現役大学生がメタバースを初体験 取材を通して感じた、バーチャルで働くことの可能性

現役大学生が初めてのVR体験で感じたこと

バーチャルの世界ではたらく彼女たちの「新たな夢」

 続いてはワールドに設置されたペンを使って「空間への落書き」を体験。コントローラーのグリップボタンを押すとペンを持つことができ、空間に文字やイラストをかくことができる。自分のかいた文字や絵は空間に描かれ、立体として存在するため、見る角度によって見え方が異なる。あらためて、平面という概念が存在しない世界であることを実感する。VR上には、この落書き機能を用いて作品を制作している人もいるようだ。

 こんぶちゃんたちに導かれ次に移動した世界は、光のスティックで音楽を奏でることが出来る空間だ。空間に生えている光の棒や蓮の花をスティックで叩くと音が鳴り、叩く場所によって音色が異なる。幻想的な空間をVR上で共有し、一緒に演奏を楽しめる時間は新鮮で会話も弾む。

 次に移動したのは、ヴェネツィアのような雰囲気の世界だ。「川に飛び込むこともできるよ」と教えてもらい、思い切って飛び込んでみる。川に飛び込むと浮遊感があり、自分がいまVRの世界に没入していることを認識できた。

 ステラちゃんは「スグバース」で始めたVAについて「VRの人口を増やせる夢のような仕事」だと話していた。「スグバース」には学生から社会人まで幅広い層が訪れるという。彼女たちのような存在は、筆者のようなVR初心者の背中を押してくれるきっかけを作ってくれると感じた。

 「スグバース」で働くことになったきっかけも尋ねてみた。5年前からメタバースで活動していたというこんぶちゃんは、メタバースで中橋さんと出会ったことから、交流が始まったという。そして、中橋さんに「スグバース」で働くことの提案を受け、VAの仕事を始めたのだという。

 ステラちゃんやHさんにも話を聞いていってみると、なんと全員メタバースから交友が始まっていたのだとか。あらためて、「メタバース」が新たな働き口を見つける場にもなっているのだと実感しながら、続いて訪れたのは南国を連想させるようなビーチだ。ここでは「祝・バーチャルデビュー!」とビールで乾杯してもらった。もちろん、バーチャルのビールなので実際には飲んでいないのだが、それでも不思議と気分が高揚してきた。

 メタバースでは、リアルのお酒を片手に交流を楽しむ飲み会なども開催されているということで、それぞれが家に居ながら、同じ空間で会話を楽しめるのは素直に面白そうだ。

 ふと、大学の友人と「コミュニケーションが苦手な人でも、VR空間でなら話せそうだよね」という話をしたことを思い出した。筆者が想像していたように、VR空間なら「実際の顔が分からないから話しやすい」ということもあるだろう。しかし、実際に体験してみて、コミュニケーションの得意・不得意に関わらず、外見にとらわれず「相手の内面のみを知ることが出来る」という点で、現実よりも“リアル”に他者と交流できる場なのかもしれないと感じた。

 ここでは海に飛び込みスキューバダイビングも楽しんだ。現実では泳ぎが得意とは言えない筆者も、VRでなら魚とたわむれることができた。現実ではできないことも叶えることが出来るということが、メタバースの醍醐味だろう。海中を楽しんでいるとポートが見えてきて、ポート内にはべットが設置されていた。

 ちなみに、VR上級者になると一日の大半をVR上で過ごしている人も珍しくないという。なかにはVRゴーグルを装着したままワールドに設置されているベッドで眠り、そのまま朝を迎える人もいるという。これには驚いた。眠りから覚めたら海の中というのは素敵だが、疲れが取れないということで、あまりおすすめは出来ないという。

 最後に訪れた花火大会のワールドでは、ロマンチックな雰囲気で花火のフィナーレを見ることができ、VR空間で一足先に夏を感じられた。しかし、花火大会といえば混雑するものという印象もある。VR上で一つのイベントに人が集中した場合どうなるのかを尋ねてみた。メタバースでは毎日様々なイベントが開催されているが、『VRChat』ではひとつのインスタンス(※)に入れる人数に制限があるという。

(※ワールドとインスタンス:たとえるならば、ワールドは空間の設計図で、インスタンスはそれを基に作られる空間。同じ設備を備えたカラオケの個室のようなもので、ワールドに対してインスタンスA、B、C……というように新規インスタンスを開設することができる。個別に「フレンド限定インスタンス」「招待専用インスタンス」といった設定をすることもできる)

 最大人数はワールドの設定によって異なるが、大体40〜最大80人ほど。中橋さんいわく、参加できる人は主催者で決められるとのことで、なかには1対1の接客をウリにした招待制・抽選制のイベントもあるとのこと。筆者が抱いていた「VR空間には無限の世界が広がっている」という認識がくつがえされた瞬間だった。

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