20万円超えのレアゲー『レンダリング・レンジャーR²』が1,200円で買えるようになろうと、作品特有の火力は失われない

ROMカートリッジ単品で10万円弱。箱、説明書付きの完品なら、20万円を超えるケースもあまた。いずれも新品ではなく、中古の価格である。
そんな規格外の高値が付けられたゲームソフトとして、一部で語り草にされているのが『レンダリング・レンジャーR²(ダブルアール)』なる作品。1995年11月17日、任天堂の家庭用ゲーム機スーパーファミコン向けに発売されたタイトルである。
その『レンダリング・レンジャーR²』が2025年3月20日より、1,200円で買えるようになった。大事なことなので繰り返そう。1,200円だ。もしくは1,210円。どちらも税込み価格となる。
Windows PC(Steam)、PlayStation 5、Nintendo Switch向けの復刻版『レンダリング・レンジャーR² [Rewind]』が同日より販売開始となったのだ(※Nintendo Switch版は4月3日より販売開始)。そう、今後はゲーム本編を遊びたいだけなら、数十万円も支払わなくていい!

約20年ほど前。オリジナルのスーパーファミコン版をゲーム機本体が買えてしまうレベルの額を支払い、手に入れた筆者が思うことはシンプルだ。
なんて素晴らしい時代だ!
しかし一方で、本作はスーパーファミコン実機で遊んでこそ「凄い!」と実感できるゲームでもあった。ゆえに現代の環境で遊べる復刻版だと、「凄さが薄れているのでは?」との不安もあった。
実際に復刻版を購入し、最後まで遊び通したうえでのレビューをお届けしたい。
アクションゲームとシューティングゲームの2ジャンルを内包し、高い技術力を駆使して仕上げられた力作
近年はレアゲーとして取りざたされ気味の『レンダリング・レンジャーR²』。そもそも、どういったゲームなのか?
『レンダリング・レンジャーR²』は、横スクロールのアクションとシューティング、ふたつのジャンルがステージごとに展開される構成を特徴とした作品だ。そのため、ジャンルとしては「アクション&シューティングゲーム」と称する形となる。

以後は各ジャンルを「パート」と称す。アクションパートは、主人公の「R²(ダブルアール)」を操作し、手持ちの銃火器で襲い来る敵を撃ち倒しつつ、ステージを突き進む内容。銃火器は4種類あり、いずれも弾数制限がなく無限に撃ちまくれる仕組みとなっている。

シューティングパートはダブルアールの搭乗する戦闘機を操縦し、襲い来る敵をアクションパートと同等の4種類の武器で倒しつつ、強制スクロールで進行するステージを進む内容だ。
いずれのパートも最後に現れる大ボスを倒す、もしくはゴールに到達できればクリアになる。本編の進行は1本道で、最終的に全9つあるステージをクリアできれば、エンディングとなる。全体的に昔のアーケードゲームを思わせる感じの作りである。
身もふたもないことを言えば、既存のゲームジャンルを重ね合わせた感じの内容で、システム的にも既視感を抱かせるものが多い。ただ、ダメージ制を採用している関係で、ふたつのパートともに主人公がやられにくいなど、難易度の塩梅はやや異なる。

連続3回まで撃てて、使い切っても後から1回ずつ使用可能になる「メガウェポン」なる強力な武器の存在もそのひとつ。実質、無制限ゆえ、その火力に任せた力押しが戦術のひとつとして用意されている。
そして、タイトルにも冠されたレンダリングCGを採用した美しいグラフィック。画面を覆いつくすほど巨大なボスが動き回ったり、戦闘機がグルグル回ったりなど、当時のスーパーファミコンでは衝撃的だった表現がふんだんに盛り込まれている。

技術レベルも高い。巨大なボスが弾や爆弾をたくさん撒き散らそうが、大量の雑魚敵が画面を覆い尽そうが、ゲームスピードがまったく低下しないのである。スーパーファミコンは、本体内蔵CPUのクロック周波数が低いことから、高速スクロールの表現に弱い一面を持っていたとされる。そこを補うため、1995年当時には処理速度を向上させる特殊なチップをROMカートリッジに搭載したゲームソフトがいくつか登場している。
『レンダリング・レンジャーR²』は、そのような特殊チップの力を借りず、プログラミング技術だけで高速処理を実現させている。2025年現在の視点で見ると、なんてこともないが、当時としては驚愕の処理を実現させていたのである。

