セルフレジ、スマホ注文……本当に便利になっている? 専門家が指摘する導入側の事情

セルフレジの今後
――それでは今後セルフレジはどう定着していくと思いますか?
三上:現在のセルフレジは「スタッフと顔を合わせなければいけない」という煩わしさを回避できる以外に目立ったメリットがありません。メリットの少ないことを利用客側に強いるシステムには首を傾げたくなります。
――客側がもっとメリットを感じられるようにすれば良いと。
三上:そうです。セルフレジを使用することで何かしらのポイントが付与されたりなど、明確なメリットがあれば「機械は苦手」という人も進んで使い方を覚えるはずです。そうなれば企業と利用客、どちらにもメリットがある。本来はこうやって導入を進めるべきではなかったのではないでしょうか。
――それならセルフレジのイメージも変わるかもしれませんね。
三上:現在セルフレジにネガティブなイメージがありますが、メリットの少なさだけではなく使い勝手の悪さもその要因として挙げられます。セルフレジが最初にレジ袋を購入しなければいけパターンが多く、後々「やっぱりレジ袋が必要だな」と思った時にはいちいちスタッフを呼ばなければいけません。
――セルフレジあるあるですね……。
三上:また、バーコードを通したのかどうかの重量チェックをする商品を置く台みたいなのがありますが、袋に詰めた商品が崩れ、少しでも刺激が加わるとエラーが発生することもよくあります。その際にはやはりスタッフにいちいち説明しなければいけない。いろいろ不便なので、その辺りも改善していく必要があります。
スマホ注文は企業のメリットばかり
――最近増えている飲食店のスマホ注文についてはどう見ていますか?
三上:全体的にセルフレジと同じことが言えます。「スマホの電池がもったいない」「スマホを持っていない人は見捨てるのか?」といった声は、導入する前から想定されていました。ただ、人件費削減に意識を取られ過ぎたため、そこまで気が回っていなかった印象です。
――ほかにも、セルフレジの共通点としてどういったことが挙げられますか?
三上:ユーザビリティの低さです。メニュー表をなくしてスマホの注文画面でしかメニューを確認できなくなったケースは珍しくありません。また、スマホの画面は小さく、メニューの写真も必然的に小さくなります。どんなメニューなのかもイマイチわかりません。見やすい紙のメニューは絶対置くべきだと思います。
――誰かと一緒に行った時は同じメニュー表を見て、ああだこうだ言いたくもなりますからね。
三上:また、LINEで友達追加しないと注文できないパターンも多いです。友達追加したとしても定期的にキャンペーンが届くだけで、明らかに企業側のメリットばかりが前面に出ていて、スマホ注文も利用客側のメリットが蔑ろにされています。何かしらの割引や、限定メニューとかあれば良いのですが。
IT化で必要なこと
――スマホ注文のメリットも検討してほしいです。
三上:そもそも、スマホ注文が導入側のメリットになっているのかは疑問符が付きます。印象論ではありますが、スマホ注文が導入されたからといって、ホールスタッフの数が減っているのでしょうか。スマホ注文を導入した場合、その運営会社に利用料金を導入側は払う必要があります。仮に1人従業員を減らすことができたとしても、結果的には運営会社に払うお金のほうが上回っていないか気になるところです。
――たしかに、利用料金も馬鹿にならなさそうです。
三上:キャッシュレス決済の場合、支払いごとに3%が手数料として運営会社に支払うケースがあります。ただ、3%はとても大きい。とくに小売業界や飲食業界は薄利多売の業界ではなおさらです。スマホ注文も同じように、導入によるコストは決して小さくなく、飲食業界の人件費削減に寄与できていないかもしれません。むしろ経営を圧迫している可能性も想定されます。
――とはいえ、人手不足のためにスマホ注文も定着していきそうですか?
三上:そうですね。ただ、セルフレジの場合とは異なり、コストがかかりすぎるために止める飲食店も出てくると思います。
――最後にセルフレジやスマホ注文など、ITを導入するうえでの注意点を教えてください。
三上:利用客離れにつながるリスクがあるため、人件費削減ばかりを気にしてIT化を進めることは得策ではありません。人材に積極的にお金をかけるなどもそうですが、利用客だけではなく働く人のことも考えたうえで、IT化を進める必要があります。



















