世界から大きく水をあけられた日本のライブコマース市場、その課題を突破する方法とは? 17LIVE・事業責任者に聞く“越境EC”の可能性
越境EC成功の鍵は“現地パートナーとの信頼構築” グローバル企業の強みを活かして
ーー新サービス「HandsUP Crossborder」で越境ECに本格参入することとなりましたが、実際にプロジェクトを進めてみていかがですか?
村井:まずは国によって異なる取引ルールを学ぶことが必要で、加えてそれぞれの国の現地パートナーの開拓も必須なので、グローバルでの事業開発やプロダクト開発は結構大変でしたね。当然売れる商品のカテゴリーや価格帯、売り方もすべて違うので、短時間で各市場について学ばないといけなくて。でも逆に言えば、大変だからこそ誰もやらない。参入障壁になりますから、我々がやることに付加価値があると感じていました。
ーー17LIVEはすでにグローバルなサービス展開をしているので、越境ECも進めやすかったのではないでしょうか?
村井:台湾に関して言えば、本当にそうですね。台湾でもライブコマースのサービスを展開しているのですが、システムが存在していたり、既に関係値のあるKOL(※)に商品を販売してもらったりするプロセスが出来上がっていたので、現地パートナーと日本のクライアントさんを結びつけることは、スムーズに行えました。
(※)KOL:Key Opinion Leader(キーオピオニオンリーダー)=専門性をもったインフルエンサー
ーー台湾以外での展開は、いかがでしょうか?
村井:まずは東南アジアを中心に展開を考えていますが、まだまだこれから乗り越えないといけないことがたくさんあります。台湾は送料が安くて、1人当たりのGDPも高く、それなりの単価でも販売できます。しかし、一例としてベトナムでは、まだ同様の状況ではありません。物流も整っていないので、シンガポールを経由しないといけない分、送料が2倍かかるんです。既にいくつかの国ではパートナー候補との取り組みの議論を継続的に進めています。
ーーそれは大きな課題ですね。越境ECとライブコマースが生み出すシナジーについては、どう考えていますか?
村井:日本の企業さんが越境ECを始めるなら、ソーシャルECはかなり取り組んでいただきやすいと思っています。たとえば台湾のECプラットフォームに自分たちで出店しようとすると、運用してくれる現地のパートナーを探す必要がありますし、広告費も含めると立ち上げ時から月に100万円以上かかる場合があります。対して「HandsUP Crossborder」なら、月額98,000円の出店費用で、無数にいるKOLにアプローチできます。彼らはすでに販売力を持っているので、ある程度は売れる可能性が高いところが、我々の強みですね。マーケティング以降のプロセスをすべて任せられるので、自分たちでやるよりよほど楽だと思います。
ーーいまこのタイミングで、日本の企業が越境ECに取り組むメリットはありますか?
村井:まさにいまがちょうどいいタイミングだと思います。日本のEC市場が伸びていないですからね。国内の顧客はすでに取り切ってしまったから、もう海外しかないと考えるクライアントさんは多いです。さらに近年のDtoCブームもあって、顧客獲得単価が年々上昇し、そこに昨今の円安が加わるなど、多くの企業が市場環境に苦しんでいるので、我々はこの辺りの課題を解決したいと思っています。
ーー国によってそれぞれルールが異なるなかで、現地パートナーと連携をとっていて、既に販路を構築しているところも17LIVEの強みとなりそうですね。
村井:我々にとっての1番の肝は、現地のパートナー企業と、その先にいるKOLとしっかり信頼関係を構築することですからね。台湾にしても他の国にしても、日々かなり密なコミュニケーションを取っていて、すべてのステークホルダーが高い信頼関係で結ばれているからこそ、日本のクライアントさんにも、安心して使っていただけます。
ーー先ほど世界と日本との差についてお話しいただきましたが、今後越境ECやライブコマースをより広めていくことによって、そのギャップは埋まると思いますか?
村井:日本国内で完結するライブコマースよりも、「越境×ソーシャルコマース」の方が早い段階でそうなると考えています。まずは既にある海外のマーケットから攻めていき、並行して日本でのビジネスのさらなる成長も目指す、この両輪で進めていく予定です。
ーー日本国内だけでなく、対海外も含めての市場規模はより大きくなっていくのでしょうか?
村井:市場自体は現時点ではまだまだ大きくはありませんが、直近のお声かけの頻度や問い合わせの数を考えても、明らかにライブコマースに興味を持っている企業さんが増えたと感じます。需要はどんどん高まっていますね。先ほど話したように、国内のEC市場の伸び悩みと、顧客獲得単価の上昇があるなかで、次の一手として明確に期待されている声をたくさんいただきます。
ーーまだ先の話となるかもしれませんが、これまで17LIVEはAPAC(アジア太平洋地域)を中心に開拓してきたなかで、それ以外のエリアへの展開は考えていますか?
村井:やはり北米はマーケットが大きいですから、挑戦したい領域ですね。
ーー北米に参入する企業は多いですが、散っていく企業も多いですよね。
村井:そうですね。我々の海外展開には、2つのフェーズがあると思っています。1つ目は、KOLを活用して販売促進する段階です。KOLがすでに存在するマーケットは、ある程度ソーシャルコマースが成立することが約束されていますから。仕組みが出来上がっているので、あとは我々がどれだけステークホルダー同士の連携を高めることができるかが鍵となります。
一方北米は、KOL自体が存在しない市場なので、一から販路を作らないといけません。これがセカンドフェーズですね。日本もKOLが存在しない市場なので、中途半端な取り組みでは上手くいきません。過去に多くの日本企業が散っていった要因も、ここにあると思っています。
ーー北米での明暗を分けるのは、営業の部分なんですね。もう少し短期的に、村井さん自身やチームが目指しているマイルストーンはありますか?
村井:来年には導入実績数を1000社以上に、3年で2000社を達成するのが目標です。現在の日本最大の越境ECサービスは、2000社程度に導入されていると推測しているので、これを3年で超えたいですね。
日本のEC市場がこれまで程の高い成長率は見込めない環境となるなかで、販路開拓や顧客獲得など、各企業がもつ課題を払拭できるサービスを作りたいです。2000社に導入されるということは、2000の課題を解決することだと思っています。
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