少女の疾走は止まらない お手軽&激ムズ超速ランニングゲーム『Haste』で走り出せ

ハイペースランニングゲーム『Haste』レビュー

 『Haste』(Steam)の疾走感は格別だ。どこまでも駆けていける快さに、いつかぶつかりそうな心配が入り交じる疾走感だ。この少女は走れると信じているから走れるのであり、飛べると信じたなら飛べるのである。そんなフィーリングをシンプル操作で実現したのがすばらしい。

HASTE Gameplay Trailer: THE GAME IS OUT!

 本作はハイペース・ランニングゲームである。主人公のゾーイちゃんはキュートな郵便配達の女の子だ。デコボコ道の先にあるゴールを目指してノンストップで走る。そして、坂を駆けあがると勢いにまかせて大ジャンプする。山を跳び谷を越え、パーフェクトな着地を決めて、エンディングまで加速しよう。

 タイトルのとおり、ゲームテンポがとにかく速い。ゲーム開始時の速度はゲーム中表記で秒速100メートルだ。あまりの速さに面食らうかもしれないが、ビジュアルとサウンドですぐに気持ちよく飛べるだろう。画面はアニメ調のモデルと配色で、速度演出のモーションブラーがかかっていても視認しやすい。BGMはアップテンポのエレクトロビートやドラムンベースで心がおどる。主人公のゾーイちゃんがジャンプのたびに歓声をあげてくれる、というリアクションもノレるポイントだ。

HASTE: Animated Trailer

 アニメトレーラーでキャラクターが好みにマッチしたなら『Haste』をチェックしてほしい。カワイイ女の子が自慢の健脚で崩壊する世界から逃げるストーリー。強烈な疾走感と高い中毒性を持つプレイ感。これで興味を持ったならデモ版を試されたし。走り出すのは簡単だが、走りきるのは難しい。でも、もう1回走りたくなる。

時速360kmを下回ると死ぬ地獄の障害物レース

 『Haste』は難しいゲームだが、コツはつかみやすいのでアクションゲーム初心者にもオススメできる。ゲーム内容はノンストップで前進しゴールに向かう障害物レースだ。ルールを要約すれば迫る障害物を避け続けるゲームである。その障害物をジャンプで悠々と跳び越えてしまうのが気持ちいい。

 ジャンプと速度の仕組みは以下のとおりである。横から見ると『エキサイトバイク』や『トライアルズ』の仕組みに近い。坂を駆けあがると、その勢いのままジャンプする。

 ジャンプのあとは、下り坂に着地すると速度を保ったままランニングを再開する。下り坂の着地を狙うときは急降下ボタンが役に立つ。ボタンを押しているあいだはスカイダイビングのように降下するので、着地点めがけて突っ込もう。

 主人公に対してなだらかな場所に着地すればパーフェクト着地となり、スキルゲージが増えてスキルを使った加速ができる。あらゆるジャンプでパーフェクト着地を決めたなら、スキルでガンガン加速していける。

 たびたび速度について述べているが、それは世界の崩壊から逃げるためだ。ランニング開始時の秒速100メートルを下回ると崩壊に追いつかれてミスになる。ジャンプのたびに着地を失敗すれば、速度を失い崩壊に追いつかれてしまう。速く走らなければゴールまでたどり着けない。

 つまり、パーフェクト着地を狙い続けるゲームなのだ。実のところ、走っているよりも飛んでいる時間のほうが長い。ジャンプ中は障害物は飛び越せるので、まずは落ち着こう。そして着地する場所を定めたらパーフェクト判定を狙って集中しよう。

 ジャンプの軌道から「いまは気を抜ける」「さあ気を張ろう」と気持ちの切り替えを判断できるのが面白い。プレイ意識の緊張と緩和が明快で、ここがゲームのコツだと気付けるつくりだ。着地テクニックに気付きパーフェクトを連発できるようになるともっと速く走れるようになる。そうなると、もうスピードのヤミツキだ。

ローグライトだ、ボスバトルだ、うまくなるまでリトライだ

 前章でプレイのコツをつかめる仕組み、そしてもっと速く走りたくなる魅力を述べた。実際に「よーし、もう1プレイしよう」となるのは、プレイヤーの腕前にあわせたゲーム難度の調整である。本作における調整の仕組みはステージクリア型のローグライトだ。

 ゲーム目的は全エリアの完走である。デコボコ道レースのスタートからゴールまでを1ステージとし、そのステージが連なったエリアの最奥を目指す。途中でライフをすべて失うとエリアの最初からやり直しとなる。ルート選択でショップ・イベント・ライフ回復に立ち寄りつつ、難しくなっていくステージを踏破する流れだ。

 ステージはランダム生成でプレイのたびに中身が変わる。レーザーネットや建築物が立ちふさがる地区。サボテン・氷柱・樹木が密集する地区。崖だらけの地区。そうした地区をランダムに並べたつくりだ。何度もプレイすれば地区を見慣れて障害物の避け方が身につく。エリア完走に失敗しても、主人公強化やスキル購入に用いるアンロックポイントを得るのでリトライを無下に扱わない。

 以上のローグライト様式で、プレイヤーの熟達をうながしつつゲームが難度を調節する(アンロック強化でクリアしやすくなる)。ボスバトルはその調整弁だ。広大なフィールドにいる大きな機械を探し、体当たりしてダメージを与える、というバトルで初見殺しの攻撃パターンが多い。ライフを失わずに道中を突破できたならボス攻略しやすくなる。

 プレイヤーとゲーム難度がせめぎあうプレッシャーは、ボスバトル勝利というカタルシスに昇華する。最初のボスバトルに勝利すれば、本作のゲーム難度が心地よく感じるだろう。全エリア制覇のあとにはお待ちかねのエンドレスモードがあり、心ゆくまで中毒性が高い疾走感にひたれると約束しよう。

宇宙の終わりを越えてネバーエンドランニング

 『Haste』はスピーディかつスキルフルなアクションゲームをお手軽に楽しめる良作だ。直感的なルールにシンプルな操作系で、けれん味たっぷりのビジュアル&サウンドにひたれる。ゲームのコツに慣れる過程を堅実なローグライト様式で支えたのも好感である。

 本題のゲーム難度についてだが、ゲーム中盤からグッっと難度があがり、終盤ではドコに着地すればいいかわからないほど地面の起伏が激しくなる。不快を超えてつらいと感じたときは難度設定を下げることを強く推奨する。というのも本作は発売1週間で4回も難度調整アップデートが入ったのだ。メーカーも「難しくしすぎた」と高難度路線を撤回している。その後も調整は続き、4月下旬時点ではゲーマー向け程度の難度になった。それでも難しいので安心して難度設定を変更されたし。

 最後にストーリーについて。キャッチーなキャラクターから朗らかな話を思わせるが、パラレルワールドと宇宙の終焉という難しい話が始まる。道中にムービーシーンはなく、会話テキストのみで、ゲームのコツよりも理解しづらく感じた。ビジュアルやゲームプレイの品質と比べて丁寧さが欠けた印象だ。

 ともあれ「速く走って気持ちいい」は最後までブレない。速く走れるようになればエンディングに到着するのは間違いない。デモ版を試して疾走感が気に入ったなら買ってしまってOKだ。このゲーム、走り出したらやめられない。

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