思い出を鮮明に残すために 空間ビデオ撮影に振り切った新たなるデバイス XREAL『Beam Pro』という選択肢

空間ビデオ撮影に振り切った『Beam Pro』

 ARグラスを手掛けるXREALから、極めてユニークなデバイス『Beam Pro』が発表された。その存在目的は、同社のARグラスを使った空間ビデオの視聴と、空間ビデオの撮影をよりシンプルにするためだ。

 こちらが『Beam Pro』だが、見た目はAndroidのスマホとほとんど変わらない。Wi-Fi接続やGoogle Playストアも利用可能で、「Androidスマホとどう違うの?」と感じることだろう。

ARグラスを引き立てるコンパニオン的デバイス

 『Beam Pro』の紹介をする前に、XREALが手掛けているARグラスについて軽く触れておこう。同社からは記事執筆時点で『Air 2 Ultra』『Air 2 Pro』『Air』の3種類のARグラスが発売されている。

 そもそもARグラスとは何か。いわゆるスマートグラスの一種で、メガネあるいサングラスのかたちをしたウェアラブルガジェットだ。VRゴーグルとはよく比較されるが、VRほど没入感が得られないかわりに、装着が簡単で価格も手頃となる。

 上の写真は『Air 2 Pro』。やや大きめのサングラスといった佇まいで、VRゴーグルほど大仰なサイズ感ではないことがわかるだろう。この見た目なら自宅の中だけでなく、電車や屋外でも利用できる。有線接続でスマホを繋いで、スマホの画面をミラーリングできる。

 レンズの内側部分に小さなスクリーンが配置されており、ここに映像が投影されることで大画面かつ現実世界に重なるような情報表示ができる仕組みだ。『Air 2 Pro』の場合は最大330インチもの超大画面で映像を楽しむことができる。また、両目で映像を見るため立体的な3D映像を見ることも可能だ。

 そして3D映像で最近注目されているのが、Appleが提唱している空間ビデオだ。iPhone 15 ProもしくはApple Vision Proを使うと空間ビデオの撮影が可能だが、ネックなのはその値段。iPhone 15 Proは約16万円から、6月末に日本でも発売されるApple Vision Proは約60万円と、価格面でのハードルはかなり高い。

 もっと手頃に空間ビデオというコンテンツを楽しめないものか。そのアンサーのひとつとなるのが、今回発表された『Beam Pro』というわけだ。

人の目を模したレンズ距離

 改めて『Beam Pro』を見てみると、背面カメラのレンズ間距離が離れているのがわかる。あえてレンズの距離を離すことで、より立体感のある空間ビデオを撮影するための設計だ。

 『iPhone 15 Pro』の背面カメラと比較してみると、レンズの距離感が大きく違うことがわかるだろう。『Beam Pro』はふたつのレンズの焦点距離やf値を同じにしているため、より鮮明な空間ビデオの撮影を可能としている。iPhone 15 Proも背面カメラで空間ビデオの撮影が可能だが、それぞれのレンズは焦点距離やf値が異なるため、左右のバランスに歪みが出てしまうとのこと。

 『Beam Pro』が目指したのは人の目が見るような自然な立体映像で、レンズの距離も左右の目の距離感を意識している。一般的なスマホであれば、レンズ同士が離れてしまうと撮影感が異なり不便に感じてしまうだろう。これもまた『Beam Pro』がスマホとは異なる立ち位置となる所以といえる。

   
 空間ビデオを撮影する場合は、通常のスマホカメラを撮影するように操作すればOK。撮影した空間ビデオあるいは空間写真は、上述したARグラスで視聴できる。
 『Beam Pro』の側面。オレンジのボタンは撮影ボタンで、押すとカメラアプリが立ち上がり素早く空間ビデオの撮影が可能だ。音量ボタンや電源ボタンといった見慣れた機能も備えている。
 底面にはUSB Type-C端子が2系統用意されている。左側は充電に使う端子で、右側はARグラスを接続する端子だ。スピーカーも内蔵している。

 連携させているARグラスの状態はアプリからも設定可能。このあたりの使い心地はスマホそのものだが、ARグラスや空間ビデオを楽しむための相棒としてスマホという見慣れた形状を選んでいる、と捉えることもできる。ちなみにOSはAndroid 14が採用され、SoCにはSnapdragon Spatial Companion Processorが採用されている。

 実際に『Beam Pro』で撮影した空間ビデオを視聴した感想だが、かなり立体感を強く感じた。筆者はApple Vision Proの空間ビデオも視聴したことがあるが、奥行き感に関しては『Beam Pro』の方が自然に感じた。一方で空間ビデオへの没入感についてはApple Vision Proが勝っており、ゴーグル型とサングラス型の構造的差異が出てしまっているといえる。

気軽に空間ビデオにアプローチ

 空間ビデオを見るには、ARグラスや『Apple Vision Pro』、あるいはMetaの「Quest」シリーズといった専用のデバイスが必要となる。いずれも現状の普及率は高いとは言えないが、そんな空間ビデオに存在意義はあるのだろうか?とも思う。

 筆者が初めてApple Vision Proで空間ビデオを視聴したときは、その臨場感や「現場にいる感」に心を揺さぶられた。もし、これからの人生で経験する出来事を空間ビデオで撮影しておけば、スマホ動画以上のリアリティを伴って振り返ることができるのは間違いないだろう。

 XREALは『Beam Pro』で空間ビデオの撮影手段を提供しつつ、既存のARグラスで鑑賞手段も提供する、という布陣だ。それに、『Beam Pro』は空間ビデオを撮影するデバイスとして、現状は世界最安のデバイスでもある。

 『Beam Pro』の価格は、RAM6GB/ストレージ128GBモデルが3万2980円、RAM8GB/ストレージ256GBモデルが3万9980円。ARグラスの『Air 2 Pro』が約6万円のため、合計10万円前後で空間ビデオの撮影も視聴も可能となる。

 「VRデバイスは没入感が高い一方で装着ハードルも高くなります。一方でMeta社のRay-Ban Meta Smart Glassesなどは普通のメガネと同じように1日中着けていられます。我々のプロダクトはそれらの中間的な存在と言え、豊かなコンテンツとポケットサイズの手軽な操作性が特徴です。これからの時代は、ユーザーがご自身のフェーズに合わせてこれらのデバイスを選んでいくようになるのではないかと考えています」

 ARコンテンツの未来について、XREALのプロダクトマネージャー・高天夫氏はこのように語ってくれた。現状ではARグラスも空間ビデオもニッチな存在に留まっているが、独自の魅力に気づいた人が増えてくれば、次世代のコンテンツ視聴方法として珍しいものではなくなってくるかもしれない。ユーザーが撮影する思い出は、決して色褪せないコンテンツなのだから。

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