探索の遊びに難儀する「魔界村」シリーズ いまこそ“赤き魔物”レッドアリーマーの力を借りるべきか
非常に難易度の高いアクションゲームで、カプコンの看板タイトルのひとつでもある『魔界村』。そんな『魔界村』の難しさを象徴する敵キャラクターと言えば、“赤き魔物”とも呼ばれる「レッドアリーマー」だろう。
そんなレッドアリーマーはかつて、自らの主演作を持っていた。作品名は『レッドアリーマー』。そのまんまである。
正式名称は『レッドアリーマー MAKAIMURA GAIDEN』。1990年5月2日にゲームボーイ用ゲームソフトとして発売された、サブタイトル通りの『魔界村』の外伝作品で、アクションRPGだ。
この作品は後の1992年7月17日、ファミリーコンピュータ(ファミコン)用ゲームソフトとして続編となる『レッドアリーマーII』が発売。それをゲームボーイへと(逆)移植した『魔界村外伝 THE DEMON DARKNESS』も1993年4月16日に発売され、作品的にはシリーズ化を意識した動きを見せた。
それを証明するかのように1994年10月21日、スーパーファミコン用ゲームソフトとして、事実上のシリーズ3作目となる『デモンズブレイゾン 魔界村 紋章編』(以下、デモンズブレイゾン)が発売された。
しかし、この作品を最後にレッドアリーマーの主演作は展開されなくなり、以降、当人(?)は本家本元の「魔界村」シリーズで従来の強敵を務めることと、他のコラボレーション作品へのゲスト出演に留まるようになった。
気が付けば、最後の主演作『デモンズブレイゾン』の発売から、30年が過ぎ去ってしまったわけだが、近頃……筆者個人として、思うことがある。
それはレッドアリーマーはいま、主人公として復帰するときなのでは、ということだ。
伝統のステージクリア型に“探索の遊び”を盛り込むことに難儀している今の『魔界村』
なぜ、そのようなことを思ったのか。それは近年における「魔界村」シリーズの動向と、それを実際に体験して感じたことに起因する。
そもそもの『魔界村』とは、ステージクリアで1本道構成の横スクロールアクションゲームだ。主人公の騎士「アーサー」を動かし、さらわれたプリンセスを救出するため、魔物がはびこる魔界に挑むというのが主な内容となる。
ジャンプしたときの空中制御(微調整)がほぼ効かない、攻撃用の武器に当たり外れがある、敵がランダムかつ次々と出現してプレイヤーに襲い掛かってくる、ラスボスと戦ってエンディングを迎えるには2周が必須など、全体的にクセの強い仕様が多く、それもあって非常に難易度の高いアクションゲームとなっている。
反面、困難が多いなりに乗り越えたときの達成感は大きい。さらに一見、理不尽のように見えて実はちゃんと突破口が設けられてもいるなど、ゲームバランスは練られていて、その魅力もあって根強い人気を得ている作品でもある。
『魔界村』は第1作の誕生後、『大魔界村』『超魔界村』といった続編が発売されてシリーズ化を遂げた。同じ頃に外伝の『レッドアリーマー』も誕生している。
本家の新作は、1991年発売の『超魔界村』以降、新展開が止まっていた。ようやく動きがあったのは、11年後の2002年。ゲームボーイアドバンスで『超魔界村』の移植兼リバイバル版の『超魔界村R』が発売されたことだった。そして4年後の2006年には、完全新作の『極魔界村』がPlayStation Portable向けに発売された。
前置きが長くなったが、この『極魔界村』こそが、レッドアリーマーの主人公復帰および、シリーズの再始動について考えるようになる、最初のきっかけだった。
『極魔界村』は、過去の『魔界村』シリーズで定番となっていたゲームシステムなどを刷新。(最高難易度を除いて)鎧に複数回の攻撃に耐えられる耐久度を設定、ミスからのリトライをその場に復活する形式を採用するなど、軟化が図られた。また、ぶら下がりにダッシュ、飛行といった新アクションも追加されるなど、アーサーの機動力が高められている。
そして、最大の変更点が2周目の廃止。代わりに「光のリング」なるアイテムを攻略済みステージへの再訪もこなしつつ、全33個集めきることを目指す、探索の遊びを前面に出したアクションゲームへと改めたのである。
