『国宝』『キングダム』手がけるVFXカンパニー「Spade&Co.」に聞く、“属人化”しないクリエイティブな組織づくり

業界未経験の英語教師が、海外スタジオとのやりとりで活躍
ーーSpade&Co.さんは現在、何名体制ですか?
塙:今年4月に新卒で4名が入社して、ちょうど60名になりました。設立当初は、代表の小坂、白石(哲也氏、VFXディレクター)、木川(裕太氏、CGスーパーバイザー)の3人だったので、11年で20倍にまで成長できたことになります。
ーー20倍! そして現在は、毎年新卒採用も行われているんですね。
塙:本当にありがたいです。いろいろと幸運が重なったこともあると思いますが、少しずつ案件が増えていき、さらにより大きな案件を担当させていただく機会が増えていったことで、Spade&Co.の知名度も上がって、応募してくれる人たちが増えていく、という、いい流れが生まれている気がします。
ーー松井さんもそのひとりということですね。ところで、デジタルアーティストやコンポジターなどの職種だと、3DCGや映像を専門に学ばれてきた方や即戦力の中途採用が中心だと思うのですが、塙さんや松井さんのようなプロデューサーさん、PMさんはどのように採用していますか?
塙:大きくは2つのパターンがあります。ひとつ目は、専門学校や美大でCGや映像を自分でも作ってきた人で卒業制作などのグループ制作を通じて制作職に興味をもった人。2つ目は、文系など一般大学の人です。前者がほとんどですが、松井も私もCG・VFXは未経験で入社したので、人と話すのが好きとか、相応にコミュニケーション能力があれば、意欲さえあればわりと活躍できると思います。
松井:CGプロダクションって、デスクワークが中心のイメージでしたが実写作品の場合、美術打ち合わせや撮影現場への立ち会い、ポストプロダクションとのやり取りなど、他部署のさまざまな方たちとのコミュニケーションが多くあることが意外でした。個人的には、それが楽しく働けるポイントでもあります。
塙:昨年、新卒で私のチームに入ったスタッフがいるんですが、その方は私立文系の大学で、映像やCGの専攻ではなく、絵画など西洋美術を学んでいました。ただ、映画を観るのが好きだったそうで就活でたまたまSpade&Co.のことを知り、応募してくれました。
ーーたしかに仕事って、コミュニケーションが一番大事ですよね。流暢に話す必要はなくて、相手の意図を正しく汲み取る能力というか。異業種からの中途採用もありますか?
塙:はい。私のチームには、元英語教師というキャリアのスタッフもいます。ちょうど私たちが海外のVFXスタジオで協力先を探しているところだったので、英語コミュニケーションができることを条件にしつつ、未経験OKでプロダクションマネージャーの募集を一般的な求人検索サイトに出したんです。そして実際に応募してくれたのがその人でした。
ーーあえて一般の求人サイトを利用したからこその出会いだと思います。海外のVFXカンパニーとの交渉窓口となると、ついそうした経験をもっている人を探しがちですが、専門知識は入社してから、身に付けられますもんね。
塙:そうですね。本人も映像制作に興味をもっていたこともポイントになったと思いますが、採用の選考を進めるなかですごくポテンシャルというか魅力を感じて「この人は未経験だけど、なんかいける気がする」と思い、採用しました。実際に、バリバリ活躍してくれていますよ。お客さんにその話をすると「ええ!?」と驚かれることも多くて、いいフックになっています(笑)。
ーー昨年の(第96回)アカデミー賞で『ゴジラ-1.0』が視覚効果賞を獲りましたし、これからSpade&Co.さんにも海外から案件の相談が舞い込んだときにも活躍されそうです。
塙:実は少し前に韓国のスタジオから問い合わせをいただきました。そのときはタイミングが合わず流れてしまいましたが、日本の作品でも監督が海外の方というケースはあるので、今後も活躍してくれると思います。CGや映像未経験でも、活躍できるのがうちの会社の面白いところだと思うので、興味をもった人はぜひ連絡してください。





















