フロム・ソフトウェア×任天堂がタッグ 『The Duskbloods』発表で思い返すカードアクションRPG『RUNE』の記憶

フロム×任天堂タッグ『RUNE』の記憶

 任天堂の次世代ゲーム機「Nintendo Switch 2」の詳細が明かされた「Nintendo Direct: Nintendo Switch 2」では、「アーマード・コア」シリーズや「ソウル」シリーズなどで知られるフロム・ソフトウェアの完全新作が発表された。

The Duskbloods デビュートレーラー【Nintendo Direct: Nintendo Switch 2 - 2025.4.2 】

 新作の名は『The Duskbloods』(ザ・ダスクブラッド)。特別な血の力によって人間を超える力を得た「黄昏の血族」になって、「始まりの血(ファーストブラッド)」を巡る壮絶な戦いに身を投じる、2026年発売予定のアクションゲームだ。

 後に公表されたフロム・ソフトウェアの国内向けプレスリリース(※)によれば、本作は最大8人のプレイヤー同士の戦い、プレイヤーと敵との戦いが展開されるPvPvEベースのマルチプレイを特徴にしているという。

※参考リンク:Nintendo Switch 2『The Duskbloods』2026年発売決定https://www.fromsoftware.jp/jp/pressrelease_detail.html

 そして本作は、フロム・ソフトウェアと任天堂との共同販売になることも国内向けプレスリリースに記されている。作品の権利についてはフロム・ソフトウェアが所有し、任天堂は販売専門の担当となるようだ。

 このフロム・ソフトウェアと任天堂のタッグには、おそらく一部のプレイヤーなら「懐かしい!」と思ったかもしれない。実はフロム・ソフトウェアと任天堂がタッグを組むのは、今回の『The Duskbloods』が初めてではない。

 20数年前のニンテンドーゲームキューブの時代、フロム・ソフトウェアは任天堂とタッグを組んだことがあったのだ。今回の『The Duskbloods』は、まさにそれ以来ということで、当時を知るプレイヤーならご無沙汰もご無沙汰なのである。

 そのタッグを組んだ作品こそが、『RUNE(ルーン)』というニンテンドーゲームキューブ向けのアクションRPGである。

 正確にはその続編『RUNEII ~コルテンの鍵の秘密~』が、任天堂との共同販売タイトルなのだが、本記事は最初の1作目を軸にその内容と特色を振り返っていく。

「RPG史上、最弱の主人公」の強烈なキャッチコピーと共に参上した完全新作のカードアクションRPG

 『RUNE』は2002年4月25日、フロム・ソフトウェアよりニンテンドーゲームキューブ向けに発売されたタイトルだ。同社にとってはニンテンドーゲームキューブ初参入となるタイトルで、「RPG史上、最弱の主人公」なるセンセーショナルなキャッチコピーがテレビCM向けに掲げられた。

 実際に本作の主人公「カティア」は、フィールドマップ上を移動することしかできない。敵への攻撃や、後の「ソウル」シリーズでたとえるところの防御とか、受け流し(パリィ)からのカウンターみたいなアクションは用意されていないのである。

 代わりに「カード」を使い、それぞれ固有の効果をもって敵への攻撃などを実施していく形となる。

 改めて本作の正式なジャンル名を紹介すると「カードアクションRPG」。30枚のカードで構築された「デッキ」を装備し、フィールドマップを進んで、ランダム発生する魔物たちとのリアルタイムバトルを繰り広げていくのが基本的な内容となる。

 いわゆるカードゲーム(カードバトルゲーム)ではない。プレイヤーが相手にするのは「スケルトン」「ゴブリン」「オーク」といった魔物たちで、いずれも直接攻撃を仕掛けてくる。カードを使って戦うのはプレイヤーことカティアのみ(……だが?)。ABXYボタンにランダムでセットされるカードを使って、攻撃などを繰り出していくのだ。

