3Dアバターがより身近な存在に? 『SIGGRAPH 2025』で発表された最新のAI技術たち
画像生成AIや動画生成AIの普及からわかるように、デジタルグラフィックを生成するグラフィックAIは、今や当たり前のものになりつつある。こうしたAIの最新動向を知ることができるイベントとして、CGに関する世界最大級のカンファレンス「SIGGRAPH」がある。
今年の8月10日から14日にかけて開催された『SIGGRAPH 2025』では、グラフィックAIの関連論文が50本以上も発表された。本稿では、こうした論文のなかでも「実用化」を意識しているものを「画像生成」「3Dアバター生成」「3Dオブジェクト/シーン生成」そして「動画生成」の4カテゴリーに分類しつつ、注目すべき10本を紹介する。
SVGコレクションの生成などクリエイターの労力を減らす3つのAIモデル
中国・香港大学とAdobeの共同研究チームは、「SVG(Scalable Vector Graphics:スケーラブル・ベクター・グラフィックス)」の画像コレクションをテキスト入力から生成するAIモデルを発表した(※1)。SVGはJPGやPNGなどで使われるピクセルを用いたラスター形式の描画ではなく、線の長さや図形の形を数学的な計算で描画する技術だ。点の集まりで画像を描画するラスター形式と異なり、拡大縮小しても画質が劣化しないので、グラフィック・デザイナーから支持されている画像形式である。
テキスト入力からSVGを生成するAIモデルは以前からあったのだが、単独の画像のみを生成するにとどまり、一貫したデザインスタイルのSVGコレクションを生成することはできなかった。
今回発表されたAIモデルは、特定のSVG画像を入力してデザインスタイルを学習させたうえで、テキストで「少年(boy)」や「家(house)」と生成する画像の内容を順次入力すると、デザインスタイルを維持したまま新しいSVG画像を出力する。
中国・清華大学と中国大手IT企業・Tencentらの研究チームは、大量の模範画像にもとづいて、線画マンガを高品質にカラー化するモデル「Cobra」を発表した(※2)。このAIは、最大200枚の模範画像からカラー化するにあたっての彩色スタイルを学習することで、従来のカラー化AIの性能を大きく凌駕した。
ユーザーが線画マンガの一部に対して、カラー化する際の色を指定して彩色するインタラクティブなカラー化機能も実装している。この機能により、より柔軟なカラー化が可能となる。
TikTokを運営するByteDanceらの研究チームは、数枚のキャラクター画像を入力したうえで、さらに簡単なストーリーをテキスト入力すると、入力したキャラクターが登場するストーリー画像を生成する「IP-Prompter」を発表した(※3)。
たとえば、アニメ映画『怪盗グルー』シリーズに登場するキャラクターのミニオンズの画像を入力後、「炎を使う魔術師」や「炎の剣を引き抜く」といったテキストを入力すると、ミニオンズがテキストで説明した通りに振る舞う画像が生成される。こうした生成では、入力画像の画風も反映されるので、アニメ『アーケイン』に登場するキャラクター「ジンクス」の画像を入力した場合は、ミニオンズを入力した時とはまったく違う画風の画像が出力される。
以上のAIモデルが実用化されれば、グラフィックデザイナーやマンガ制作者の労力を大きく減らすと同時に、よりクリエイティブな仕事に挑戦することを後押しするかもしれない。
テキスト入力や1枚の画像から3Dアバターを生成
スイス連邦工科大学チューリッヒ校らの研究チームは、テキスト入力からフォトリアルな3Dアバターアニメーションを生成する「AnimPortrait3D」を発表した(※4)。参考動画では、「顎のラインがくっきりとした40歳の紳士。少し白髪交じりの髪は後ろにすっきりと流され、アンダーカットに整えられている。ネイビーのピンストライプのスーツに身を包み、赤いネクタイが彼の色白の肌を引き立てている」というテキスト入力から出力された、40代の紳士の3Dアバターが確認できる。
「AnimPortrait3D」は、テキスト入力による高品質な3Dアバター生成と、入力テキストに合わせて3Dアバターを変形させてアニメーションを生成する2段階の処理によって、従来の3DアバターアニメーションAIの性能を凌駕した。
中国大手IT企業・Alibabaらの研究チームは、1枚の画像からアニメーション可能な3Dアバターを生成する「LAM(Large Avatar Model:大規模アバターモデル)」を発表した(※5)。このAIの画期的なところは、画像から即座に3Dアバターを生成できる生成時間の短さと、スマホでも3Dアバターのアニメーションを表示できる描画処理の軽さにある。
生成された3Dアバターは入力画像を忠実に再現するだけではなく、まったく異なる顔の3Dアバターに置換することもできる。以上のデモ動画では、トランプ大統領の顔画像から古代ギリシア彫刻のミロのビーナスやサッカー選手のメッシの3Dアバターを生成した事例を確認できる。
簡単な入力から生成処理する以上のAIは、3Dアバターを身近な存在にするポテンシャルを秘めているだろう。

























