3000万DL突破の『ポケポケ』深堀りレビュー ポケモンが“リアルとデジタル”をつなぐ独自の魅力
「ポケモンカード」がスマホで遊べる『Pokémon Trading Card Game Pocket』(以下、『ポケポケ』)がとにかく話題だ。10月30日にリリースされてから、App Store売上ランキングで1位を獲得し、全世界で3000万ダウンロードを突破するなど、多くの人が楽しんでいる本作。すでにリアルサウンドテックでも何度か触れているが、その魅力はどこにあるのか、より深堀りしたレビューをお届けする。
なによりも「パック開封」が楽しい作品
カードゲームの楽しさといえばパックを開封する瞬間。バトルよりもパックを開けるときの方が好きという人も少なくないだろう。『ポケポケ』はパック開封の演出にかなり力が入っている。現実のパックと同じように、開封するパックを選び、スワイプで封を切り、一枚ずつカードをめくって確認することができる。また、開ける前のパックは回転させることができ、裏返した状態のパックを開封すると、カードも裏側に出てくるこだわりようだ。
パック開封の細かい挙動のおかげで、子供のころにやった裏面や横面を見て曲がったパックや、裏面の模様が違うパックを探してレアカードを狙いに行く「サーチ」のようなことも楽しめる。実際に普通と違うパックがあるのか、レアカードが出やすいのかは不明だが、SNSではそういった噂が囁かれている。こうした裏技的な話題で盛り上がれることを懐かしいと感じるのは筆者だけではないだろう。
パックから出てくるカードも、ポケモンの魅力が詰まったものばかり。さまざまな絵柄で書かれたイラストは魅力的で、同じカードでもイラスト違いなどもありコレクションをしたくなってくる。カードは触って動かすことができ、レアカードの光沢まで再現されているのには驚いた。
カードのなかにはTCG版『ポケモンカード』初期に登場したちょっと太ったピカチュウのような昔懐かしのカードから、立体的に描かれたレアカード、そしてイラストの世界に飛び込んだような演出が見られる「イマーシブカード」などが存在する。特に「イマーシブカード」の演出はポケモンファンなら大いに楽しめるはずだ。
なお、パックの開封は時間で回復していき、日に2回無料で行なえる。デジタルカードゲームでありがちな、「カードを引くためのゲーム内通貨を稼ぐためにデイリーミッションをこなす」といったことは不要で、誰でもパック開封の楽しみを味わいやすい。また、パック開封までの時間を短縮するアイテムも実装されており、こちらは各種ミッションで手に入る。より多くのパックを開封したいなら、ミッションをこなせばいいというわけだ。
カードを集めるモチベーションを高める要素も存在し、たとえばカードを自由に選んでコレクションできる「コレクションファイル」は、現実のカードゲームにおける「ファイリング」のように楽しめる。また、お気に入りのカードを飾れる「コレクションボード」では、好きなカードを机の上に飾っているように見せることができる。
このように、本作はパックを開封して集める、集めたカードを鑑賞するという点にかなり力が入れられている。そのどれもが、現実のカードゲームにおける楽しさを再現しようという意気込みを感じさせられるものとなっている。
バトルは手軽にサクッと遊べる仕様に
カードゲームといえば集めたカードを使用してのバトルも欠かせない要素。本作のバトルは、ポケモンを場に出し、「しんか」させたりエネルギーを付けて技を繰り出すといった『ポケカ』の基本的なシステムは押さえつつ、デッキ枚数は20枚、毎ターンエネルギーが1種類出てくる「エネルギーゾーン」の存在、抵抗力やサイドといった要素がない等、現実の『ポケモンカード』を簡略化したものとなっている。
デッキ構築に必要な枚数が少なかったり、エネルギーゾーンのおかげでエネルギーを引けなくて動けないといったことがなくなっていたりと、誰でもデッキを組みやすく、バトルもしやすいデザインとなっており、実際のバトルも短時間でサクッと遊べるものとなっている。
ゲームバランスとしては、やや運の要素が強く、カードの引きやコイントスの結果で勝敗が決まることが多い印象だが、ワンゲームの短さや、いわゆる「ソリティア」と呼ばれるような自分のターンがなかなか回ってこない展開がないことからそれほど気にならないし、運が悪くて負けた場合でも次のバトルに挑みやすい。
むしろ、デッキ構築やプレイングでは考える場面も少なからずあり、カードゲームの対戦の醍醐味は十分に味わえると感じた。デッキの構築では20枚のなかに、何種類のポケモンを何枚ずつ入れるかや、アイテムやサポートといったポケモン以外のカードのバランスなどは試行錯誤をすることができるし、バトルではどのポケモンを繰り出し、エネルギーを付けるかや、相手の動きに対してリスクを減らすようなカードの切り方など、考えることはしっかりとある。
また、AI対戦やオート機能、レンタルデッキなどのシステムもあるので、初心者でもバトルを楽しみやすいのもポイントだ。
総じて、バトルは競技性を重視したものというより、文字どおり誰でも楽しめる内容となっており、普段カードゲームをプレイしない人でも、コレクションしたカードを使ってのバトルが楽しめる。
『ポケモン』ならではのデジタルとリアルをつなぐカードゲーム
このように『ポケポケ』は、これまでの対戦重視のDCGと比較して、カードを集める体験を現実のカードゲームと同じように楽しめることに重点を置いた作品だと感じた。対戦はその延長線上にあるものという位置付けながら、しっかりと戦略的なバトルができる。今後カードプールが増えてくれば、コレクション・バトルともにさらなる盛り上がりを見せるのではないだろうか。
こうしたゲーム性は、「ポケットモンスター」シリーズの図鑑を埋めていく要素や、ポケモンやジムリーダー自体のキャラクターとしての魅力といった、同シリーズが持っているコンテンツの力があってこそのもので、ほかのカードゲームで再現するのは難しい。それだけに、今後も本作独自の展開には注目したいところだ。
今後については、実装予定の交換機能が追加されれば、より現実でカードゲームを遊ぶ感覚で楽しめるのではないだろうか。また、『ポケポケ』を通じて『ポケカ』に興味を持ち始めてみようという人もいるだろうから、両者をつなぐようなイベントなどを期待している。
また、コレクション重視のゲームとはいえ、バトルはゲームを続けるモチベーションとして重要な要素だろう。現在ランク戦は実装されていないものの、バトル関連のイベントが開催されている。今後もバトルをするモチベーションが湧くような取り組みが求められるかもしれない。
最後に、あくまで個人的な感想だが、本作のリアルなカードゲームをスマホで体験できるというコンセプトは、実に「ポケモン」らしい発想だと思えた。
『ポケットモンスター赤・緑』が田尻智の少年時代に住んでいた東京都町田市と、昆虫採集・昆虫のバトルや交換等をモチーフとして出発したことや、現実の風景のなかにポケモンが飛び出してくる『Pokémon GO』等、「ポケモン」のタイトルにはデジタル世界とリアル世界とをつなぐようなものが少なからず存在する。
そういった意味で『ポケポケ』は、ポケモンによってリアルなカードゲームとデジタルカードゲームの体験を接続するようなタイトルになっているのではないだろうか。実際、筆者は本作のプレイを通じて、子供時代におもちゃ屋で友達と集まってパックを買い、バトルやトレードで盛り上がった体験を思い出したし、読者のなかにもリアルなカードゲーム的な体験を感じたという人はいるだろう。
余談が長くなったが、本作は『ポケモン』の魅力やカードゲームの体験といった要素が組み合わさり、独自の魅力を持ったタイトルになっていることは間違いない。だからこそ、今後の展開には期待したい。
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