ところが、空中制御が効かないジャンプの仕様、苛烈な敵の襲撃と罠は過去作と変わらず。なかでも敵は、鎧の耐久度を上げたことによる必要以上の難易度低下を防ぐ狙いでか、密度が上昇している。肝心の「光のリング」も、どこに隠されているかのヒントはない。そのため、右往左往を余儀なくされ、その途上で敵の猛攻や仕掛けの突破も乗り越えることも必要になる。その結果、探索の遊びと高難易度のアクションゲームの遊び、それぞれの方向性がどっちつかずな印象のゲームになってしまっていた。
その課題がいかに大きく、ユーザーからも評判がいまひとつだったのかは翌年の2007年、ステージクリア型のモードが新たに追加された『極魔界村 改』の発売が物語っている。その後、『魔界村』は再び休眠してしまうが、14年後の2021年、『帰ってきた 魔界村』なる新作を発売。
初代『魔界村』と『大魔界村』のいいところ取りをしたリブート作品との触れ込みで、ゲームシステムも伝統のステージクリア型に回帰した。だが、実は探索の遊びも形を変えて続投。「魔玉」なるアイテムをすべて集めなければ、本当のラスボスと戦えないという条件が課せられた。
この「魔玉」集めも結果的に『極魔界村』を再現してしまっている。隠し場所のヒントが皆無、残機制廃止&無限リトライ採用による難易度低下防止策としての敵の密度上昇がその一例だ。
また、「魔玉」は2周目のうちにすべて回収しきれなければ、さらに難易度の上がった3周目以降での回収を余儀なくされる。隠し場所と入手順序にも1度、ミスすることを前提としているなど、スムーズにこなせなくしているという、不可解な調整も散見される。
結局、「魔界村」は二度に渡り、探索の遊びが違和感のある形で組み込まれるに至ってしまっている。むしろ、ただでさえ難易度が高いこともあって、より疲れやすいアクションゲームへと進歩してしまっている印象だ。
こういうことが続いたからこそ、思うのである。その遊びはレッドアリーマーに任せたらどうか、と。
探索の遊びを確立させた実績を持つレッドアリーマー
もともと、「レッドアリーマー」シリーズはアクションRPG、横スクロールのアクションゲームと、見下ろし視点のフィールドを行き来するRPGのパートで構成されたゲームだ。仕組みからして、探索の遊びとは親和性が高い。
それ以前にこのシリーズ、実は探索の遊びを違和感のない形で確立させている。その遊びを確立させた作品というのが、シリーズ事実上の最終作『デモンズブレイゾン』だったのである。
前述したように、過去の「レッドアリーマー」シリーズはアクションとRPG、2つのパートを交互にこなしながら進めるゲームとなっている。
『デモンズブレイゾン』は、RPGのパートが廃止され、アクションパートに特化したゲームデザインに変更(※厳密には見下ろし視点の全体マップは存在するが、基本的には各地に点在するステージへと向かい、降り立つステージ選択画面に等しい)。
それにより、ステージクリア型アクションゲームの印象が強まった。だが、RPGパートがなくなった代わりとして、サブタイトルに冠された「紋章」なるアイテムによるレッドアリーマーの強化要素を実装。手に入れることで新たな技、アクションが使えるようになり、行動範囲が広がるという探索の遊びが楽しめるようになったのである。
ステージがそれぞれ独立しているため、いわゆる探索型アクションゲームのような地続きの構造ではない。だが、各ステージはクリア後、何度も再訪可能。なので、新たな紋章が手に入るたびに戻ってみれば、何かしらの発見がある。新しい紋章が手に入ることもあれば、レッドアリーマーの体力最大値を上げるアイテム、戦いや探索をサポートする「ポーション」を注げる「ポット」なども見つかって、より攻略がしやすくなっていくのである。
仕組みとしては、同じカプコンから1993年に発売された『ロックマンX』の探索要素に近いので、若干のオマージュにもなっている。だが、このような遊びの導入と確立もあって、『デモンズブレイゾン』はアクションゲームとしてもアクションRPGとしても魅力的な内容に仕上がっている。
そして、一連の仕組みの通りだが、目指す方向性が『極魔界村』と一緒。つまるところ『デモンズブレイゾン』は、『魔界村』というアクションゲームに探索の遊びを盛り込むに当たってのモデルケースでもあったのだ。
