2000円でゲットした70年前の二眼レフ「Ricohflex」がよく写る 専用アクセサリで35mmフィルムも装填可能

70年前の二眼レフ「Ricohflex」を試してみる

 今年の頭、世田谷ボロ市で見つけた二眼レフ『Ricohflex(リコーフレックス)』。手にとるとシャッターは切れるし絞りも回る。はじめはピントリングが全く回らなかったのだが(固着というやつだ)、変に傷んだ部分もなく、リングさえ回るようになれば使えそうだと2000円で購入。暖かい室内でゴリゴリ回していたら中のグリスが溶けたのか、無事にピントも回るようになった。

  筆者が購入したのは『Ricohflex Model VII』。1954年ごろに大衆機として大量生産された品らしく、なんと70年前のカメラである。設計が簡単で安価、目測ではなくきちんとピントが合うカメラとして、当時一般大衆に大変売れたらしい。

フタを開けるとカメラ本体の作りはとてもシンプルで、中身はまさに黒い箱

 上のレンズはビューレンズといい、目で見たものをとらえるレンズ。下のレンズはテイクレンズといい、フィルムに像を結ぶためのレンズだ。上部のフタを開き、中のすりガラスを見ながらピントレンズを回してフォーカスを定める。

上部のフタを開けるとビューレンズに光が入る

 ファインダーに映る像が左右反転するのが二眼レフの特徴だ。一眼レフでは映る像をプリズムやミラーで2度反射させるのでこういうことは起こらない。

撮影の様子。ファインダーに映る像が左右反転している

 このカメラは中判カメラなので、現代の一般的な(といってもフィルムを日常的に買う人はもう、ほとんどいないだろうが)35ミリフィルムではなく、中判のいわゆる「ブローニーフィルム」を使用する。本体からフィルム室を分離し、下部にフィルムをセット、上部のスプールにフィルムの先を刺し、巻き上げダイヤルを巻いていく。うまく巻き始められたら、本体のフタを閉じる。

本体のフタを閉じたら本体背面の窓(通称「赤窓」という)を開き、「1」と表示されるまでフィルムを巻き上げていく。感光が怖いので、巻き上げるとき以外は赤窓を閉めておこう。

 さて、これで撮影準備が整った。シャッタースピードは最速1/100、開放F値は3.5。シャッター速度が全く稼げないので、夏の強い日光のもとで撮るならフィルムのISO感度を落とした方がいいだろう。

 70年前のカメラなので、露出計はおろか電気で動く機構がまったく存在しない。私は結構カンで撮ってしまうのだが、慣れないうちは別途露出計を使うか、スマートフォンアプリなどで適正露出を導き出して撮影するといいだろう。ちなみに撮影時には本体を首にかけ、少しテンションを張りながら撮影するとブレにくい。なお、Ricohflexはストラップを取り付ける部分が珍しい形をしており、普通のカメラストラップを装着するのは難しい。エレキギターのストラップと機構が似ているので、私は子ども用のギターストラップを装着している。

 12枚の撮影を終えたらフィルムの取り出しだ。巻き上げダイヤルを回しているとやがて巻き心地が軽くなるので、そうしたらフタを開ける。上部スプールに巻き取られたフィルムをテープで留める。このとき、フィルムに光が当たると感光してしまうので注意が必要。できるかぎり室内の暗いところでやりたい作業だ。

 ちなみにフィルム室の下部に残ったスプールは次にフィルムを装填するときに使うので、フィルム室の上部にセットする。「ジャンクで買ってきた二眼レフにスプールが入っていない!」というときは、写真屋さんに相談すると譲ってもらえるかもしれない。

 現像が上がったが、写りはまったく問題なく、感光もピントの外しもない……というより想像以上の描写に驚いてしまった。中判フィルムは35mmフィルムよりもずっと大きいので同サイズに引き伸ばすと画質の面で優位があり、体感でも撮影していて光の描写に余裕があると感じる。

 ちなみにシャッター機構とフィルムの巻き上げ機構が完全に独立しているため、巻き上げ忘れるとすぐに多重露光をしてしまうのはご愛嬌。これを防ぐには「撮ってから巻く」のか、「巻いてから撮る」のかをあらかじめ決めておくこと。声に出して「撮った!」「巻いた!」と言うのが意外と有効。

撮影時に「多重露光したっぽいな〜」と思うときは大体していた。声に出して確認したい

 さて、大満足ではあるのだが、中判フィルムは35ミリよりも現像費がかさんでしまうし、現像に時間もかかる。「Ricohflexで35ミリフィルムが使えたらな〜」なんて思いながらWEBを調べていたら、なんと「Ricohflexで35ミリフィルムを使えるアタッチメント」が存在するらしい。名前を「Ricohkin(リコーキン)」という。

