『ラヴ上等』や『あいの里』『ボーイフレンド』新シーズンにも期待 Netflix日本上陸から10年、恋愛リアリティ番組の歩み

Netflix10周年、“恋愛リア”の歩み

 Netflixが日本に上陸した2015年、エンターテインメントの常識が変わった。録画という概念を超越し、無数の作品を「いつでも、どこでも」楽しめる新しい世界の扉が開かれたのだ。あれから10年。日本での配信開始から10周年を迎えたNetflixが切り拓いた革新的な体験は、もはや私たちの日常に溶け込み、空気のように当然の存在となった。

 この変革の波に乗って、アニメや映画・ドラマと肩を並べながら、ひときわ熱い視線を集め続けているコンテンツがある。恋愛リアリティショーだ。

 ここでまず押さえておきたいのは、Netflixの恋愛リアリティ番組には大きく二つの流れがあることだ。

 一つは『あいの里』『ボーイフレンド』『オフラインラブ』といった、Netflix自らが企画・制作するオリジナル作品群。もう一つは『あいのり』『オオカミちゃんには騙されない』のように、外部で制作された人気シリーズをNetflixがグローバル配信し、時にはNetflix版として新作を手がけた作品群である。つまりNetflixの恋リアの魅力は、完全オリジナルによる挑戦と、配信プラットフォームとして世界への橋渡しをする、この2つの顔によって形づくられてきたといえる。

 その出発点となったのが、フジテレビとの共同製作により配信された『テラスハウス』新シーズンだ。男女6人が共同生活を送り、その日常から自然に生まれる友情や恋を記録するスタイルは、台本のないリアリティ番組として国内外で鮮烈に受け止められた。舞台をハワイや軽井沢に移しながら続いたシリーズは、Netflixの同時配信によって「日本発のリアリティ番組」が世界で愛される前例を作り、以後の恋リアの方向性を大きく広げていくことになった。

テラスハウス ボーイズ&ガールズ イン・ザ・シティ 特別映像 - Netflix [HD]

 やがてNetflixは、従来の枠組みに収まらない実験的な企画を次々と打ち出していく。2022年に配信された『ラブ・イズ・ブラインド JAPAN』は、米国発の実験型婚活リアリティショー。アメリカでは2021年の『エミー賞』でリアリティ部門ほか2部門にノミネートされた話題作である。顔を合わせずに声だけで相手を知り、プロポーズを経てから初めて対面するという仕掛けを導入し、多くの視聴者に「恋愛に本当に必要なものは何か」という根源的な問いを突きつけた。さらにABEMAとタッグを組み、ABEMA発の人気シリーズ『恋愛ドラマな恋がしたい』をベースに韓国ロケを展開した『韓国ドラマな恋がしたい』なども加わり、国境や文化の垣根を越えて多様な恋のかたちを描くラインナップへと広がっていった。

「ラブ・イズ・ブラインド JAPAN」予告編 - Netflix
『韓国ドラマな恋がしたい』予告編 - Netflix

 そして近年、Netflix日本の恋愛リアリティにおける大きな転機となったのが、2023年配信の『あいの里』と、2024年配信の『ボーイフレンド』だ。『あいの里』は35歳以上の男女が古民家で共同生活を送りながら、もう一度恋を探す姿を描いた。若者中心に描かれがちだった恋愛リアリティの枠を大きく広げ、“人生の後半にも恋は訪れる”という力強いメッセージを提示した作品である。恋愛のときめきと共に、これまでの生き方や価値観、過去の傷や後悔までもが交錯し、その濃度の高さは視聴者に「恋愛を見守る」以上の深い共感を呼び起こした。

「あいの里」ダイジェスト映像 - Netflix

 一方、『ボーイフレンド』は日本初の男性同士の恋愛リアリティショーとして、9人の青年が共同生活とコーヒートラックの運営を通じて友情と恋愛の狭間を行き来する姿を映し出した。単なる「誰と誰が結ばれるか」という結果を超え、人間関係そのものの豊かさを描いた点で画期的である。LGBTQ+をテーマに据えながらも、たどり着くのは誰もが共感できる“誰かを好きになる感情”であり、そこに普遍性がある。

リアリティシリーズ「ボーイフレンド」予告編 - Netflix

 Netflixの生み出す恋愛リアリティ番組の魅力は、まさにこうした見過ごされてしまいがちな恋が生まれる瞬間を作品として可視化する点にある。恋愛リアリティショーの世界では、若年層の男女の恋愛にスポットが当たるケースが多い。しかし、Netflixは年齢や性別に境界を設けず、多様な愛のあり方をそのまま描いてきたとも言える。他局でも尖ったリアリティショーの企画は増えているが、Netflixの恋愛リアリティが持つ強みは、常にグローバル市場を視野に入れている点だ。幅広い層に開かれ、誰もが楽しめる普遍性を備えているからこそ、世界中の視聴者に届き、共感を生み出しているのだろう。

 その挑戦は近作『オフラインラブ』にも表れている。スマホを手放し、異国の地で出会うという現代的な前提をあえて外した設定は、人が惹かれ合う瞬間を鮮やかに映し出し、国境を越えて共感を呼んだ。先日行われた『ネトフリ恋愛リアリティショー 合同同窓会』では、『オフラインラブ』に出演したアルや『ボーイフレンド』のアランが、Netflix発の恋愛リアリティ番組が海外でも熱狂的な支持を集めていることを語り、ブラジルでランキング入りを果たしたエピソードも紹介された。こうした事例は、Netflixの恋愛リアリティ番組の国際的な共感力を象徴しているといえるのではないか。

リアリティシリーズ「オフライン ラブ 」予告編 - Netflix
ネトフリ恋愛リアリティショー 合同同窓会

 10周年を迎えたNetflixは今後、ヤンキーたちの“本気(マジ)純愛”にフォーカスする新作『ラヴ上等』に加え、『あいの里』シーズン3、『ボーイフレンド』シーズン2といった続編の放送を予定している。『テラスハウス』から始まった挑戦は、数々の実験を経て、多様な恋と人生を描く作品群へと広がってきた。その歩みは決して止まることなく、これからの10年もまた、誰も見たことのない恋のドラマが視聴者を楽しませてくれるに違いない。

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