「武器型」は直接攻撃(例:斬撃を繰り出す)、「召喚型」は攻撃役の魔物召喚、「戦闘支援型」は回復を始めとする補助効果となっている

 カードには「武器型」「召喚型」「戦闘支援型」という効果の異なる3種が存在。また、カードを使うに当たっては「魔法石」を消費する。「魔法石」とは『マジック・ザ・ギャザリング』で言うところの「マナ」に当たるもの。主に敵を攻撃したり、倒したりすると落とし、補充することができる。

 魔法石の最大値(初期値)は10で、0になればカードを使えなく……ならない。代わりにカティアの体力(HP)を削って使える。仕組みが仕組みゆえ、使いすぎれば逆にピンチに陥ってしまうが。積極的な活用はあまり推奨されない最終手段である。

 ほかにカードは戦闘で使うたびに「経験値」が蓄積されていき、一定値に達すると上位カードへの「変化」と同じカードの「複製(コピー)」が可能になる。

 さらにカードの使用とは別に「キャプチャースロー」なる技もあり、これでトドメを刺せば、ターゲットになった魔物をカードに封印することもできる。ただ、キャプチャースローの威力は貧弱なため、ここぞという時の使用が推奨される感じだ。

 ザックリとした紹介だが、以上が『RUNE』の大まかな内容である。システムがだいぶ特徴的だが、作り自体は思いのほかシンプル。ゲーム本編の進め方もステージクリア方式で、それぞれのステージに課せられた目標の達成に挑むという分かりやすいものになっている。

 前述したように、本作発売の1年後、2003年には続編『RUNE II ~コルテンの鍵の秘密~』(以下、RUNE II)も発売。こちらは前作から200年後が舞台で、主人公も「リズ」という盗賊団の少女に交代している。また、任天堂と業務提携を結んだことから、販売はフロム・ソフトウェアと任天堂の共同となっている。

実際に『RUNE II』のパッケージ裏にも「販売元 任天堂株式会社」と記されている

実は結構“クセツヨ”で粗っぽいが、光るものも多く、続編で真価を発揮した

 続編も発売されたほどとなれば、「傑作だったのか?」と思うかもしれない。実際のところ、1作目は正直、“クセツヨ”と評されても仕方がない、粗削りな面が際立つ完成度だった。

 先ほど「30枚のカードで構築されたデッキを装備して戦う」と紹介した。ここからどんな遊びを連想するだろうか。おそらくランダム選出される30枚のカードを適時活用しつつ、時に異なる効果のカード同士の組み合わせも試しながら戦う、戦略的なものをイメージするかもしれない。

 だが、実際は使うたびにデッキから消失していくカードをやりくりしながら戦うという消耗戦。ランダム選出の仕組み、効果の組み合わせの要素自体はあるが、肝心のカードがなんと1回だけの使い切り。30枚あったのが29枚、28枚と、使えば使うほどデッキから消えていくのである。使えるカードが全部なくなれば、文字通り手も足も出なくなってしまうのだ。

出せるカードが1枚もない!こうなると、敗北しか選択肢がなくなる(ボス戦であればなおさら)

 こうなってしまえば、そのまま魔物の攻撃を受け続けて負けるか、システムメニューから「ギブアップ」を選んでステージの最初からやり直すしかない。念のため補足すると、あくまでもステージで使えるカードが使い切りという仕組み。デッキに組み込んだカードは、店で売却したり、上位カードへの「変化」を実施しない限り消えたり、減ることはない。

 また、ステージ内でも「デッキポイント」と称された場所で、デッキ内にカードを補充することができる。しかし、補充できるのはステージ内で獲得したカードのみ。手持ちのデッキに入れていないストックのカードは入れられないのである。また、戦闘がランダム発生(ランダムエンカウント)のため、マップ内をイタズラに右往左往しているとかえって消耗が激しくなるデメリットが。

