Indie Game Stories:第1回
祖父母と古いアルバムをめくったあの体験をゲームに ナラティブパズル『インスタントメモリー』開発スタジオインタビュー

『インスタントメモリー』は、写真を通じて家族の物語をつなぐナラティブパズルアドベンチャーだ。スペインのインディゲームスタジオEndflameが開発を手掛け、日本向けパブリッシングはゲームマーケティング会社のNextingが担当する形で、2025年内のリリースを予定している。
すでにSteamにてデモ版が配信中の本作について、今回は開発会社のEndflame代表・ラウラ・リポル氏にインタビューする機会を得たので、そちらの模様をお届けしよう。

着想のきっかけや、開発中のエピソード、Endflameを取り巻くスペインのインディーゲーム業界の状況といった話題から、『インスタントメモリー』が描こうとする“つながり”の輪郭がありありと浮かび上がってきた。(編集部)
――はじめに、スタジオのご紹介と、チーム構成について教えてください。
ラウラ・リポル(以下、ラウラ):私たちEndflameは、2019年に設立されたスペインのゲーム開発スタジオで、メンバー4名で活動しています。それぞれ7年以上のゲーム業界経験を持つ開発者で構成されています。
メンバーは、プログラミングとマーケティングを担当するギレム・トラヴィラ、コンセプトアートとイラストを手掛けるベアトリス・F・バルベルデ、3Dアートを専門とするイバン・ペレス、そして私、CEO兼デザイナーのラウラ・リポルです。
――Endflameとして、これまでに手がけた作品のご紹介をお願いします。
ラウラ:最初のプロジェクトは、創業メンバー3人でブレインストーミングを行い、お互いの得意分野を最大限活かせるゲームを目指して企画した『Ikai』です。日本の戦国時代を舞台にしたホラーゲームで、全プラットフォームに加え、パッケージ版も発売しました。日本文化への敬愛を込めた、私たちのデビュー作でした。
現在は第2作『インスタントメモリー』の開発を進めています。前作とは打って変わり、家族のアルバム作りをテーマにしたwholesome(心温まる)系のゲームです。インディーゲーム業界が厳しい局面にある今だからこそ、前向きで温かい作品を通じて、プレイヤーとポジティブな気持ちを分かち合いたいと考えています。
【編集部注】
『インスタントメモリー』は、Nintendo Switch、Steam、Epic Games Storeにて2025年6月8日発売予定です。

――現在開発中の『インスタントメモリー』について、ジャンルと概要を教えてください。
ラウラ:『インスタントメモリー』は、写真を時系列に並べて家族の物語を紐解いていく、ナラティブパズルゲームです。
プレイヤーは複数のアルバムを作成しながら、家族の大切な思い出を1枚1枚、正しい順番で並べていきます。アルバム完成後は、スクラップブック風のツールを使って自由にデコレーションし、個性的なアルバムに仕上げることができます。
――本作のアイデアはどのようにして生まれたのでしょうか。着想のきっかけとなった出来事などがあれば教えてください。
ラウラ:このアイデアは、私自身の家族との思い出から生まれました。子どものころ、祖父母と一緒に古いアルバムをめくりながら、家族の話を聞くのが大好きでした。写真1枚1枚が、物語を紡ぐ窓のような存在だったのです。この体験を、より多くの人と共有したいと思い、この作品を企画しました。
――開発初期には、まずどのようなことに取り組みましたか。
ラウラ:最初に取り組んだのは、ナラティブパズルとしての核となるメカニクスが成立するかどうかの検証でした。最小限のプロトタイプを作成し、イラストで物語を表現し、その画像をシャッフルして、ストーリーとして成立するかを確認しました。プログラムも不要で、非常にスピーディーな検証ができました。
また、現実のアルバムに近い感覚を目指し、インターフェイスやメニューも家庭にあるような身近なモチーフでデザインしています。家族など、ゲームになじみのない人にも試してもらい、直感的に楽しんでもらえるか検証を重ねました。
――開発に際して苦労したエピソードや、使用ツールやゲームエンジンなど制作フローについても可能な範囲で教えてください。
ラウラ:開発で一番苦労したのは、写真のビジュアル表現です。物語性と自然さ、視認性のバランスが難しく、何度も調整しました。
本作ではUnreal Engineを使用しており、写真制作専用のプロジェクトと、ゲーム本体のプロジェクトを分けて進行しています。これにより、写真制作とゲームの実装を効率的に進めることができています。

――日本展開にあたって意識していることや、楽しみにしている点があれば教えてください。
ラウラ:日本ではNintendo Switchユーザーの多さを考慮し、まずSwitch版のリリースを最優先にしています。前作『Ikai』が日本で温かく迎えられたことへの感謝もあり、今回はNextingさんと協力し、より日本のみなさんに親しんでいただける作品に仕上げたいと考えています。
日本のインディーゲームファンは、感受性豊かで、繊細かつ丁寧な作品を深く評価してくださる印象があります。そうした方々に、『インスタントメモリー』を通じて、日常から少し離れて、優しく懐かしい時間を感じてもらえたらうれしいです。
――ゲームクリエイターとして影響を受けたゲーム作品と、ゲーム開発のなかで大事にしている考えかたについて教えてください。
ラウラ:私の原点は『ポケットモンスター ファイアレッド』でした。新しいポケモンを発見するよろこび、そして友だちとゲームを通じてつながれた経験が、私のなかでかけがえのないものでした。
クリエイターとして大切にしているのは、すべての人、文化、考え方への敬意です。プレイヤーの共感や多様性を大切にし、感性を刺激する作品づくりを心掛けています。

――Endflameが拠点を置くスペインのインディーゲーム業界は、どのような状況にあるのでしょうか。
ラウラ:スペインのインディー業界も、世界的な苦境の影響を受けていますが、開発者コミュニティはとても温かく、支え合う文化があります。仲間やプレイヤーからの応援は、私たちの大きな励みになっています。
――今後、挑戦してみたいジャンルやテーマがあれば教えてください。
ラウラ:今後もさまざまなテーマを探求していきたいですが、個人的には「かわいさ」と「不穏さ」を掛け合わせたような作品にも惹かれています。ただ、まだ次回作は決まっていません。何より、人と人がつながれるようなストーリーを、これからも届けていきたいです。
――最後に、プレイヤーや読者に向けてメッセージをお願いします。
ラウラ:最後まで読んでくださったみなさん、本当にありがとうございます。みなさんの応援が、私たちの何よりの励みです。『インスタントメモリー』を通じて、大切な思い出を思い返すきっかけになれば、これ以上うれしいことはありません。






















