『ワンフェス2025上海』に見るゲーム系フィギュアの活況 中国らしい“大型でリアル”なスタチューに期待膨らむ
10月2日から3日にかけて開催された『ワンダーフェスティバル2025上海』(以下上海WF)。日本のワンダーフェスティバルとは違い「企業ブースにおける新製品発表」がメインとなった印象のあるこの上海WFだが、その中にはいくつもゲームを題材としたフィギュア・スタチューが展示されていた。

「世界最大級の造形・フィギュアの祭典」として知られる『ワンダーフェスティバル』(以下ワンフェス)。2018年からは、初の海外開催として上海WFが開催されている。コロナによる中断も挟みつつ、去年に続いて今年も無事の開催となった。会場となる上海新国際博覧中心は幕張メッセのおよそ8倍という広大な面積を誇る大型展示会場で、今年はこのセンターの17ホールのうち4ホールを使って開催された。

4ホールのうち3ホールは、いわゆる企業ブースの出店が中心。アマチュアディーラーは1ホールにまとめられる形となっている。広大すぎるホール内を歩いていると、ちょこちょこ目につくのがゲーム系のフィギュア。もちろんワンフェスなので美少女やロボットのフィギュアが圧倒的に多いのだが、その中に混じって、ちらほらとゲームを題材にしたフィギュアやブースが人を集めているのである。
まるごとゲームデベロッパーが出展しているブースといえば、まずはKOJIMA PRODUCTIONSである。ブース内は『DEATH STRANDING』をテーマにしたデザインで統一されており、大型ディスプレイでは『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』の映像が流れる中、各所にゲーム内で使われた荷物用コンテナを配置。サイン入りのBBポッドやプライム1スタジオによる巨大なサムのスタチュー、コトブキヤから発売されるゴーストメック コフィンズのプラモデルなど、メーカーを横断した『DEATH STRANDING 2』関連商品を展示していた。物販も大盛況で、2日目にならなければ中がどうなっているのか見えなかったほどである。








また、ゲームという点ではPUREARTSのブースも充実していた。PUREARTSはアーティスト兼コレクターのユーグ・マーテルによって2008年に設立されたコレクターズフィギュアメーカーで、上海・深圳・モントリオールにオフィスを持つ。主要商品はゲームのフィギュアで、中でも「アサシン クリード」シリーズや、『ウィッチャー3 ワイルドハント』、『サイバーパンク2077』といったタイトルのフィギュアを販売。今回の上海WFでも、ライフサイズのゲラルトやジオラマ仕立てになっている『サイバーパンク2077』のフィギュア、さらに『アサシン クリード シャドウズ』の将棋(!)など、幅広いアイテムを出展していた。















『サイバーパンク2077』に関して言えば、なりきり系アイテムを発表するメーカーも登場。Guangdong NF Technology Limitedは小規模のブースながら、『サイバーパンク2077』の武器をそのまま立体化。刀型のアイコニック武器である「エラッタ」と、強力なピストル「スキッピー」を展示・試遊していた。どちらも発光ギミックつき、なおかつスキッピーは引き金を引けば発砲音も出るという仕様で、来場者はバカスカ撃ちまくって遊んでおりました。



中国らしいアイテムといえば、不知火 舞のフィギュアも外すことはできないだろう。1990年代、中国では日本製の基盤が正規・不正規を問わず大量に輸入された。その中でも『餓狼伝説2』や『THE KING OF FIGHTERS』といったSNKのゲームは比較的低スペックの筐体でも稼働したため、中国国内で爆発的な人気を獲得。1980~90年代生まれのアラフォー前後の世代にとっては一際親しみ深いアーケードゲームであり、その中でもセクシーな女性キャラクターであった不知火 舞は、中国のオタクに非常に強烈な印象を残したのである。
会場内にはセクシーかつトレンドを踏まえた美少女フィギュアが大量に展示されていたが、その中に混じって不知火 舞もちゃんと展示されていた。1/6のスタチューなどを製造しているPIJI Studioは、超豪華なベース付きの不知火 舞のスタチューを展示。また、1/6スケールの不知火 舞フィギュアを展示している一般ディーラーもおり、根強い人気を見せた。



とにかく巨大なイベントであり、自分が会場内に展示されていたゲームを題材とした他のフィギュアを見落としていた可能性もあるかもしれない。特にソシャゲや美少女ゲームについてはあまり詳しくないところがあり、その辺りについては詰めきれていないところがある。が、会場を歩き回って感じたのは、中国のホビーユーザーにとって「AAAタイトルのゲームを題材にしたフィギュア」は、海外コンテンツを題材にしたリアル寄りなフィギュアと同ジャンルのアイテムとして認識されているのではないか、という点である。
中国のホビーシーンで一大勢力となっているのが、マーベルやDCコミックスのスーパーヒーロー映画や、『ロード・オブ・ザ・リング』などのファンタジー映画、各種SF映画などを題材にした超リアル寄りのフィギュアである。サイズは1/12から1/6、大きいものだと1/1のライフサイズや人間の身長を超えるものまであるが、全体的に大きめ。そして顔や体つきは俳優の肖像権をクリアするほど緻密で生々しく、近くによっても生きている人間と見分けがつかない……。そんな大型フィギュアが、中国では一大人気ジャンルとして多数のユーザーの支持を集め続けている。

これらのフィギュアは「めちゃくちゃ出来がよくて高額で巨大なオモチャを家に置いておける」という点を自慢したい富裕層のドヤりに使われるアイテムであったりもするのだが、商品化のテイストに関して言えば、海外製AAAタイトルのゲームを題材にしたフィギュア・スタチューは、このジャンルに含まれる形で発展を続けている。ゲームキャラクターのフィギュアに見られる、キャラクターに生き写しのリアルな皮膚の質感や塗装の精度、細かな塗装の仕上げや派手で大きなベースがつく点などは、大型リアル系フィギュアと共通した特徴だ。ライフサイズのゲラルトや、世界観を丸ごと感じられる『サイバーパンク2077』のスタチューなどは、造形の文法的に大型のリアル寄りフィギュアに極めて近いのである。
ハリウッド映画などを題材とした大型フィギュアは、製作時に版権料を払うことで、映画内のCG用に使った俳優の顔のスキャンデータや、衣装のディテールのデータなどを配布されることも多い。フィギュアを造形するチームはそれらのデータをそのまま取り込んだり参照して造形したりして原型を完成させ、それを専門の製造チームが量産することで、俳優生き写しの大型フィギュアが完成するのである。ゲームに関しても、デベロッパーから高精度なCGモデルが提供され、それをそのままフィギュアにしているのは想像に難くない。製造方法という面でも、リアルな実写映画フィギュアとゲームを題材にしたフィギュアは共通しているように思う。
もちろん、一口に「ゲームを題材としたフィギュア」といっても様々なアプローチがあり、全てが上記のような方法論で立体化されているわけではない。が、こと中国のホビーシーンにおいては、海外製AAAタイトルのフィギュアと、海外製実写映画の大型フィギュアはジャンル的に非常に近いところにいるのは事実である。では例えば今後、中国製のリアリスティックな大作ゲームがヒットした場合、これらホビーシーンの地図はどのように塗り変わるのか。『Black Myth: Wukong』のヒットと関連商品の登場で、すでに予兆は見えている。来年の上海WFではどのような景色が見られるのか、今から楽しみだ。