 ゆえにいかにカードを使い過ぎることなく戦闘を乗り越えるかが攻略のカギとなる、リソース管理に重きを置いた設計になっている。

 加えて戦闘から離脱するとランダムで1枚のカードをロスト、敵に狙いを定める「ロックオン」の機能がない(手動で狙いを付ける必要がある)など、詰めの甘い箇所が見られ、お世辞にも綺麗にまとまっているとは言いがたい仕上がりとなってしまっている。

 とは言え、光るところもある。特にカードごとに違った戦術が楽しめるのはとてもユニーク。「武器型」なら、ほとんどアクションゲームも同然な感覚で立ち回れるのが面白い。相性(属性相関)の概念もあり、ステージごとに出現する敵の属性を踏まえてデッキを編集すれば、戦闘を有利に進めていけるようになるといった戦略を練る楽しさもある。

 本編に用意されたカードも100種類ほどあり、入手方法にも戦闘中に「キャプチャースロー」を決めて手に入れるという、このシステムならではのスリリングなものがある。「キャプチャースロー」自体はステージ攻略中、徐々に減っていくデッキ内のカードを補充する手段にもなっていて、戦術次第では枚数の安定化を狙える余地があるのも面白い部分だ。

 昨今は高難度のイメージがあるフロム・ソフトウェアのゲームとしては珍しく、難易度もそこまで高くない。ゲームオーバー、もしくはギブアップで負けても、戦闘で獲得したカードごとの経験値は残るため、繰り返し挑戦するほどコピーによるカード増産、変化によるアップグレードを試しやすくなるメリットがある。

 加えて本作は2人対戦モードも収録。個人のセーブ用「メモリーカード」を持ち込めば、それぞれのデータを基にしたデッキでリアルタイムカードバトルが楽しめるのである。

 これらの光る部分は続編の『RUNE II』で改善・昇華されるに至っている。特に戦闘はランダム発生ではなく、フィールド上でリアルタイムに実施される仕組みとなり、前作以上にアクションRPGらしさが強化。逃げる行動も取りやすくなって、戦術の幅も広がっている。また、敵をロックオンする機能も追加され、攻撃も当てやすくなった。

 さらに前作は3Dの見下ろし視点のマップを進んでいく形だったが、続編は3人称視点の3Dマップを進んでいくスタイルに。ほかにマップ内の仕掛けもバリエーションが増え、その攻略にあたってカードを使ったり、時には魔物に変身して行動するといった新たな攻略が求められる場面も用意。ストーリー性も強化され、より起伏に富んだ展開を楽しめるようにもなっている。

戦闘に勝って経験値が一定に達すれば、主人公もレベルアップするようになった(前作にはない)

 一方で難易度は前作よりもやや上昇。敗北時にもお金を失うペナルティが課せられるようになった。細かいところでも前作にあったミニマップ機能も廃止され、構造把握がやや難しくなったり、カードの種別も3種類から5種類に増えた影響で複雑になった点も見られる。全体の作りも前作とはほとんど別物になったが、完成度は大きく向上し、迷いなく良作と言える仕上がりになっている。

 その完成度に任天堂も着目したのか、続編はフロム・ソフトウェアと共同で販売を担当することに。しかも特典で「ニンテンドーゲームキューブ ソフトeカタログ 2003・春」なる、2001年9月から2003年発売の全115タイトルの新作を紹介するデジタルカタログまで同梱された。

当然ながらこのディスクはニンテンドーゲームキューブ上で動作するものである

 極め付けとして、ゲーム雑誌「Nintendo DREAM 2003年6月6日号 vol.90」(毎日コミュニケーションズ刊)に体験版ディスクを付録として提供する取り組みも実施。いかにこの『RUNE II』を積極的に売り込もうとしていたかが分かる出来事だ。

 ちなみに「ニンテンドーゲームキューブ ソフトeカタログ 2003・春」には、2003年6月にカプコンよりニンテンドーゲームキューブ向けに発売されたVFXアクションゲーム『ビューティフルジョー』の体験版が収録されている。

 フロム・ソフトウェアのゲームのパッケージの中に(体験版とは言え)カプコンのゲームが入っていて、しかも遊べてしまうというのは……なかなかシュールである。

20数年ぶりのタッグは、『RUNE』2作復刻の最大のチャンスを意味する!?