これもあって、本作はまさにスーパーファミコンの限界に挑んだモデルケースのひとつとも言える作品になっている。しかもなんと、本作は個人制作。マンフレッド・トレンツというドイツ在住の個人ゲームクリエイターによって制作されている。厳密には本作のエンディングで拝めるスタッフクレジットいわく、グラフィックの一部と音楽は専属のクリエイターが手がけている。だが、それ以外のデザイン、プログラムはすべてトレンツ氏個人が制作。2025年現在で言えば、インディーゲームも同然の体制で作られているのだ。
ゆえに本作は、スーパーファミコンのインディーゲームと言えるオーパーツ的存在なのである。
見た目のインパクトは落ちるが、豪快で火力あるゲーム内容は色あせない
逆に言えば、現代の環境に蘇ると、魅力がパワーダウンするゲームでもある。

言うまでもなく、復刻版が展開されたPlayStation 5、Windows PC、Nintendo Switchの性能はオリジナルのスーパーファミコンとは比べものにならないほど高い。そんな環境で前述の魅力の数々を見たところで、どう感じるだろう? おそらくオリジナルを知らない世代に限らず、昨今のゲームの表現に慣れた当時の世代から見ても「何が凄いのか?」となってしまうはずだ。
さすがに古臭さが増した部分もある。特にレンダリングCGで描かれたボスは、2025年現在の視点で見れば大きな静止画そのものだ。実はレンダリングCGで描かれているとは言うものの、ボス自体のアニメパターンは少ない。ゲーム機側の制約もあり、細かい動きは付けられていないのである。

なかにはちゃんと動くタイプのボスもいるが、総数は少ない。また、よく見ると特定の部位に限定されていたり、ドット絵で補われていたりする。これでも当時の視点から見れば凄いのだが、2025年の視点から見れば前時代的な表現になってしまっているのは否めないだろう。
それゆえ、今回の復刻版ではスーパーファミコン実機で遊ぶからこそ感じられる凄さが薄れてしまっている。筆者はオリジナル版の経験者で、その凄さを実機にて経験している。ただ、やはり最新の環境で遊ぶと「いまの時代なら、できて当たり前だろうな……」と思うことがいくつか。技術的な面では、古さを感じるばかりだった。

しかし、だからと言って『レンダリング・レンジャーR²』が悪いゲームというわけではない。たしかに技術の凄さをアピールした点は、2025年現在だとインパクトが薄い。ただ、とにかく豪快で火力の高いその内容は、色あせない気持ちよさと熱さに満ちている。
本作は弾数無制限の銃火器と強力な「メガウェポン」で、敵という敵をねじ伏せていく快感がずば抜けている。とりわけ「メガウェポン」は火力の高さもさることながら、実質、無限に撃てる仕組みも相まって優れた使い勝手を誇る。
おかげでどんなに手ごわいボスや敵の集団との対決であっても、必ず勝機がある。メガウェポンなる強力な一手が必ず使えるからだ。この「火力があればなんでもできる」な考えが炸裂したバランスが実に豪快で、クセになる気持ちよさを演出する。

相応に演出も派手。全編、破壊と爆発の嵐である。爆発音も適度に重々しく、爽快感を引き立てるほか、売りである巨大ボスたちも見事な散り様を見せてくれる。
全9つのステージも見どころ多し。画面を覆い尽す物量の雑魚敵が現れたり、巨大なボスが4~5体連続で出現したりなど、いい意味でプレイヤーの予想を裏切る展開の数々はくぎ付けになってしまうはずだ。また、日本の名作アクション、シューティングゲームを露骨にオマージュした演出、小ネタが随所に仕込まれているのにも注目である。
また、本作のストーリーは地球を廃墟にした正体不明の異星人に反撃するというもので、全体的に退廃的なムードが漂っている。だが、ゲーム自体はそれとは裏腹に遊びやすさを重視。ダメージ制が採用されているほか、体力満タン時に回復アイテムを取れば最大3段階まで強化されるシールドが張られるなど、意外にやられにくくされている。

難易度選択機能も完備。最も簡単な「EASY」でもエンディングまでやり通せるので、ほぼ力任せな一騎当千プレイも容易にできてしまう。加えて、操作性も良好。キャラクターは機敏に動いてくれるうえ、銃撃も上下左右斜め方向に狙いを定められるなど、まさにプレイヤーの思うがままに動かせる設計である。
とは言え、粗削りなところもある。アクションパートは落下すれば即ミスとなる穴の見分けが付けにくい。シューティングパートもアクションパートと共通して自機(キャラクター)の当たり判定が大きく、意図しないダメージを受けることがある。また、ステージ7は背景グラフィックの描き込みと色合いの問題で、敵の位置や攻撃の視認性が異様に悪いという難点がある。難易度も初見殺しの要素が多めで、「EASY」でもワリと手ごわい(特にステージ7、8において顕著)。

