映像にとって大事な“音”のクオリティを上げるためにーーTASCAMの最新製品を取材してわかった「トレンド」と「丁寧さ」

TASCAM最新製品で知るトレンド

 ネットで動画を見ていると、映像に比べて音のクオリティがおざなりにされていると感じることがある。多くの人に少しでも長く見てもらうには、聞きやすく伝わりやすい音質であることがとても重要だ。

 とはいえ、音声のクオリティを上げるにはどうしていいか分からない、高品質な機材はなんだか高そう、といった不安はないだろうか。

 本稿では、国内音響機器ブランドであるTASCAM(以下、タスカム)の最新機材を通じて、映像/音声コンテンツに欠かせない音のクオリティ向上の最前線を探った。

 タスカムは、日本の音響機器メーカーの老舗であるTEACの業務用音響ブランド。"プロ機器同様、品質や信頼性に妥協をすることなく、多くの人に使用してもらえる録音機器を提供すること"をモットーに、ハイグレードな品質でありながら手に届く価格の製品群が特徴の一つ。筆者も『US-20×20』などのオーディオインターフェースを使用していたユーザーであり、現在もクロックジェネレータの『CG-1000』を活用している。

 今回フォーカスするのは、同社が10万円以下で販売している製品だ。タスカムならではの幅広いラインナップや気になる製品を、筆者自らが触って確かめている。さらに多摩センターにあるティアック本社を訪問。機材トークはもちろん、最近のトレンドなども含めて突っ込んだ取材を行なった。映像音声コンテンツにおける最近の傾向と、それに応えるタスカムの便利機能をたっぷり紹介しているので、何かのヒントになれば幸いだ。

 はじめに取り上げる機器は、ピンマイク付きオーディオレコーダー『DR-10L Pro』。

 コンパクトで軽量(65g電池込み)な本体にラベリアマイク(ピンマイク)をセット。デュアルA/Dコンバーター&32ビットフロート録音により、入力レベルを細かく設定することなく、ささやき声から叫び声まで超低ノイズで高解像度の録音が可能とする。視認性の高い有機ELディスプレイを搭載しているから、本体で設定の変更ができる点も見逃せない。

 スマートフォンからのリモートコントロール(最大5台まで)が可能(※)で、複数人に装着した『DR-10L Pro』を一斉に操作することも簡単。

※ 別売のBluetoothアダプター『AK-BT1』が必要。

 32ビットフロート録音は、編集時に音量を上げ下げしても解像度を維持できるメリットがあるが、デュアルA/Dコンバーターとの併用によって、どんな音量でマイクに入力されても歪まない音が録れるから実用度抜群だ。デジタル上でクリップしないだけでなく、アナログ段でも歪まないという未来感。さすがに「本当に?」と思った筆者は、イベントでティアックの担当者に聞いてみたところ、ドラムのキックなどを至近距離で集音するといった極端な大音量下においては、アナログ領域でも歪むことがあるとの回答を得た。つまり、本マイクの使用用途からして、歪むことはほぼあり得ないと言っていいだろう。ゲイン調整の必要がないのは、とても楽チンだ。

 自宅でも自分に付けて使ってみた。音質はタスカムらしい癖のないバランス。リビングや自宅の防音スタジオ、同収録ブース、ベランダなどで使ってみた。反響の多いリビングは、やや響きの成分が気になるが、スタジオや収録ブースではまったく問題ない。響きが相対的に軽減される単一指向性のマイクもオプションでほしいと感じたが、リベリアマイクは装着中にピンが安定せず方向がずれることも珍しくない。付属品のような無指向性であれば、もしもの事態でも「完全オフマイク」は避けられる。

 運用面で言えば、基本的に装着して回しっぱなしにしておけば、ゲイン調整も不要でちゃんとした音が録れることが大きなメリット。単4電池2本で、11時間(ニッケル水素電池)~24時間程度(リチウム乾電池)録音できるため、電池残量を気にしなくていい。

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