中国発の大作RPG『風燕伝』が期待できる5つの理由 「半年で累計3000万DL」が証明する完成度とは

2025年7月21日から8月1日まで、PlayStation 5(PS5)およびPC(Steam)向け作品『風燕伝:Where Winds Meet』(風燕伝)のファイナルテストが実施された。
本作は、NetEase GamesとEverstone Studioによって開発されたオープンワールドアクションRPGだ。中国ではすでに正式リリースを迎えており、配信開始から半年間で3,000万ダウンロードを達成するなど、現在進行系で大きな注目を集めている。
リアルサウンドテックでは、以前に行われたクローズドベータテスト(CBT)の際、ゲームの流れやアクション面を中心にプレイレポートをお届けした。今回は視点を変えて、「なぜ本作がこれほど期待されているのか?」をテーマに、ファイナルテスト(PC版)のプレイ状況を踏まえつつ、『風燕伝』に期待が持てる5つの理由を紹介したい。
広大かつ綿密に作り込まれた中国大陸
『風燕伝』最大の特徴は、古代中国、それも五代十国時代を舞台にした「武侠」オープンワールドというジャンルそのものにある。
唐の滅亡~北宋による統一までの“戦乱の世”を背景に、侠客たちが覇を競う舞台設定は、それだけで他のオープンワールド作品とは一線を画す存在感を放っている。

『風燕伝』に登場するNPCは、ストーリーに絡んでくる主要人物から市街地の住民にいたるまで、約1万人以上にのぼる。その中には行動スケジュールを持つNPCも多く、農作業に勤しんだり、街角で酒を嗜んだりと、それぞれが独自の生活を営んでいる者も多い。プレイヤーの選択や行動によって、彼らとの関係性が変化することもあり、単なる世界観の説明役ではない“生きた人間”として描かれているのが印象的だ。

そしてこうした作り込みの深さは、なにもキャラクター関連のみにとどまらない。本作のフィールドは高精細なグラフィックで描かれ、12を超える地域と20以上のダンジョンが現時点で存在している。のどかな田園風景、荘厳な建築が並ぶ都市、人々でにぎわう町酒場など、地域ごとに特色が異なるのも特徴だ。
加えて、フィールド内は時間帯や天候の変化もリアルタイムで再現されている。気の向くままに歩き回るだけでも発見や驚きに満ちており、単なる観光的なフィールド探索を超えた「世界を生きる」感覚をプレイヤーにもたらしてくれるだろう。
腕に自信が無くても華麗に舞える戦闘アクション
前回のプレイレポートでも言及した通り、『風燕伝』の戦闘では、剣・槍・双刀・鞭・扇・弓など多彩な武器を駆使して戦う。多段ジャンプやダッシュ(空中ダッシュ含む)といった基本アクションに加え、それぞれ威力が異なる軽攻撃と重攻撃、武器ごとに設定された武術や奇術と呼ばれるユニークなスキルが合わさり、戦略性と爽快感が両立されている。
ここで特筆したいのは、アクションゲーム初心者も置いてけぼりにしない、アシスト機能の充実ぶりだ。

アクション性に特化したこの手の作品は、爽快感や手触りの良さが“プレイヤーの腕前”に左右されることも少なくない。つまり各種アクションを使いこなせば使いこなすほど、プレイヤーキャラクターの挙動は鮮やかになる一方、操作がおぼつかないとキャラクターが上手く動作せず、思っていたのと違うプレイフィールになることも少なくない。特に、「敵の攻撃が強力な反面、上手く弾き返せば大きなメリットがある」といったシステムを採用している場合、アクションゲームに不慣れな初心者はますます敷居が高く感じることだろう。
しかし、『風燕伝』はそうしたアクションゲーム初心者でも問題なく楽しめるよう、数々のアシスト機能が搭載されている。なかでも代表的なのが、相手の攻撃を受け流す「パリィ」のタイミングを視覚的に表し、操作の入力猶予タイムを大幅に延ばすサポートシステムだ。

