夏場のガジェットは火災・爆発に注意! 思わぬ事故を防ぐための基礎知識
外出先でスマートフォンのバッテリー残量が残り少なくなったとき活躍してくれるのがモバイルバッテリーだ。また、この季節はハンディファンを持ち歩いている人をよく見かける。
こうしたガジェットたちの中には、リチウムイオン電池と呼ばれるバッテリーが入っている。スマートフォンはもちろん、デジタルカメラやノートパソコンも同様だ。充電式のバッテリーで動く製品のほとんどにリチウムイオン電池が使用されているといっても過言ではない。私たちの周囲には意外とたくさんのリチウムイオン電池が存在しているのだ。
このように普段の生活の中に溶け込んでいるリチウム電池だが、じつは意外とデリケートで、落下させたり大きな衝撃を与えたりすると膨張や異常発熱、発煙、発火することがある。場合によっては破裂したり爆発して大きな火災に繋がったりする危険性もあるのだ。周囲の温度によって問題が生じることもあるので、特に夏場は取り扱いに注意が必要だ。
今回は「夏場のガジェット“爆発”対策」と称して、リチウムイオン電池を使った製品を取り扱う上での注意点や万が一問題が発生した時の対処法などを紹介していこう。
そもそも、なぜバッテリーは発火/爆発するのか?
本題に入る前に、簡単にリチウムイオン電池の構造を説明しよう。電池の内部は正極(+極)板と負極(−極)板、それを分けるセパレーターと間をうめる電解液で構成されている。それらをぐるぐると巻いて円筒形の筒に入れたり、折り重ねてシート状にしたものがリチウムイオン電池だ。
上記の図はペーパーモデルを使ったリチウムイオン電池の内部構造を概略化したものだ。+極(赤色)と−極(水色)の間をセパレーター(黄色)で絶縁している。
これを丸めて円柱形のケースに収めたものがセルと呼ばれるものだ。そのほかにも重ねたり折りたたんだりして角形のケースに収納したものや平たい状態にパウチしたセルもある。
リチウムイオン電池はその性質上、使っていくと劣化して内部にガスが発生する。これが膨張の原因になる。さらに膨張したことで内部が圧迫されセパレーターが損傷すると+極と−極がショートして発煙や発火、破裂といった事故に繋がる恐れがある。
事故を起こさない為の対策は?
モバイルバッテリーやハンディファンは手に持ったり、顔や首の近くで使うことも多い製品だ。それゆえ、前述したような事故が起こってしまうと大きなケガに繋がる危険性もある。では、どうすればそのような危険を防げるのだろうか?
まずひとつ目は、乱暴に扱わないことだ。リチウムイオン電池を搭載したハンディファンやモバイルバッテリーを落下させると内蔵しているリチウムイオン電池に衝撃が伝わり、セパレータの損傷からショート、発煙や発火、破裂につながる場合がある。また、薄型のモバイルバッテリーをズボンのポケットに入れたまま座ったりすると内部のリチウムイオン電池が損傷する可能性があるので注意しよう。
もうひとつは、熱い場所に放置しないこと。モバイルバッテリーの使用/保管時の温度範囲を見ると、使用温度範囲は0℃〜40℃、保管温度範囲は-20℃〜45℃となっているものが多い。普通に使っている分には問題ないが、自動車のダッシュボードや車内に放置するのは絶対に避けよう。
また、アウトドアの炎天下も特に夏場は注意したい。室内でも直射日光が差し込む窓際に放置するのは避けよう。ガジェット製品は黒色の製品も多く、太陽からの熱を吸収してしまうので、できれば日陰やある程度涼しい場所に置いておきたい。
それから、水気や高湿度を避けることも大切だ。モバイルバッテリーを水に濡らしたり、浴室など高湿度の場所で使うのは避けよう。サウナの中などはもってのほかだ。プールサイドや海辺などでの使用にも注意しよう。温度ももちろんだが、感電や水没から破損・ショートして発火してしまう危険性もある。
危険を示すサインは?
使っているガジェットが破損しているかを見分けるのは一目では難しいことも多い。だが、明らかに膨張している場合は使用を避けたほうがよいだろう。
劣化が進むと内部に発生したガスが溜まりバッテリー自体が膨張する。乾電池に似た円筒型のバッテリーだと目立たないが、シート状の構造だと膨張したことで外装が膨れたり、破損したりする場合が多い。スマートフォンが膨らんで継ぎ目の部分に大きな隙間が生じたり、ノートパソコンが膨らんでキーボード部分が盛り上がったりしたら内部のリチウムイオン電池が膨張している証拠だ。
また、異常な発熱も危険のサインだ。バッテリーの性質上、充電中はある程度の発熱が見られるが、手に持てないほど異常な過熱をしたり、使用中に過度の発熱がしたら要注意だ。速やかに充電や機器の使用をやめよう。
膨張したり発熱・発煙したバッテリーはどうすればよい?
異常な発熱、発煙を察知した場合はどのようにすればよいだろうか。簡単なのは金属製のバケツなどの不燃容器に密封することだ。発火した場合の延焼を抑えるため金属製のバケツに入れ、フタをしてアルミテープで固定する。フタの固定がしっかりできれば燃えない素材の重しを乗せてもよい。また、金属製のバケツがなくても家庭にある金属鍋や土鍋などでも対処できる。
また、あわてて水をかけるのは絶対にダメ! 発煙や発火しても水をかけるのは絶対にやめよう。水とリチウムが反応して激しく発煙・発火が進んでしまう。水槽や浴槽など、大量の水に沈めるのはアリだが、中途半端な量では逆に危険なので、基本的には水に触れないよう金属鍋や土鍋などで対処するのがベターだろう。
そして何より大切なことだが、もし延焼しそうなときは、迷わず119番に電話をすること。消化には電気火災(C火災)用の消火器が必要なので、専門知識を持つ消防に助けを求めよう。
トラブルを避けるために安全性の高い製品を使う
最後に、ここまで紹介してきたようなトラブルを避けるための心構えについても触れておこう。まずひとつは、こうしたガジェット製品を購入する際は純正品を選ぶことだ。
デジカメやデジタル機器などのバッテリーは特に、純正品を購入したい。安価だからといって信頼性の低い互換製品を使うと、機器の故障だけでなくバッテリーのトラブルに繋がる恐れがある。
また、安全基準に適合した製品を使うことも大切だ。製品を購入する際はなるべく高品質で安全性の高いものを選ぼう。「電気用品安全法」で規定された検査基準に適合した製品には「PSE」マークが付いている。
PSEマークのないバッテリーやモバイルバッテリーの購入や使用は基準を満たしていない可能性もあり、危険だ。特に海外からの並行輸入品はこうした検査を受けていないものもあるので、なるべく避けよう。