【特集】スキルアップに欠かせない「ビジネスハック」の基本ツール
あなたはPDFを使いこなせていないかも……? 業務効率を劇的改善する「Adobe Acrobat」の使い方

多くのビジネスシーンで使用される「PDFファイル」。昨今はペーパーレス化も進んでおり、書類をPDF形式でやり取りするケースも増えた。一方で、PDFを単に「閲覧専用で送信するためのドキュメントファイル」と考えている人も多いのではないだろうか。PDFの利便性はそこに留まらず、『Adobe Acrobat』を利用すると活用の幅がぐっと広がる。
本稿では、PDF閲覧に欠かせない無料の『Adobe Acrobat Reader』及び有料版である『Adobe Acrobat Standard/Pro』の導入から使い方、さらなる活用方法まで、まとめてご紹介したい。PDFを使いこなせば、仕事の効率もグッと上がるはずだ。
そもそもPDFファイルとは?
PDFとは「Portable Document Format(ポータブル・ドキュメント・フォーマット)」の略で、アドビが開発したファイル形式だ。
どんなデバイスや環境で閲覧しても、レイアウトやフォントなどの表示形式が崩れず、画面に表示されているまま印刷もできる。さらに容量も圧縮できるため、誰にでも共有しやすい。表示形式の保持と共有のしやすさ。この2点がPDFの大きな特徴だろう。
また編集できない=改ざんできないという認識で機密保持や、いわゆる“言った言わない”などのトラブルを避けるためにも活用されるが、実はPDFは編集もできるファイル形式だ。もちろん、パスワードをかけることで編集を制限できるため、機密保持に役立つという意味で全く誤りではない。とはいえ、このようにPDFについては、意外と知られていない仕様が多い。
PDFの利便性を最大限に引き出し、仕事をより効率的に進めるためにも、そして思わぬ落とし穴に遭遇しないためにも、『Adobe Acrobat』の活用とPDFでできることを理解していこう。
3つのプランから選べる「Adobe Acrobat」製品
「Adobe Acrobat」には、無料版の『Acrobat Reader』、月額1518円〜の『Acrobat Standard』、そして月額1980円〜の 『Acrobat Pro』が存在する。Reader→Standard→Proの順番で使える機能が増える。(プラン詳細はこちらから)
『Acrobat Reader』はPDFの閲覧、印刷、共有、コメント入れといった基本的な機能が備わっている。会社支給のPCなどにもともと導入されているのはこれがほとんどだろう。
『Acrobat Standard』になると、テキストや画像の編集、別の形式への書き出し、電子サインの依頼、さらにパスワードによる保護機能などが追加される。
そして『Acrobat Pro』では、機密情報の墨消し、ファイルの比較、スキャンした文書の編集や検索可能なPDFへの変換などといった機能が利用可能となる。
「Adobe Acrobat」の導入方法
「Adobe Acrobat」はPC、スマートフォン、タブレットなどデバイスにかかわらずアプリをダウンロードして使用できる。ウェブブラウザで利用できるオンラインツール版も存在するので、シーンによって使い分けが可能だ。
PC版の『Acrobat Reader』は入手経路が2通りある。専用ページから『Acrobat Reader』アプリを直接ダウンロードするか、後述する「Adobe Creative Cloud(アドビ クリエイティブ クラウド)」のアプリを経由してダウンロードすることもできる。機能としては変わらないが、「Adobe Creative Cloud」経由で利用する場合はアドビアカウントを取得することとなる。
筆者のオススメは後者の「Adobe Creative Cloud」からダウンロードする方法だ。アドビアカウントは、メールアドレスか、Google、LINE、Apple、Facebook、Microsoft、Kakaoのいずれかのアカウントに紐づけるかたちで取得できる。アドビアカウントを作成すると、「Adobe Acrobat」シリーズ以外にも無料/有料問わず様々なツールが利用できるようになる。
アドビのアカウントは先述したアドビ製品の統合プラットフォーム「Adobe Creative Cloud」で紐づけられ、ここから様々なアドビ製品へとアクセスできたり、利用ファイルの管理を行える。ブラウザでも利用できるが、Creative Cloudアプリをハブとして各種ツールへのアクセスも可能なため、日常的にアドビのツールを利用するならば、インストールしておくのがオススメだ。
無料で使える『Acrobat Reader』
まずは『Adobe Acrobat Reader』でも使用できる、基本的な機能から説明していこう。
『Acrobat Reader』を利用すると、PC/スマホ/タブレットのローカルフォルダとAdobeクラウドストレージに保存したPDFファイルを閲覧、印刷などの基本操作ができる。またGoogle DriveやDropbox、OneDriveといった他社サービスのクラウドストレージと連携することも可能で、いつでもどこでもファイルの呼び出しができる。フォルダリングやコピーなど、基本的なファイル管理も行える。
Acrobat上で開いたPDF上にコメントを入れることもできるので、社内や取引先と内容について確認したいときに活用しよう。
コメントを入れたPDFを誰かに共有する際は、そのままダウンロードしてもよいが、右上の共有ボタン(スマホ版の場合右上のメニューから共有を選択)を使うと便利だ。Outlook、Gmail、Microsoft Teamsなどを経由したファイル共有もできる。または〈リンクをコピー〉から取得できるURLを使えば、ブラウザ上で文書がリアルタイムで表示されるので、複数人で同時にコメントを確認したり、返信したりすることも可能だ。
編集に必要な基本機能が揃った『Acrobat Standard』
さて、次は有料プランとなる『Acrobat Standard』で使用できる機能を見ていこう。
PDFファイル同士の結合や並び替え、分割など、PDFの編集は「Standard」から利用可能となる。例えば提案資料の中に参考情報として別のPDFファイルを挿入したり、複数のクライアントに向けた確認資料を一つのファイルにまとめたりと、使い方は様々だろう。
次に編集機能だ。テキスト、画像、図形といった要素を編集可能で、テキストのフォント指定なども行える。


