『ポケポケ』トレード機能実装も集まる疑問の声 運営と善良なユーザーの“落としどころ”は見つかるのか

『ポケポケ』トレード機能はどうなるのか

 1月29日、『Pokémon Trading Card Game Pocket』(以下、『ポケポケ』)にトレード機能が実装された。

 リリース時点から今後の方針として打ち出されていた同機能。満を持しての実装に、界隈からはさまざまな声が聞こえてきている。本稿では、『ポケポケ』トレード機能の課題をまとめ、その裏にある運営の思惑を推察する。

『ポケモンカードゲーム』を題材にしたデジタルTCG『ポケポケ』

【公式】『Pokémon Trading Card Game Pocket(ポケポケ)』紹介映像

 『ポケポケ』は、アナログTCG『ポケモンカードゲーム』に盛り込まれた体験をモバイル向けに再現/拡張したデジタルTCGだ。プレイヤーはさまざまなカードが収録されたパックを開封することで、手に入れたものを図鑑にコレクションしたり、それらをもとにデッキを構築し、他者とバトルを行ったりすることができる。

 特徴となっているのは、デジタルだからこそ実現可能な表現/演出が盛り込まれている点。ゲーム内に登場するカードには複数のレアリティが用意されており、なかには、ポケモンが飛び出してくるような特殊な加工が施されたものも存在する。

 今回実装されたトレード機能は、リリース時点から追加する予定であることがアナウンスされていたもの。現時点では、パック「最強の遺伝子」「幻のいる島」に収録されている一部のカードが、おなじレアリティにかぎり、フレンドとのあいだで交換できる仕様となっている。公式によると、今後、対象となるパックを拡充していく予定とのことだ。

 『ポケポケ』はAndroid/iOS向けに配信中。基本プレイは無料(アイテムごとの個別課金)となっている。

『ポケポケ』トレード機能に内在するさまざまな問題

 リリースから3か月が経過し、ようやく現実のものとなった『ポケポケ』のトレード機能。当初から切望されていたこともあり、界隈では大きく話題を集めているが、その出来に対する評価はあまり芳しくないようだ。

 先にも述べたとおり、同機能では現在、パック「最強の遺伝子」「幻のいる島」の一部のカードに対象が限定されているほか、利用にはさまざまな条件が設けられている。「高レアリティのカードは選べないこと」「一定以上のレアリティを持つカードの交換には、『トレードメダル』という専用のアイテムが必要なこと」などはその一例だ。ユーザーにしてみると、おそらく対象にしたいのは、「入手しづらいカード」だっただろうが、実際にはそのようなカードが「交換できない」「交換しづらい」状況がある。

 たとえば、『ポケポケ』には、「☆2」「☆3」「クラウン」といった高レアリティのカードが存在している。通常パックからの排出率はそれぞれ、「☆2」が2%ほど、「☆3」が1%ほど、「クラウン」が0.2%ほどと低めに設定されているため、望むものを手に入れることが難しくなっている。しかし、これら高レアリティのカードはトレード機能の対象となっていない。そのため、ユーザーが期待していた“救済策”としては利用できない状況が生まれている。

 また、対象となっているなかでは高レアリティに位置する「♢3」「♢4」「☆1」のカードの交換には、それぞれ120枚、500枚、400枚のトレードメダルが必要となるが、相当量を手に入れるためには、まとまった数のカード、あるいは(本来は安易に手放したくないはずの)高レアリティのカードを資源化しなければならない。くわえ、このシステムは、当該カードが3枚以上重複している場合でないと使えないため、(より効率のよい)高レアリティのカードについては、実質的に資源化が難しい仕様であるのだ。

 さらに、現在のバージョンでは、ゲーム内におけるコミュニケーションの手段が限られており、交換にあたって自身の欲しいカードを表明/選択することができない。そのため、より生産性のあるトレードを実現するためには、掲示板やSNSといった外部のコミュニケーションツールを活用するほかなく、このことがトレード活性化の足かせとなっている実情もある。

 トレード機能にユーザーが期待していたのは、「自身の欲するカードをパックを引くよりも容易に手に入れる」という使い方であったはず。しかし、ユーザーフレンドリーでないさまざまな仕様が、同機能を形骸化し、評価を貶めてしまっている現状だ。

運営と善良なユーザー、双方が納得する落としどころは見つかるか

 とはいえ、運営の想いや意図もわからないわけではない。おそらく今回実装に至ったトレード機能は、『ポケポケ』にアナログTCG文化の持つ良いところを取り入れるためのアプローチであったはずだ。デジタルTCGジャンルの慣習では、トレードメダル同様、重複カードを資源化することで手に入れたゲーム内通貨を使い、欲しいカードを自由に生成する方法が一般的だ。しかしながら、こうしたシステムを同タイトルに取り入れなかったのは、そこに一石を投じたい想いがあったからにほかならないだろう。

 また、アナログTCGとデジタルTCGのあいだには、前者がパック販売をマネタイズポイントとしている一方で、後者が無料でプレイできる(無料でパックを入手できる)という違いも存在する。そのような背景があるからこそ、『ポケポケ』にとっては、「どのようにユーザーを課金へと誘導するか」「1ユーザーによる複数アカウント間のトレードにいかに対処するか」「(さらにそこから飛躍し)リアルマネートレードを誘発しない仕組みづくり」などに苦慮した結果が、痒いところに手が届かないトレード機能を生んでしまったという側面もある。

 これらは人気タイトルならではの悩みでもある。当然、一般ユーザーの利便性が高まるほど、運営が好ましくないと考える使い方も容易となっていく。どこかに根本的な商業構造の違いによる限界もあるのかもしれない。

 おそらく今後も『ポケポケ』はデジタルの強みと弱みのそれぞれに向き合い、アップデートを続けていくのだろう。2月1日には、本稿で扱ったトレード機能の不評を受け、改善に向けた検討を行っていく旨を、公式Xを通じて明らかにしている。このアナウンスのなかで、運営は「トレードに必要なアイテムや制約は、BOTや複数アカウントによる不正を防ぎ、ユーザー間の公平性や収集の楽しさ、ゲームバランスを維持するために設けたものである」と説明した。

 はたして『ポケポケ』トレード機能をめぐる“落としどころ”はどのあたりになるだろうか。邪なユーザーを排除し、運営、善良なユーザーの双方が納得できるシステムとなることを望みたい。

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