このアシスト機能をONにすると、敵が大技を繰り出す瞬間に画面が止まり、安全な状態でボタン(操作キー)入力が可能になる。そして入力に成功した場合、攻撃を弾き返して相手のスタミナを削ることができる。これならば相手からの攻撃にうろたえることなく、自分なりのタイミングでパリィが行えるようになるだろう。アクションゲームが得意でないプレイヤーでも、まるで武侠映画の主人公のように、華麗な大立ち回りを体験できる……というわけだ。
アシスト機能の有無はゲーム中にいつでも切り替え可能。加えて難易度も全部で4種類が実装済みだ。操作補助もオンオフ自由という柔軟な設計は、プレイヤーを選ばない懐の深さにつながっていると言える。
本編に見劣りしない豊富なサイドコンテンツ
オープンワールドゲームというジャンルにおいて、「本編以外の遊びがどれだけ用意されているか」は非常に重要なポイントとなるが、『風燕伝』はこの点においても抜かりがない。
フィールド各地に点在するダンジョン攻略をはじめ、NPCから請け負うサブクエスト、マルチプレイヤー機能を介したPvP(1対1はもちろん10人単位での混戦も可能)、協力型PvEなど、サイドコンテンツは現時点で豊富に用意されている。

なかでもユニークだと感じたのが、怪我や病に苦しむNPCを治療するミニゲーム。なんとローグライク×デッキ構築という要素を取り入れており、『Slay the Spire』的なゲームが好きなプレイヤーに刺さるであろう作りになっていた。ファイナルテストで体験できたのは一部のみだが、今後もアップデート等でサイドコンテンツが増えていくとすれば、ただただ『風燕伝』のボリュームに驚かされるばかりだ。
プレイヤーの想像力を掻き立てるストーリーテリング
「行方不明になった育ての親を探すべく、己の手腕を頼りに広大な中国大陸を駆け巡る」といった導入こそ用意されているものの、『風燕伝』はそのストーリーラインを懇切丁寧に語ろうとはしない。というのも、本作ではプレイヤー自身が情報を集め、世界の謎や登場人物の背景を読み解いていく構成が取られているからだ。この“余白”の多さが、考察好きのプレイヤーにとって大きな魅力となるだろう。

『風燕伝』には、「訪れた場所や出会った人物を記録できる図鑑」が用意されており、自分なりの相関図やメモを作成することができる。そしてこの相関図やメモを自分ひとりで閲覧するだけでなく、オンラインを通じて他プレイヤーと考察を共有できる機能も実装されている。
例えば「自分は登場人物Aが怪しいと思っていたけれど、このプレイヤーは登場人物Bに何らかの関連性を見出している」といった具合に、他者の意見に直に触れることで、ストーリー理解が深まるかもしれない機会が容易に得られる。

ファイナルテスト時点だと利用しているプレイヤーはまだまだ数が少なかったが、中国で賑わっているように、国内でも正式リリースを迎えればコミュニティ内での考察が盛り上がるかもしれない。プレイ体験がコミュニティによってさらに広がっていくこのシステム設計からは、十分なポテンシャルが感じられた。
基本プレイ無料とは思えない完成度
最後にあらためて強調したいのは、『風燕伝』が「基本プレイ無料」であるという事実だ。100時間以上のゲームプレイに耐えうる大ボリューム、綿密に構築された舞台、自由度の高い戦闘アクション、深いストーリーテリング、オンライン連携機能……等々、いくつもの要素をすべて無料で体験できるのは、正直に言って信じがたいレベルである。
唯一の課金要素は、キャラクターの外見を変えるコスメティックアイテムのみに限られており、武器の解放やストーリー進行に課金は一切不要。ソロでもマルチでも、すべてのコンテンツを無料で遊び尽くすことができ、あくまでプレイヤーの技量や探究心に応じてゲームの奥行きが広がっていく。そのフェアな設計思想こそが、本作に長期的なファンを呼び込む鍵になっていると言えるだろう。

以上、『風燕伝:Where Winds Meet』に期待が持てる5つの理由を紹介してきた。五代十国時代を肌で感じられる広大な世界、幅広いプレイヤー層に手を差し伸べるアクション、豊富なサイドコンテンツ、考察を誘う物語、そして無料とは思えないクオリティ――。いずれも、数あるオープンワールド作品の中でも確かな個性として際立っている。
2025年11月15日に正式リリースを控える本作が、日本のゲーマーにとっても“運命の一本”となるか。その行く末にぜひ注目してほしい。