 前作を上回る強力なプロモーションと、任天堂という心強いバックアップも得た『RUNE II』。ただ、満足な結果は出せなかったようで、これ以降、フロム・ソフトウェアはニンテンドーゲームキューブ向けに新作を出さなかった。

 実は1作目の『RUNE』発表当時、『ゴールド☆マウンテン』なる完全新作の育成型RPGの発売もアナウンスされていた。だが結局、こちらは一部雑誌にわずかなスクリーンショットとキャラクターイラストをお披露目しただけで発売中止になっている。

DARK SOULS プロモーション映像 第4弾

 ニンテンドーゲームキューブ以降のWiiでも、フロム・ソフトウェアはゲームを出している。しかし、『RUNE』のようなオリジナルの新作を出すことはなくなり、のちに『デモンズソウル』『ダークソウル』という同社の新たな柱が建った2010年から2017年頃までは、PlayStation、Xbox、PCプラットフォーム向けの展開が中心になった。

DARK SOULS REMASTERED 紹介映像

 2018年には『DARK SOULS REMASTERED(ダークソウル リマスタード)』のNintendo Switch版が展開され、流れに変化があった。ただ、そこでも『RUNE』のようなオリジナルの新作が展開されるようなことはなかった。

 一連の過去があったことを踏まえれば、今回の『The Duskbloods』がいかに久しぶりで、満を持してなのかがよく分かるはずだ。しかも、当時とは異なり、フロム・ソフトウェアは「ソウル」シリーズと「アーマード・コア」シリーズなどで大きな成功を収めたことから、世界的な知名度を得ている。かつて『RUNE』のころにはできなかったことが成し遂げられるのではないのかと、嫌でも注目される。

ニンテンドー ゲームキューブ Nintendo Classics [Nintendo Direct | Nintendo Switch 2]

 また『The Duskbloods』が発売されるNintendo Switch 2では、ニンテンドーゲームキューブの復刻コレクションタイトル『ニンテンドー ゲームキューブ Nintendo Classics』の配信が決定している。本記事の執筆時点では、今後の配信ラインナップに『RUNE』2作の姿はないが、任天堂以外のメーカーのタイトルで『ソウルキャリバーII』の配信が決定していることから、可能性はゼロとは言えないだろう。

   

 実は意外にも、『RUNE』2作はニンテンドーゲームキューブ以外のハード向けに移植されたことがない。そのため、もし前述の『ニンテンドー ゲームキューブ Nintendo Classics』で配信されれば、実に20数年越しの復刻になる。ただし繰り返しになるが、今後の配信ラインナップの中に本記事の執筆時点では『RUNE』2作はない。そのため、実現せず幻のままになる可能性も否定できない。

 しかしながら『RUNE』以来、実に20数年ぶりにフロム・ソフトウェアと任天堂がタッグを組むというのは、2作の復刻に関するこれ以上ない話題作りのチャンスでもある。それほど大きなヒットにはならなかったものの、実は根強いファンも少なからず抱えている『RUNE』(特に続編『RUNE II』)。この20数年ぶりの機会を活かした展開が起きることを願うばかりだ。

 ちなみに本作はゲーム中にいろいろと覚える事柄が多い。だが、ありがたいことにフロム・ソフトウェア公式サイトの製品情報ページでは、2025年現在も『RUNE』2作の取扱説明書のPDFデータが公開中になっている。

フロム・ソフトウェア公式サイト製品情報ページより

 もしも将来、『RUNE』2作の復刻が実現し、「できれば細かく内容を確認しながら遊びたいな……」となったなら、こちらを確認してみることを強くオススメする。あえていまチェックし、どんなゲームだったのかを調べてみるのも一興だ。

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