アクションパートが少なく、シューティングパートが大半を占めるのも、アクションゲームを求めるプレイヤーには賛否があるだろう(これは本作がもともとシューティングゲームとして作られ、アクションパートが後から足された経緯に由来する)。
以上のような粗さもあるのだが、全体的には制作者の熱量がにじみ出た「豪快」の言葉がよく似合う作品に仕上げられている。さらに復刻版にはリワインド(巻き戻し)機能とクイックセーブ&ロード機能が搭載されている。不意にミスしてしまっても、直前まで巻き戻せばすぐにやり直し可能なので、特に初回プレイではこれらの機能を積極的に使って遊ぶのをオススメする。
たしかに技術面の凄さは2025年現在のいまは感じにくいかもしれない。だが、火力の高さに任せた戦いと遊びやすさは色あせておらず、本作でしか得られない栄養を摂取できる。
もしも「爆発」「破壊」「鎮圧」のワードにときめきを感じてしまう人であれば、本作はきっと刺さるはずである。とにかく撃ちまくって壊しまくって発散したい思いを抱いている人にもオススメ。その欲求を満たしてくれるだろう。
海外製なのに日本でしか発売されなかった異色の一作、30年の時を経て世界へ
それにしても、オリジナル版はホントに恐ろしい時期に発売されたものだなと、当時を振り返ってみて思う。

本作が発売された1995年11月17日とは、『ロマンシング サ・ガ3』と『スーパードンキーコング2 ディクシー&ディディー』というスーパーファミコン向けの話題作・大作に板挟みにされた日である。加えてその2~3週間後には『ロックマンX3』『不思議のダンジョン2 風来のシレン』、そして『ドラゴンクエストVI 幻の大地』の発売が控えていた。右も左も話題作・大作だらけである。
「そりゃ埋もれるわ!」のひと言だ。おまけに本作はドイツ製ながら欧州のほか、北米でも未発売。発売されたのは日本だけで、出荷本数も約5,000本と極端に限定された作品だったのである。後年、20万円以上の値が付けられた理由がこれだ。
一連の経緯と、本作の高速処理を実現させたプログラミング技術などの話は、復刻版に収録された北米版説明書18~21ページ掲載の「HISTORY OF RENDERING RANGER R²」で解説されている。

「あれ? 日本以外では発売されていないはずじゃ?」となるが、実は27年後の2023年、Limited Run Gamesより海外スーパーファミコン(Super Nintendo Entertainment System、SNES)向けの復刻ROMカートリッジが発売されている。
※参考リンク:「レンダリング・レンジャーR2」のSNES版がLimited Run Gamesから登場。1995年に日本でのみ発売された幻のタイトル(4Gamer.net)https://www.4gamer.net/games/999/G999905/20220802047/
今回の復刻版は、それをダウンロードソフトとして展開したものになる。そのため、北米版の説明書が同梱されているのだ。また、復刻版には本作の前身となった『TARGA(タルガ)』なるタイトルも収録。中身は主人公キャラクターを置き換えた『レンダリング・レンジャーR²』なのだが、ちょっとした見どころもあるのでクリア後に挑んでみるのも一興だ。

とにもかくにも、いろいろな偶然が重なって大変な額が付けられた『レンダリング・レンジャーR²』だが、もはや数十万円もの金額を支払うことなく遊べるようになったのは「なんて素晴らしい時代だ!」のひと言に尽きる。また、レアゲーとしての知名度が勝る印象だった本作の素顔を知れる機会が設けられたのも喜ばしいことである。
元が30年前のゲームであるゆえ、古臭さがあるのは否定しない。難易度も大味なところがある。だが、豪快の二文字がこれ以上なく似合う火力の高い内容は、遊べば強く印象に残るはず。復刻版であれば、リワインド機能とクイックセーブ&ロード機能もあるため、遊びやすさはオリジナル版以上だ。

アクションゲームとシューティングゲームの双方が好きならぜひ、この機会に遊んでみていただきたい。スーパーファミコン時代のインディーゲームという、ひとつの歴史資料として買ってみるのもオツである。
復刻版とセットで、トレンツ氏の代表作であるアクションゲーム『タリカン』シリーズをまとめた『タリカンアンソロジー Vol.1&Vol.2』(Nintendo Switch)を買ってみるのもイチオシだ。実は本作、『タリカン』シリーズをプレイしていると「あれっ!?」となる小ネタがあったりする。少しでもネタが気になったのならぜひ。
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