マイクロソフトがPCの新カテゴリ「Copilot+PC」を発表 発展する「AIPC」の最新形とは

マイクロソフトが「Copilot+PC」を発表

 日本マイクロソフトは「Copilot+PC発売記者説明会」を開催、同社の新しいカテゴリである「Copilot+PC」製品の発売をアナウンスした。

 Copilot+PCは「AI機能を快適に使えるノートPC」に対してマイクロソフトが独自に付与するカテゴリであり、高速なNPU(Neural Processing unit)とそれに最適化されたOSによって実現するという。またマイクロソフトはCopilot+PCとして第11世代の「Surface Pro」と「Surface Laptop」をあわせて発表。各PCメーカーのCopilot+PCも含め、日本では順次展開となる。

 発表会には日本マイクロソフト執行役員の竹内氏が登壇し、Copilot+PCの概要を解説した。NPUの採用とOSの最適化という、コンピューティングの”土台”を再創造することでプラットフォームの変革をおこなったという。


 「これらのふたつの再創造により、次世代のアプリケーションと新しいユーザ体験を届けることが可能になりました。そしてユーザ体験の再創造はMicrosoft Copilotからスタートします」と宣言。

 Microsoft Copilotは昨年9月に発表されたチャットAIであり、OpenAIのChatGPTをベースに開発・提供されている。ChatGPTよりも自然な会話、多様なトピックへ対応するほか、マイクロソフトの各種サービスと操作性が統合されているところが特長だ。

 「Copilotはアプリやブラウザ、Officeスイート、Windowsなどから簡単に呼び出すことができます。いつでも使えるAIアシスタントとして、ユーザの目的を達成できるように機能拡張を行ってきました」

 これまでこうしたAIの施策については特にクラウド上のAI体験に力を注いできたが、これをさらに広げていくためには、PC上にAI体験を分散することが必要だと竹内氏は続ける。マイクロソフトが描く最高のAI体験はクラウド上の体験とPC上のAI機能が融合することで初めて実現するという。

 「この両方がうまく機能することにより、新しいシリコンをフルに活用し、低電力でスピードが速い、最高のAI体験をパソコン上で実現できます。Copilot+PCはハードウェア・ソフトウェア、全てにわたってAIを最大限に活用できるようチューニングされています。そしてこれらを迅速に 皆様のお手元にお届けできるよう、 パートナーエコシステム全体でこのAIの波を盛り上げてまいります」

 Copilot+PCの発表後、続いて登壇したのはモダンライフ戦略本部の小澤氏。マイクロソフトはこれまで「Windows Studioエフェクト」「Copilot in Windows」「Copilotキーの追加」など、Copilot機能にまつわる革新を続け、Windows 11のユーザ体験をより良いものにするため、AI機能を強化し続けてきた。そのなかでもCopilot+PCはこれまでで最も速く、最も高性能なWindowsPCであるという。


 「Copilot+PCはCPU、GPU、そしてNPUを搭載した 新しいシステムアーキテクチャを採用しています。パフォーマンス、バッテリーを最適化するため、Windows11自体も新しい最低ハードウェア要件に基づいて再設計しています。結果として、5年前のPCと比較すれば最大5倍、1日最大22時間ビデオを再生できるようになりました。さらに、Copilot+PCに搭載されるNPUの性能は40TOPS(毎秒40兆回)以上を誇り、これにより新しいAI体験を実現することができるのです」

 また、具体的に純正アプリケーションによるAI処理のデモンストレーションも行われた。「リコール(Recall)機能」は自分が過去に画面で作業した内容を呼び起こせるもので、言葉で問いかけるだけで探したい情報にたどり着くことができる。

 「私たちのデータによると、人は一週間で平均5時間、PC上で物を探し続けているそうです。リコール機能を使えば、同僚や友人にチャットするようなスタイルで何万ものファイル、あるいは過去に見たウェブページから、瞬時に見つけたいものを探すことができます」

 なお「リコール(Recall)機能」はデフォルトではオフになっており、ユーザ自身の手で音にする必要がある。またこの機能を使うにはWindows Helloへの登録が必須となっており、PC の前に物理的にユーザー本人がいることを確認するステップが追加されているという。
「イメージクリエイター」の機能は「フォト」アプリの中にあり、自然言語で作りたい画像イメージをプロンプトに入力することで 新しい画像を作り出せる。創造性の強度を調整するスライダーも備わっており、さまざまなアイディアを形にできるものだ。Copilot+PCではオフライン上で何枚もの画像を生成できる。

 続いて紹介された「コクリエイター」の機能は「イメージクリエイター」のスケッチ版のような機能で「ペイント」のアプリに実装されている。プロンプトに入力した言葉と手書きのスケッチを組み合わせてAIがイメージを生成してくれる機能だ。スケッチのスタイルも「水彩画」「ペンスケッチ」など複数の中から選ぶ事が可能だ。

 また、インカメラでビデオ通話を行う場合などには「Windows Studio Effect」の機能が役立つ。「ポートレートライト」「背景ぼかし」などの機能をワンタッチで適応できる。
「ライブキャプション」の機能ではPCから出力されるすべてのオーディオをすべてのアプリケーションで英語字幕に変換、リアルタイムで画面上に表示できる。あらゆるアプリやビデオプラットフォームにおいて40種を超える言語のライブまたは録音済みの音声を瞬時に、自動的に英語字幕に翻訳可能だ。

 こうした機能を快適に使えるCopilot+PCとしてマイクロソフトは新たな世代のSurfaceを発表。ソリューションエンジニアリング本部の水田氏から「Surface Pro」「Surface Laptop」の最新アイテムの紹介がおこなわれた。


 「Windowsによる最高の体験を体現すべく、マイクロソフトがWindowsと並行して設計開発をしているのがSurfaceです。SurfaceはつねにPCのイノベーションをリードし続けてきました」

 「Surface Laptop」の新モデルでは全機種よりもさらにベゼルが薄くなり、バッテリの持続時間は15インチで脅威の22時間、13.8インチで20時間を実現するという。

 「Surface Pro」の新モデルは上位機種のディスプレイにOLEDを採用、背面カメラは4Kビデオに対応した。またこれまでのキーボードに加えて本体から外してもシームレスにそのまま使い続けられる「Flexキーボード」が登場した。


 いずれのモデルもシリコンにはクアルコムの「Snapdragon X Elite・Snapdragon X Plus」を採用。現状販売されているシリコンの中でNPUの性能が40TOPSを超えるノートPC用のシリコンは同製品のみであり、「Copilot+PC」の第一弾はすべてのモデルがSnapdragon X Elite/Plusのいずれかを搭載するARM版WindowsPCである。6月18日以降、Acer,ASUS、デル・テクノロジーズ、HP、Lenovoといったメーカーからも順次Copilot+PCが発売されるほか、インテル、AMDなどのシリコンメーカーも今年上半期にはCopilot+PCに適合するシリコンを出荷する予定だ。

Copilotボタンは“Netflixボタン”のようになれるか? AIの爆発的普及を予感させる2024年への期待

リアルサウンドテック編集部による連載「エンタメとテクノロジーの隙間から」。ガジェットやテクノロジー、ゲームにYouTubeやTi…

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる