カナル型に迫る音質を実現したQCYのイヤーカフ型イヤホン『QCY Crossky C30S』『QCY Crossky C50』 ボーカルの再現性はピカ一で、軽快な装着感が魅力

近年では、音楽リスニング中に耳を塞がずに周囲の状況を確認できるオープンタイプのワイヤレスイヤホンが人気を集めており、中でもイヤリングのように耳に着けるイヤーカフ型の製品は、40社近いブランドから製品が発売されるなど、大きな活況を呈している。今回お贈りする特集では、ワイヤレスイヤホンの中でも1ジャンルを形成するまでに成長したその“イヤーカフ型”に焦点を当てているが、本稿では、高い実用性と優れた機能・デザインを有するQCYに注目。
ロングセラーを続ける『QCY Crossky C30S』と、この7月に発売されたばかりの新製品『QCY Crossky C50』の2モデルをピックアップ。気になる音質から装着感、使い勝手までじっくりと紹介したい。
オープンタイプでLDACコーデックをサポートし、独自のブリッジ構造で装着感も良好
まずは、昨年10月に登場以後、ロングセラーを続けている『QCY Crossky C30S』から紹介したい。末尾に“S”と付いているのは、現行のブラックモデルと区別するためのようで、収納ケースはシルバー、本体はグレーとシルバー(メタリック)のツートンでまとめられていて、よりオシャレ度がアップしている。ファッションにこだわるユーザーにも大きな訴求ポイントとなりそうだ。
形状は、イヤーカフ型では一般的な球体ユニットをブリッジでつないだC字型タイプとなっているが、よく見ると先端についている球体ユニットは正対しておらず、少しオフセットした形で組み合わされている。実は、これが装着感を左右する大きなポイントで、耳に装着した後に、ユニット自体をしっかりと固定してくれる機能性を発揮するのだ。両方が球体だと、装着後にズレたり、下がってしまうこともあり、すると音の放射口が耳穴からズレてしまうので、音の聴こえが悪くなってしまう……のだが、『QCY Crossky C30S』ではそこがしっかりと担保され、実際に長時間装着して好きな楽曲を聴いてみたが、常に装着位置がキープされ、良好なサウンドを楽しむことできた。同時に、球体がオフセットしていることで、(耳輪が)挟まれているという感触が和らぎ、耳(耳輪)が痛くならない点も報告しておきたい。


次に仕様面について紹介したい。搭載ユニットは10.8mm径のダイナミックドライバーで、デュアルマグネット仕様によって強力な駆動力を発揮してくれ、力強い低域から、繊細な高域、音に包まれるような音場感まで高い次元で再現してくれるものとなる。加えて、音にこだわるワイヤレスイヤホンファンにはうれしい、LDACコーデックのサポートも特筆できるだろう。オープンタイプでLDACって効果あるの? と、訝しがる人もいると思うが、実は後述するように音質に大きく寄与してくれているのだ。
その他では、イヤーカフ型では必須ともいえる音漏れ防止技術、マルチポイント接続対応(2台まで)、片側約5gの軽量設計、Bluetooth5.4サポートによる安定した通信の実現、遅延を抑制する「ゲームモード」、音に包まれる感覚を演出してくれる「空間オーディオ」、4基のマイクによる通話ノイズキャンセリング機能などなど、数々のフィーチャーを備えている。
繊細なサウンドでカナル型に迫る高音質を発揮 空間オーディオで映像コンテンツとの相性もばっちり
いよいよ気になる音質について紹介したい。基本は、LDACコーデックを使用してのレビューとなる点はお伝えしておきたい。さっそくプレーヤー(LDAC対応スマートフォン)と接続していくつか馴染みのある楽曲を再生してみると、LDACコーデックらしい繊細なサウンドが楽しめた。メロディの中にあるさまざまな楽器の音が、粒立ちも細かく再現されている上に、オープン型では比較的弱くなりがちな低音や音の厚みもしっかりと感じられるようになっている。特にボーカルの再現は優秀で、メロディ(伴奏)の中に混濁することなく、音像が目の奥のあたりにスッと立ち上がってくれるし、歌詞の一語一語も素直に耳に入ってくるので、聴いていて楽しい雰囲気になれる。
加えて、低域から中域・高域までのそれぞれの音階がきちんと再現されていて、高級オーディオ的な比喩で書けば、しっかりとした土台(=重心が引き締まっている)の上に、音階が的確に再現されることで、音の中に芯というか軸のようなものがきちんと感じられるようになる、と表現できるだろうか。オープン型でありながら、カナル型に近い音質が楽しめる製品、と書くと言いすぎかもしれないが、近似する実力は備えていると感じた。
「空間オーディオ」も試してみた。専用アプリの「設定」タブの中に「空間オーディオ」の項目があるので、ボタンを右にスライドさせるだけでOKだ。注意点としては、LDACと同時使用できないこと(LDACは自動的にオフになる)。接続コーデックはAAC(もしくはSBC)になるので、その点での音質差は感じてしまうが、音の空間が左右と上方にふっと拡大するのが感じられ、いわゆる音の空間の拡大が聴いてとれた。音楽コンテンツ、映像コンテンツどちらにも効果はあり、より音に包まれる感覚を強化してくれるので、楽しさもアップする。音楽コンテンツにかけても楽しめるが、おススメはやはり動画コンテンツだろうか。最近では、通勤途中(交通機関の中など)にスマホで動画を楽しんでいる人も増えているので、騒がしい車内であっても、好きなコンテンツ(動画)に没入して楽しめるようになるだろう。
動画コンテンツの場合、一般的には、スマホやタブレット、パソコン(ノート・デスクトップ)で楽しむことが多いと思うが、試しに55型の薄型テレビと組み合わせてみた。最近のテレビはイヤホンやヘッドフォンなどのBluetooth機器と直接接続できる製品も増えており、接続の仕方はスマホとほぼ同じ。テレビの設定項目の中からBluetooth接続を選び、ペアリングを実行するだけ。音源はステレオになってしまうが、あらかじめスマホアプリで「空間オーディオ」をオンにしておけば、イヤホン本体にはその設定が残るので、テレビとの接続でも空間オーディオモードで楽しめる、という具合だ。上述したように空間は拡大するものの、セリフのレベルが少し下がるようなので、視聴する場合は効果を確認しながら、各自で機能のオンオフを選択してほしい。ただ、テレビの音がイヤホンで楽しめるのも中々面白い体験で、音が身近に感じられる上に、音量を絞っていてもセリフがしっかりと入ってくる(聴こえる)ので、聴こえに問題を抱えている年配の方の聴こえのサポート機器としても使えそうだ。
なお、スマートフォンとテレビは同時接続可能で、この場合はスマートフォンから直接「ゲームモード(低遅延モード)」を起動するだけでテレビの低遅延モードが実現。この機能はゲームプレイ時の音のラグ(遅れ)を解消する機能だが、映像コンテンツの視聴の際にも効果を発揮してくれ、口の動きと声(セリフ)がピタッと合うようになる。ゲームばかりでなく、動画コンテンツの視聴の多いユーザーはチェックするといいだろう。さらに「LDACとマルチポイント接続の同時利用が可能」というのも特徴で、これを1万円台で達成しているのも大きな魅力だ。