WordやPower PointのファイルをPDFとして書き出す機能は広く一般的に使用されているが、PDFファイルをWord、Power Point、Excel、画像形式など、よく利用される多くの形式で書き出すことも可能となる。たとえばこちら(左)のコメント入りのPDFをドキュメント形式として書き出すと、コメントが入った状態のWordファイル(右)となる。レイアウトのズレも発生しないので安心だ。

さらに、PDFをPower Pointのpptx形式で書き出すと、この通り画像や図形がPower Pointのフォーマットに則った形で書き出される。
冒頭で説明した保護機能も、Standardプランから利用できるものだ。
これを利用すると、〈PDFを保護〉から該当するPDFファイルに対して各種制限をかけることができる。セキュリティ方法はパスワードの設定が最も簡易的だ。閲覧自体を制限できるだけでなく、内容の編集、印刷、内容コピーなど、制限する項目を細かく設定できるので、意図しないPDFの編集や改ざんを防ぐことができる。

ただしパスワードは流出可能性もあるため、社外秘の機密文書など厳重に管理したい書類を扱う際は〈証明書による暗号化〉を利用したい。こちらはデジタルIDの設定や、公開鍵のやり取りなど、デバイスと連携した細かな設定が必要となる。その分パスワードと異なり、意図しない流出がより発生しづらい高度なセキュリティとなっているため、用途に応じて使い分けよう。

また別アプリの『Adobe Scan』と組み合わせることで、複合機やスキャナーがない環境でも、スマートフォンなどを使った書類のスキャンとPDFの管理が可能となる。スキャンしたデータはAdobeクラウドストレージ上に保存できるので、PCなど別デバイスの『Adobe Acrobat』からいつでも、どこでも閲覧、管理も可能だ。
ちなみに「Standard」「Pro」のいずれかのプランに加入していると、『Adobe Scan』の有料プラン「Adobe Scan Premium」の機能が開放され、複数のスキャンデータを1つのデータにまとめたり、Microsoft Word、Excel、PowerPointの形式として書き出しも可能となる。
専門性の高い機能が充実する『Acrobat Pro』
最後に、『Acrobat Pro』で利用できる機能についても解説していこう。
まず〈PDFを墨消し〉機能だ。こちらはテキスト・画像を問わず、機密情報や個人情報を“完全に”削除する際に使用する。“完全に”とはどういうことか?