このような作品の存在を踏まえ、探索の遊びの導入に難儀する「魔界村」の現状を見れば考えてしまうだろう。レッドアリーマーを再登板させてはどうか、と。現にレッドアリーマーは、キャラクターとして見ても、探索要素のあるアクションゲームで強みが発揮しやすい。
手足に加え、翼を生やしているので機動力は申し分ないし、姿を変えての技やアクションなどは、人間ではない魔物ならではの違和感のなさと気持ちよさがある。あくまでも筆者個人の考えだが、探索要素のあるアクションゲームにおいて、プレイヤーキャラクターの機動力は高いことが望ましいように思う。同じところを何度も行き来したり、時には広い空間を動くこともあるからこそ、スムーズな進行を保てるようにしなければ、遊びにくくて疲れやすいゲームになりかねないためだ。
そのあたりを解決できる特徴を持つことからも、レッドアリーマーはこの上なく適任と言えるだろう。実際に『デモンズブレイゾン』がそれを実証していることも、説得力を高めているように思える。
一応、アーサーでも特徴などを思いっきり変えれば、機動力は高くできる。だが、彼のアクションは「魔界村」シリーズ特有の手触り、手ごわさを表現する象徴でもあるだけに、思いきった判断を取るのは難しいことが推察される。
現に『極魔界村』と『帰ってきた 魔界村』は、そんなアーサーのアクションが醸し出す「魔界村」らしい手触りを大事していた。そして、それがかえって探索の遊びとの親和性が低いことを示してしまっている。
ほかにもアイテムの隠し場所についてヒントを設けるなど、解決法はいくつか考えられる。だが、難易度の高いアクションゲームとして堅持しなければならない宿命(さだめ)があるとなれば、適任者に委ねるのも手ではないのだろうか。
作り方にもよるが、少なくともアーサー以上に思い切った挑戦が可能なことからも、レッドアリーマーというキャラクターは救世主となり得るように思うのである。
いまこそ、“赤き魔物”があらためてそのポテンシャルを発揮するとき?
しかし、率直に言って『デモンズブレイゾン』も、その前身の「レッドアリーマー」シリーズも、「魔界村」シリーズに比べると知名度は低い。カプコンタイトル全体で見ても、マイナーなのは否めない。そもそも、30年も新展開がないことが大きい。
とはいえ、初代『レッドアリーマー』と『デモンズブレイゾン』は2024年現在、Nintendo Switchの『ゲームボーイ Nintendo Switch Online』と、『スーパーファミコン Nintendo Switch Online』で(Online会員に限り)無料で遊べるのだが。
それに「レッドアリーマー」シリーズ、『デモンズブレイゾン』はダークファンタジーの世界観が特徴だが(特に『デモンズブレイゾン』が最もその色が濃い)、2024年現在では同じカプコンのゲームでテーマ的に被る人気作品がいくつか生まれてしまっている。
「魔界村」が『帰ってきた 魔界村』で童話風の世界観を確立するなかで、『レッドアリーマー』はダークでバイオレンスな方向に振ったとしても、そのようなカプコンタイトルは同じファンタジーの「ドラゴンズドグマ」シリーズのほか、「バイオハザード」シリーズなどとも被ってしまう。
ただ、魔物と魔物同士が争い合う設定は個性的でもあるし、「レッドアリーマー」シリーズにおいては漫画チックな世界観を採用していた。なので、そちらを選べば何らかの突破口は作れるのかもしれない。それでも実態としては、知名度の低さが足かせになると思われるが。
しかし、「魔界村」シリーズが探索の遊びに難儀するこのごろ、レッドアリーマーが再登板する意義はゆるやかに高まってきている。それどころか、『デモンズブレイゾン』がある意味、カウンター的な存在にもなりつつある感じだ。
これから「魔界村」がどんな未来を紡いでいくかは分からない。だが、今後も探索の遊びを求めたくても思いきれない事情があるならば、いま一度、“赤き魔物”の力を借りてみるのはどうだろうか。
探索型のアクションゲームがインディーゲーム界隈を中心に賑わう昨今から見ても、レッドアリーマーが提唱する遊びは個性的で、異彩を放つものになるように思う。最後の主演からだいぶ時間が経ってしまっているが、いつか、ダークヒーローとしてのレッドアリーマーのカムバックを待ちたいところだ。
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