歌広場淳のフルコンボでGO!!!

歌広場淳が見た『東京ゲームショウ2025』の熱狂 ストリーマーの台頭でTGSに訪れた“変化”とは

TGSに「アキラ」で挑む “盛り上げ役”として立った『バーチャファイター』ステージ

 ここまでお話ししたのは、ビジネスデーとパブリックデー(1日目)に参加した僕の感想です。3日間通して会場を回り、最終日となる4日目には、『Virtua Fighter 5 R.E.V.O. World Stage』のステージに出演させていただきました。きっかけは今年の「EVO Japan 2025」で行われた『Virtua Fighter 5 R.E.V.O.』のチーム大会「ビートライブカップ」。そこで板橋ザンギエフさんに声をかけてもらって5on5のチームを組んだのですが、そのメンバーたちが今回のステージにも呼ばれていました。

 出演者はぼんじゅうるさんやカマたくさんなど、インフルエンサーとしても有名な方々。プロゲーマーも同じステージに並んでいて、すごく面白い構成でした。イベントが始まったのは、最終日(9月28日)の朝10時15分。午前という早い時間帯でしたが、観客の方々が大勢集まってくれて感動しました。

 その時、自分は「ストリーマーではない」ということを何となく感じました。というのも、僕は「ゲームを極める」というより、会場全体を盛り上げたり、観客を巻き込んで楽しくするのが得意なんですよね。板橋ザンギエフさんはそんな僕のスタイルを受け入れてくれる懐の深い方で、プロとして勝ちにこだわりながらもエンタメとして場を盛り上げる姿が本当に印象的でした。

 正直、「こういう場には本来プロゲーマーが立つべきなんじゃないか」と思う瞬間もありました。「バーチャファイター」は歴史あるタイトルで、かつては制度がなくて“プロになれなかった”上手い人がたくさんいる。でも今はeスポーツ化の波で再注目されている。そんな中で僕たちに声をかけてくださったということは、「まずはエンタメとして広めたい」という意図があるんだろうなと思いました。だから僕の役目は“勝つこと”より、“バーチャファイターらしさを見せること”だと考えたんです。そこで、これまで使っていた「リオン・ラファール」(リオン)ではなく、シリーズの象徴的キャラ「結城晶」(アキラ)を選びました。

 アキラは操作が非常に難しく、当日は慣れない環境もあり、なかなか思うようには動かせなかったんです。それでも、「このキャラを使いたい」と思えた自分にかなり驚きましたね。

 以前の僕なら「こっちもゲーム上手いんだからなめるなよ」という気持ちで挑んでいたかもしれません。でも今回は、「『バーチャファイター』を知らない人に、このゲームの顔として見せたい」という思いが強かった。自分でもちょっと感動したというか。観客の皆さんも喜んでくれて、「アキラが見られるとは思わなかった」と言ってくれました。最終的にカマたくさんとの試合で負けてしまいましたが、それも含めて良い経験になったと思います。

 イベントの方は、ぼんじゅうるさんが板橋ザンギエフさんに勝つという劇的な展開で、会場は大歓声。ゲームプロデューサーの青木盛治さんも笑顔で喜んでいて、最高の盛り上がりでした。ステージ時間を少しオーバーしてしまったのですが、「大丈夫ですよ」と言ってくださって、本当にありがたかったです。

 終わったあともみんなで楽屋に戻り、「あそこ面白かったよね」と興奮冷めやらぬ感じで話し込みました。あんなに一体感を感じたのは久しぶりでしたね。観に来てくれた方々にも、きっと良いステージをお見せできたと思います。

 あとは僕自身、10年以上ぶりに「バーチャファイター」をプレイして、ほとんど初心者に戻ったような気持ちでした。イベントで少し触っただけでも、本当に楽しかった。ゲーム自体が楽しくなければ、ステージも盛り上がりませんからね。心から「面白い」と思える作品です。

 「バーチャファイター」のコミュニティは「高齢化している」とよくネタにされますが、今回の新展開でおじさんゲーマーたちが再び元気になっている。それが僕はすごくうれしいんです。

 eスポーツの世界では若手プレイヤーがどんどん台頭していますが、その裏には“おじゲーマーの踏ん張り”がある。「バーチャファイター」はまさに「おじさんたちはまだ強いぞ」と感じさせてくれるタイトルではないでしょうか。若手プレイヤーとベテラン勢が同じ舞台で交流できますし、もし少しでも興味があるなら、ぜひ友達を誘ってプレイしてみてほしいです。

関連グッズも急増中 格ゲー文化を再燃させた『スト6』旋風

 インディーゲームの存在感やビジネスデーの活況など、今回のTGSはいろんな角度から議論できる内容だったと思います。

 本来ビジネスデーは、ゲーム業界に携わる方が快適にゲームを見たり企業が交流・取引する場だと思います。しかし、今年は一般日と変わらないほど混雑していました。もはや最初期のゲームショウの姿とは違うわけです。さらに、2026年度は5日間開催で一般日は3日間になるそうです。ゲームショウというイベント自体が大きく形を変えている。来年はそれが顕著になると思いますし、そうした「変化」を多角的に考えさせられる2025年でしたね。

 同時に、物販エリアの充実ぶりにも驚きました。今年はどのブースもアパレルに力を入れていて、Tシャツやパーカーなどおしゃれなデザインが本当に多かった。30年前のタイトルの復刻Tシャツなど、「こんなのあったんだ!」と目を引くものばかりでした。

 僕もバンド仲間と一緒に見て回ったのですが、目当てのブースを見終えたあとに物販を回ると、みんな口を揃えて「楽しい!」と言うんです。「ロックマン」のTシャツを見つけて盛り上がる人もいて、ゲームショウ自体に出展していないタイトルのグッズが並んでいるのも面白かった。僕自身もかなりテンションが上がりましたね。

 そして何より、今年は格闘ゲーム関連の商品がたくさん増えていたんです。これには本当に驚きました。皆さんもご存知かもしれませんが、明らかに『ストリートファイター6』の流行が影響していますね。

 コントローラーパッドやレバーレス機器など、5年前にはほとんど見かけなかったデバイスが、今では何倍にも増えている。アケコン(アーケードコントローラー)の新作も展示されていて、スタッフの方と話したら「来年の春に発売予定なんです」と教えてもらいました。「アケコンってまだ出るんだ!」とワクワクしましたね。格闘ゲームが再び日の目を浴びていることを肌身で味わうと同時に「来年は5日間通うんだろうなぁ」と思わずにいられないTGSとなりました。

『EVO Japan 2025』を楽しみ尽くした歌広場淳 再認識した「参加する意義」と“推し”をつくる素晴らしさ

大のゲームフリークとして知られ、ゲーマーからの信頼も厚いゴールデンボンバー・歌広場淳による連載「歌広場淳のフルコンボでGO!!!…

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