そこには「Revenge(雪辱)」の意味もあった? 移植であり新作でもあった傑作『超魔界村R』の揺るぎない価値
2001年3月、任天堂から発売された携帯ゲーム機『ゲームボーイアドバンス』。『逆転裁判』、『ロックマンエグゼ』といったいまなお根強い人気を誇る名作が誕生したことで知られるこのゲーム機にはもうひとつ、象徴的な話題があった。
それは1990年発売の家庭用ゲーム機『スーパーファミコン』で誕生したゲームの移植作品が数多く発売されたことである。
元々、移植を可能にし得る性能を持つためか、スーパーファミコンからの移植タイトルは任天堂も含む、多くのメーカーから発売された。前述の『逆転裁判』、『ロックマンエグゼ』を発売したカプコンも同じで、完全新作と並行しつつ様々な移植タイトルを出している。
そのひとつ、『超魔界村R』はちょうど7月19日で発売から20年を迎える。20年前の7月19日というと、当時の任天堂の主力家庭用ゲーム機『ニンテンドー ゲームキューブ』向けのマリオシリーズ最新作、『スーパーマリオサンシャイン』が発売された日でもある。
(事実上)その影に隠れるかのように発売された『超魔界村R』は、もしかすると2015年になってWiiUで配信されたバーチャルコンソール版で、初めてその存在を知ったという人も少なくないかもしれない。
そんな『超魔界村R』だが、数あるスーパーファミコンの移植タイトルの中でも見所の多い傑作のひとつである。同時にオリジナルのスーパーファミコン版にはない要素の存在から、これからも独自の価値を保ち続けるタイトルでもあるのだ。
新たな遊び方で楽しめる独自要素をプラスした『超魔界村』
『超魔界村R』の話題に入る前に、元となった『超魔界村』について紹介しよう。『超魔界村』は、1991年にスーパーファミコン向けに発売された横スクロールアクションゲーム。カプコンの数ある看板タイトルのひとつ、『魔界村』シリーズの3作目である。
初代『魔界村』、2作目の『大魔界村』はいずれもアーケードゲームとして最初に誕生。その後に『ファミリーコンピュータ(ファミコン)』、『メガドライブ』といった家庭用ゲーム機へと移植される流れを辿ってきた。
『超魔界村』はシリーズ初の家庭用ゲーム機向けの完全新作として誕生した。それもあってか、2022年の『超魔界村R』発売まではアーケード版もなければ、スーパーファミコン以外のゲーム機へ移植されることもない、ある意味稀少な作品でもあった。
基本的な内容は前2作を踏襲した「ステージクリア型の横スクロールアクションゲーム」。特に見た目は2作目の『大魔界村』の面影を漂わせている感じだが、前作にあった上下方向にショットを撃てるアクションは廃止となり、その代わりに2回連続でジャンプできる「2段ジャンプ」が追加され、大胆な立ち回りが可能になった。
また、主人公「アーサー」がまとう鎧も「銅」、「青銅」、「黄金」の3種類になったほか、「盾」なる防御兼魔法攻撃補助用の新アイテムが追加されている。さらに映像と音響、演出周りもスーパーファミコンで制作されたのに伴って著しくパワーアップ。全体的には順当かつ真っ当な進化に徹した新作に完成されている。
なお、ランダム性のある硬派な難易度、2周を前提とする本編の構成も前2作を踏襲。家庭用ゲーム機専用になろうとも、プレイヤーの根気を試すかのようなバランス調整は変わらずであり、”激ムズアクション純血種”としての本領を発揮していた感じだ。
『超魔界村R』はそんな『超魔界村』を忠実に移植した作品である。ゲームボーイアドバンスの液晶解像度を踏まえた画面スケールの調整、音源の違いに伴う楽曲の微かなアレンジこそされているが、それ以外はオリジナルそのまま。いわゆるベタ移植となっている。
これだけだと携帯ゲーム機で遊べる『超魔界村』にすぎない。だが、本作を本作たらしめる大きな独自要素が存在する。「アレンジモード」だ。
『超魔界村R』にはスーパーファミコン版を忠実に再現した「オリジナルモード」に加え、「アレンジモード」なる新モードが追加されている。その名の通り、ゲームボーイアドバンス移植に当たっての独自アレンジを施したゲームモードで、スーパーファミコン版とはひと味もふた味も異なる『超魔界村』が楽しめる内容に仕上げられている。
とりわけ注目はこのモード限定のステージ分岐システムだ。
各ステージをクリアした時の鎧の状態に応じて、最大3ルートのステージの中からひとつを選んで進めていけるのだ。選べる3ルートは「『超魔界村』の通常ステージ」、「アレンジステージ」、そして「『超魔界村』の高難易度ステージ」。
最も際立っているのが「アレンジステージ」。なんとスーパーファミコン版にはない『超魔界村R』だけの新しいステージである。
いずれも『魔界村』、『大魔界村』に登場したステージを『超魔界村』仕様に改めたリメイクで、登場する敵やボスもそちらから出張した面子が混ざった構成になっている。
しかも、アレンジステージのひとつには完全な新規ステージも用意。当然、ステージ最後に対決するボスも本作初登場の個体で、ここに限って見れば、新作同然になっている。ちなみに『魔界村』、『大魔界村』をアレンジしたステージにも1体だけ、「レッドアリーマー・ジョーカー」なる新しいボスが追加されていたりする。
また、「アレンジモード」には2周目もない。1周目の時点で最終ステージの突入に必要な武器が手に入るのに加えて、仮に入手できないまま前座のステージをクリアしてもステージ1に戻されることがない。そのまま前座ステージからのやり直しになるのだ。(オリジナル『超魔界村』の2周目と同じ仕様になっている)
それでも、基本的な難しさは変わらないのだが、最初のステージに戻されることによる精神的な負担もなく、最終ステージへの突入に挑戦できる点で、相当に遊びやすくなっているというのは明らかだろう。
こうしたゲームモードの存在もあって、『超魔界村R』は単なる移植の枠に収まらない魅力と見所を備えた作品に完成されている。特に完全新規ステージの存在は大きく、ほとんど『魔界村』シリーズの新作と言ってもいいぐらいである。