インフラ化に期待の任天堂公式アプリ『Nintendo Today!』 成功のカギは“Today”であり続けられるかに

『Nintendo Today!』成功のカギは?

 任天堂は3月27日、新作情報番組『Nintendo Direct 2025.3.27』のなかで、『Nintendo Today!(ニンテンドートゥデイ)』を発表し、即日で配信を開始した。

 任天堂が送り出す新たな公式アプリとして、フォロワーの注目を集める同サービス。本稿では、『Nintendo Today!』が期待に応えていくために、越えなければならないハードルを考えていく。

任天堂に関する最新情報が届く公式アプリ『Nintendo Today!』

毎日届く、ニンテンドー。「Nintendo Today!」 [Nintendo Direct 2025.3.27]

 『Nintendo Today!』は、任天堂に関するイベントやゲームの情報などを毎日日替わりで届けるモバイルアプリだ。サービス内には、「好みのゲームシリーズのキャラクターがアニメーションで毎日の日付を知らせる『アニメーションカレンダー』」や、「ソフトの発売日や、ゲームで開催されるイベント、Nintendo Directの予定など、任天堂に関連したイベントのスケジュールを確認できる『イベントスケジュール』」、「アプリを開くことなく、カレンダーや新着コンテンツを確認できる『ウィジェット』」など、さまざまなコンテンツが用意されている。

 『Nintendo Direct 2025.3.27』配信直後の3月28日0時には、実写映画版『ゼルダの伝説』が2027年3月26日に公開予定であることが、同サービスを通じて公表された。また、4月2日に配信の『Nintendo Direct: Nintendo Switch 2 - 2025.4.2』以降は、Nintendo Switch 2に関する最新情報も届けられるという。

 『Nintendo Today!』は、Android/iOSに対応し、ニンテンドーアカウントがあれば、誰でも無料で利用できる。任天堂のフォロワーにとっては、2024年10月配信の『Nintendo Music』に続く、うれしいサプライズとなった。

課題は、日常的で有意義な情報発信を続けられるか

 事前の情報がまったくないなかで、突如として発表/配信された『Nintendo Today!』。Nintendo Switchの躍進から、年齢や性別、ゲームカルチャーへの熱中度合いにかかわらず支持を広げている、任天堂の最新情報が得られる公式アプリということもあり、その衝撃はアナウンスの直後から界隈を駆けめぐった。その後は上述したように、実写映画版『ゼルダの伝説』の情報や、未発表のNintendo Switch 2の画像が解禁されるなど、引き続き大きな話題性を獲得している。しかしながら、今後も同様のインパクトを示し続けられるかについては、やや懐疑的と言わざるを得ない面もある。

 昨今では顧客との直接的な接点を創出する観点から、ゲーム業界だけにとどまらず、「公式アプリ」のリリースが相次いでいる。ポイントカード機能などを備えた小売店のアプリを自身のスマートフォンにインストールしている、という人も多くいるのではないだろうか。同様にゲーム業界のプラットフォーマーからは、ソニー・インタラクティブエンターテインメント(以下、SIE)が『PlayStation App』を、Microsoftが『Xbox』をモバイル用の公式アプリとして提供している。両者からはさまざまな情報が発信されているが、セール情報が中心であることもあり、“日常的”というにはほど遠く、それらが濃い顧客接点とはなり得ていない現状がある。例として紹介した小売店のアプリなどを含めて、実際には「スマートフォンのストレージ容量を食うだけの代物」と化しているケースも珍しくない。

 とはいえ、充実した情報量を担保するためには、運営コストが大きくなりすぎる面もある。たとえば、SIEの『PlayStation App』に関しては、同社が力を入れているPlayStation Blogへの動線を設けるなどの施策があれば、より公式アプリという顧客接点を生かせるような気もするが、そのための開発や運用には大きなリソースが必要であり、「総合的に現実的ではない」というのが、実際のところなのだろう。

 こうした公式アプリをめぐる課題は、『Nintendo Today!』にとっても“対岸の火事”というわけではない。現時点では、発表/配信に至るまでの“助走”があったであろうこともあり、話題性のあるトピックを配信し続けられているが、Nintendo Switch 2のローンチ以降も、フォロワーにとって耳寄りな情報を届けられるかは、事前の計画と今後の運用次第なのではないか。仮に『Nintendo Direct』をYouTubeに頼らず、こちらで配信するとしても、日常的な働きかけからはほど遠い。名前に「Today!」とあることからもわかるとおり、同サービスは毎日の情報発信を売りとしているが、内容を薄めることなく継続するためには、相応のコストが必要となるだろう。長期的な目線で『Nintendo Today!』が中身の詰まったサービスとなるかは、そうした課題をクリアできるかにかかっていると言える。

Nintendo Direct 2025.3.27

 ご存知のとおり、いまや『Nintendo Direct』はゲーム業界を代表するビッグコンテンツへと成長した。『Nintendo Today!』が発表となった『Nintendo Direct 2025.3.27』は、4月2日時点で約600万回も再生されている。日本語版のみでこの数字を記録していることが、同番組に対する注目度の大きさを物語っていると言えるだろう。

 仮に今後、『Nintendo Direct』をサービス内で配信するとして、もしその視聴者を巻き込めるのであれば、『Nintendo Today!』の先行きは明るいと言える。その一方で、多くの公式アプリと同様に、“スマートフォンのなかの置物”とならないためには、工夫が必要となることも確かである。その先に任天堂とそのフォロワーの双方がともに、同サービスを通じてハッピーになれる道があるのではないだろうか。

 『Nintendo Today!』は公式アプリの前例をくつがえし、任天堂フォロワーたちのインフラとなれるか。Nintendo Switch 2に対する注目が一段落したのちが、同サービスの正念場となりそうだ。

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