PDFに含まれた機密情報を伏せる必要がある場合、どのように処理するのが正しいだろうか。例えば上から図形を貼り付けて隠したり、編集機能で内容を書き換えたりすれば、見かけ上は内容を隠すこともできる。しかし実は“完全に”隠せているわけではない。文字列検索や編集履歴を遡ることで、いとも簡単に内容を把握できてしまう。
〈PDFを墨消し〉は、メタデータ(内容について説明する隠れたデータ)などの非表示情報を削除することもできる。機密情報や個人情報を扱う場合は、ぜひ活用したい機能だろう。
〈ファイルを比較〉もPDFの管理に一役買う機能だ。
この機能を使うと、2つのPDFを並べて、どの部分がどのように変更されたのかが一目で確認できる。契約書や規約の改定箇所、雑誌や書籍のゲラチェック、入稿データの最終チェック、マニュアルの更新確認など、利用シーンは多岐にわたる。1ページだけならともかく、100ページ超のPDFなどを扱う際に読み合わせの必要もなくなる。さらに比較した状態を「比較レポート」として保存できるため、「どこが変更になったのか」といった説明の手間を省くこともできる。
〈ガイド付きアクションを使用〉の項目では、ここまで説明した操作を自動化及びフォーマット化できる。
〈アクション〉は一連の操作をレシピ化して一括実行する自動化機能だ。例えば「コメントを削除→OCR→暗号化→ファイルサイズを縮小→保存」といったルーチンをドラッグだけで登録し、複数のPDFに一括で適用できる。「カスタムコマンド」は単発の作業をワンクリック化する簡易マクロ機能だ。日々大量のPDFファイルを扱う業務においては間違いなく利用すべき機能だろう。
AIアシスタント機能も登場
「Adobe Acrobat」にはAIアシスタント機能も備わっている。「Acrobat AIアシスタント」は『Acrobat Standard』や『Acrobat Pro』プランとは別で、無料版のユーザーであっても月額680円のサブスクリプションに登録することで利用可能となる。ユーザーの文書を学習せず、ハルシネーション(誤情報)が生成される心配がないので、ビジネス用途にも安心して利用できるのが特長だ。
〈生成要約〉は、使用すると内容を読み取り、適切な形で要約してくれる。例えば受け取った契約書のチェックするべき箇所を、項目ごとに内容をわかりやすく提示してくれるなど、特定のシーンに対してしっかりチューニングが施されている。
また〈AIアシスタント〉では、PDFの内容についてチャット形式で質問が可能となる。質問のサジェストが出てくるのも使いやすい。重要な書類においては、人間の目視にくわえてAIによるチェックを挟むことで、重大な確認漏れを防ぐことができるだろう。唯一、パスワードなどで〈保護〉されたPDFにはAI機能を利用できない点は注意したい。
ワークフローを劇的に改善するツール
どんな職種であれ、PDFはなんらかの形で接することのある形式だ。使う頻度が高ければ高いほど、『Adobe Acrobat』はあなたや、あなたのチームにとって有用なツールとなるだろう。またここまでで紹介した機能はあくまで一部に過ぎない。より特定のシーンに特化した高度な機能も備えている。
『Adobe Acrobat』は特定の課題だけでなく、一連のワークフローを改善するインフラツールのような存在だ。チームの効率化のためにもぜひ導入を検討してみてはいかがだろうか。
■Adobe Acrobatについて
https://www.adobe.com/jp/acrobat.html
■Acrobat AIアシスタントについて
https://www.adobe.com/jp/acrobat/generative-ai-pdf.html






























