生に歯向かうことは、大手事務所のKODAMAプロダクションにそうすることと同義。その瞬間、咲の事務所は芸能界から本格的にシャットアウトされる。それでも、過去の“なにか”を背負う咲には、絶対に立ち向かわねばならないと意志を固める以外、頭にはなかった。
そんな筋書きから始まった、12月10日公開のABEMAオリジナルドラマ『スキャンダルイブ』4話。今週のキーパーソンは、実はこれまでたびたび登場していた、平山梨沙(茅島みずき)なる謎の人物である。
キーパーソンだけあって、彼女の映り方は登場人物ごとにさまざま。本稿では、この“映り方”という部分について、4名の視点から見ていきたい。
まず、咲のかつての同僚=明石隆之(横山裕)の視点から。前回の3話にて、明石は平山梨沙が務めるラウンジで接近。見舞金を支払う代わりに“示談”を持ちかける。そう、彼女こそ、麻生の毒牙による被害者本人。KODAMAプロダクションが“黙らせておきたい”最重要人物にほかならない。この間、麻生のスキャンダル記事を書きかけていた二宮涼(柳俊太郎)に押しかけてきた謎の女性「R」も、平山“梨”沙のイニシャルに由来しているのだろう。
それは咲の視点で言い換えてみれば、平山梨沙=麻生告発の絶対に欠かせないピースとなる。とはいえ、まだ被害女性の素性を知らない咲にとって、ここから平山梨沙を特定するのは雲を掴むようなもの。ここで利用されるのが……明石。彼を事務所に呼び出し、麻生に関するスキャンダルが噂されていると、伝聞調で伝える。かつての同僚のよしみとして、あくまで明石と麻生を心配する体裁でだ。
すると、その場では平静を装うも、咲の事務所を出てすぐさまに焦った様子で電話をかけ、その晩のうちに平山梨沙のラウンジを再突撃する凡人、明石。咲の右腕である副社長=香川誠(橋本淳)に尾行され、被害女性=平山梨沙の所在を知らぬ間に教えてしまった。それにしても明石、ここまでの行動からして当たり前だが、咲からの信用ゲージがゼロを振り切ってマイナスすぎる。
本稿では便宜上、先に明かす形となってしまったが、彼女がかつて「平山梨沙」の芸名でタレント活動をしていたとわかったのが、顧問弁護士の戸崎勉(鈴木浩介)を交えて、当人に告発を踏み出すよう持ちかけたときのこと。とはいえ、現在はラウンジに勤務していることからも読み取れる通り、結論からいえばタレントとしては全然“売れなかった”。
彼女を見つめる第3の視点は、“世間”である(もしかすると、我々視聴者もそのうちに含まれるのかもしれない)。展開を先回りしてしまい恐縮ながら、4話終盤、平山梨沙は夜のクラブで絡んできた男ふたりに激情。片方の男を、ビール瓶で殴り倒す(この際、手元のスマホをバーカンに置き忘れて立ち去ったと思ったら、すっとした表情でビール瓶片手に戻ってくるという、動きの“伏線”の作り方が見事だった)。
直前、彼女は男たちからこんなことを言われていた。かつて、グラビアアイドルをしていたこと。それでも、すぐに“消えた”こと。クラブでひとり寂しく酒を飲んでいること。であれば、アダルトビデオに出た方がよほど売れるんじゃない?、と。
咲の事務所に場面を戻そう。彼女の持ちかけに対して、平山梨沙は示談を選択しかける。「できることはもう、全部した」とこぼすも、「本当に“ご納得”されたうえで判断されたのですね?」と詰めるのが、戸崎。相変わらずの役柄というか、いいキャラをしている。こういう感情を知らなさそうな弁護士、本当によくいる。
そこでぶつけられた、平山梨沙の本心。「あなたたちにわかりますか? ネットでも、テレビでも、嫌でもアイツの顔が目に入る。私に、あんなことしておいて。なにもなかったみたいにスポットライトを浴びて笑ってる。納得できるわけ、ないじゃないですか」。
これを聞いて、咲はもはやステークホルダーとなった平田奏(川口春奈)とすぐさま連携。奏が平山梨沙を取材し、告発記事を執筆。KODAMAプロダクションの息がかかった『週刊文潮』以外への持ち込みを検討すると話し合う最中、時が止まった。
奏は平山梨沙を見て「彼女、ですか……? “莉子”……」。対する、平山梨沙。「この人に、話すことはありません」と、明らかに動揺して事務所を飛び出してしまうーーすべてが繋がった。
第4=最後の視点は、奏から見た、平山梨沙。彼女は奏にとって、実の妹だった。おそらくの本名は、平田莉子だろう。「R」のイニシャルも、“梨”沙、そして“莉”子を意味していたのだと思われる。
平山梨沙=莉子は高校生の頃、芸能事務所からスカウトされるも、気づけば疎遠になり、亡くなった父親の葬儀にも現れず、母親に無用な心配をかけてばかり。「甘い話で夢だけ見させて、使い捨てる芸能界を許せない」とは、この場面での奏の言葉だ。
ここで判明した事実が、ふたつ。ひとつめは、奏が芸能界を毛嫌いしていたのは、前述の過去があるため。そしてもうひとつは、“芸能界”の権化である麻生が宿敵であったと同時に、すでに自身の妹に手を掛けていること。奏は、肉親の性被害事案の記事を書かねばならない。最悪の仕事を、知らぬ間に請け負っていたのだ。
その後、奏は咲のもとを再び訪れ、この件からは手を引くことを宣言。すると、咲がおもむろに一本のビデオを再生する。かつて、KODAMAプロダクションで開催されたオーディション映像。そこには、まだ純真だった頃の莉子の姿があった。
たしかに父親の葬儀に顔を出さず、いまなお母親に心配をかけている。それでもずっと必死に戦ってきたのは、ひとえにいつか家族に認めてもらうため。芸能界には汚れた一面もあるなか、ほとんどのタレントは必死に努力し、マネジメントする人間たちも全力を尽くしている。「それでも認められない孤独を、私は理解しているつもりです」。咲は奏に、ゆっくりとそう語った。
件の“クラブ騒動”の夜。奏は警察署に、莉子の身元引き受けに向かう。ここで、奏に変化が見られた。彼女が莉子にぶつけた「どんなに実力があって努力したって、叶わないことがある」「それでも莉子は莉子で、負けないように、必死に自分の人生を頑張って生きてきた。そうだったんでしょ?」。これは、先ほど咲から告げられたのと同じ言葉。そしてなにより、奏がここまで言えずにいた本心である。
平田奏と、平田莉子。それぞれの自我の強さゆえ、素直に本音を伝えることができない。本当に不器用すぎる家族である。でも、だからこそ、そんな自我の強さが合わさったときの力は計り知れない。「麻生を告発したい」「だから、お姉ちゃんが記事にして」。奏、一世一代の大仕事の時間だ。
