 35ミリフィルムはもともと映画撮影用のフィルム(シネフィルム)だったので、「Ricoh+Kino(ドイツ語で"映画"の意)」でRicohkinというわけ。ちなみに元ネタはドイツ・ローライ社の二眼レフ「Rolleiflex(ローライフレックス)」用の「Rolleikin(ローライキン)」に由来する。本体の名前もアタッチメントの名前も、ちょっとローライの真似をしすぎなところに時代を感じる。

 「Ricohkin」の存在を知ってからヤフオクなどに張り付くも、マニアックなアタッチメントなので出物が少ない。「欲しいな〜」と思いながら日々を過ごしていたら、ある日家の一番近くのカメラ屋にいきなり入荷したのでギョッとした。定期観測は大事である。価格は8000円。アタッチメントの価格が本体の4倍なのはなんだか倒錯しているが、レアなのは間違いないので即決で購入。箱つきって嬉しいし……。

 さて、「リコーキン」は標準のフィルム室と入れ替えて使うものだ。フィルムをスプールで巻き取る機構のため、実際に35mmフィルムで撮影をするにはリコーキン本体の他に「使用済みの35mmフィルムのパトローネ」が必要になる。まずは使用済みパトローネから出ているフィルムを新しいフィルムとテープで貼り合わせて装填する。

 ちなみにこの使用済みパトローネ、私は自家現像をしている友人にもらったが、普通はそんな友達はいないだろうし、こんなものどうやって手に入れるのが最適なのかはわからない。期限切れのフィルムを買って加工するなど安く済ませる方法はあるが、スプールしかり、パトローネしかり、値段のつかないものほど手に入れるのが難しいと感じる。

貼り合わせたフィルム、Ricohkin、Ricohflex。こうして向きを揃えて作業するとフィルムの入れ違いを防げる

本体上部に使用済みパトローネを、下部に未使用フィルムを装填し、側面のロックを操作してフィルムが動かないようにセットすればOK
最後にフィルムを抑える金具を装着したら装填準備は完了

 通常の撮影との違いは3つあり、1つは「巻き上げダイヤルが1回巻くごとにロックされること」。巻いてシャッターを切ったら巻き上げダイヤルを横に引くと、ロックが解除されてまた巻き上げられる。もう1つは「撮影枚数を赤窓から見られないこと」だ。35mmフィルムはブローニーフィルムと違い裏紙がないので、赤窓から枚数をカウントできない(ちなみにRicofkinで撮影している際には赤窓は使わないので、開かないようにテープを貼っておくと良い)。これについてはリコーキンに専用のダイヤルがついており、標準のダイヤルと取り替えることで撮影枚数をカウントできるようになる……のだが、私のRicohflexはここのネジが完全に固まっており着脱不可能だったので、マスキングテープに数字を書いた。

マスキングテープに線を書いて貼り、フィルムカウンターノブとした

 そして3つ目は「写真が縦長になること」だ。ブローニーフィルムの絵は正方形でファインダーに写る像とほぼ同じものが撮影されるが、35mmフィルムでの撮影は縦長になる。すりガラスのファインダーにも35mmフィルム装填時の撮影範囲に線が引いてあるのでそれを見ながら構図を決めれば安心だ。

Ricoflexのファインダーを覗いた図。中央の四角の中が35mmフィルム装填時の撮影範囲だ

 規定枚数の撮影を終えたら無理に巻き上げず、フィルムを取り出す。上部に巻き取られたフィルムを取り出し、ハサミで切る。パトローネに記載のフィルムと中に入っているフィルムが異なるため、現像に出す時はその旨を伝えること。また、「テープ留め」であることも必ず伝える必要がある。35mmフィルムでの撮影結果は以下のようになった。

 こちらも非常によく写っている。撮影にレンズの中心しか使わないことも、描写がよい理由かもしれない。レンズの光学性能は中心ほど高いからだ。種類も豊富な35mmフィルムをRicohflexで扱えるのはうれしい。

 今回は2000円で買った70年前のカメラで撮影を行った。とても古い、しかも当時の大衆機であることから描写にはあまり期待していなかったが、とても良く写るカメラだったので驚いた。二眼レフは見た目もユニークで、特有の大きなファインダで行う撮影行為も楽しい。この経過を横で見ていた友人も私に触発されて二眼レフを買っていた。フィルムカメラも流行しているというし、この流れで70年ぶりの二眼レフブームが来るかも……?

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる