『ゴジラ-1.0』で世界から注目 25歳VFXアーティスト・野島達司に聞く“液体表現”の世界
第96回アカデミー賞®視覚効果部門も自身での手ごたえは「全然まだまだ」
――ともかく『ゴジラ・ザ・ライド』で作った爆発がきっかけで、エフェクトもやるようになったわけですね。
野島:その出来がよかったのか、それ以降がっつりエフェクトをやる雰囲気が出始めて。『ゴーストブック おばけずかん』でも一反木綿のエフェクトや滝の制作に携わり始めました。
――『ゴジラ-1.0』では、海のエフェクトが高く評価されていますけど、いつ頃から海のシミュレーションをやり始めていたのですか。
野島:大学1年のときに、時間があったので趣味で始めました。友達が船をモデリングして、それが海に倒れるだけの映像なんですけど。そのころはまだそんなに上手くなかったです。
『パイレーツ・オブ・カリビアン』が好きだから、潜在意識でああいう映像に憧れがあったのかもしれないですね。シミュレーションはいまもやってます。これはピアノの練習みたいなもので、やり続けていないと衰えるんです。
――野島さんのなかで、水のエフェクトの面白さはどんな点にあるんですか。
野島:形状が変化し続けるのが面白いところですね。形状が変化するたびにポリゴン数も変わるし。それに、水って誰もが日常で触れるものじゃないですか。それが変な動きをすると面白いと思うんですよね。ファンタジーじゃない実在する物体が色々な動きをするのが面白いというか。
よく見ると水の動きって変なんですよ。スローモーションで見るのと普通に見るのとで全然違って見えるし、バケツをひっくり返したときとクジラが出てくるときも違うし、どこまでも追求できるんです。映像表現を追求していくなかで、動きの面白さに興味を惹かれてしまうのが水の魅力ですね。
――山崎貴監督は取材で、社内に海のシミュレーションできる人がいたから、映画の見せ場を海のシーンにしてみようと思ったとおっしゃっています。実際に監督から脚本の段階で、海のシーンを映画の見せ場にすると相談はされたのでしょうか。
野島:山崎さんは相談とかあんまりしないですね。単純に僕が趣味で作ったものを会社のパソコンで眺めていたら、「これ、作ったの?」みたいに横から言って去っていくみたいな感じでした。それに何の意味があったのか全然知らなかったんですけど、まさか脚本に書いてくるとは思いませんでした(笑)。
――海のエフェクトを頼まれたのは、どのタイミングだったんですか。
野島:プロジェクトのためにサーバーやマシンを増強して、新しくしたときですね。「このスペックで足りる?」みたいな話になって、「これ僕のマシンなんですか?」みたいな感じでやることになりました。
――そんなしれっと決まったんですね。
野島:そうなんです。「君はこれをやりなさい」と言われる感じではなく、できる人がやって作っていこう、みたいな。
――ちなみに、野島さんのYouTubeにはHoudiniで作ったビーチのシミュレーションがありますね。
野島:あれは、『ゴジラ-1.0』で海のエフェクトに携わることになり、自主練していて初めて上手くできたなと手ごたえがあった映像です。山崎さんが『ゴジラ-1.0』の脚本を書いていたときに見ていたものではありません。山崎さんが見たのはテクスチャリングする前の全然大したものじゃなかったので、なぜあれを見て海のシーンを増やそうと思ったのかは不思議ですね(笑)。
――今回、視覚効果部門を受賞されたわけですが、ご自身のなかで完成度に対する手ごたえはどのくらいなんですか。
野島:まだあまり実感が湧かないですね。水といえば、アメリカのScanline VFXという会社がとてつもない映像を作っているし、個人の技術では足元にも及びません。受賞することができたのは映画そのものが良かったというのももちろんありますが、映像のクオリティそのものはまだまだ進化できる部分があるのではないかと感じています。
――実際、オスカー®授賞式やVFXのベイクオフのときに、向こうのクリエイターに何か言われたりしましたか。
野島:スピルバーグ監督にお会いしたときは、カメラの距離感とか水の細かさの関係など、技術と演出に関する話をしてくれました。会場の熱気もすごかったので、全部は聞き取れなかったんですが……(笑)。
ほかにも水が良かったと言ってくれる方はいたんですが、僕的には不思議に思うところもあって。だって、ハリウッド映画はもっとすごいクオリティの映像を作っているじゃないですか。
――目指すべきロールモデルとなる作品などはありますか?
野島:ハリウッド映画はみんな高い水準だと思っていますが……個人的にはIndustrial Light & Magicのクオリティを目指していきたいです。『マンダロリアン』という作品に、水からワニみたいな生物が出てくるシーンがあるのですが、その水の表現のクオリティがめちゃくちゃ高いんです。一瞬のシーンなのに、それでもこれだけハイレベルなものを作るのかと驚きました。
――今後、挑んでみたいことはありますか。
野島:液体に関することはひと通り挑戦して、まだ誰も見たことのない映像を作りたいです。あとは爆発ですね。爆発はかなり開拓の余地があると思っていて、完成形のレベルにまで行っているのは、Wētā FX (旧 : WETA Digital)やIndustrial Light & Magicくらいで。実写の映像と比べるとCGの爆発って本当に全然違うので、密かに研究しようかなと思っています。
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生きて、抗え。
焦土と化した日本に、突如現れたゴジラ。
残された名もなき人々に、生きて抗う術はあるのか。
ゴジラ 70 周年記念作品となる本作『ゴジラ-1.0』で
監督・脚本・VFX を務めるのは、山崎貴。
絶望の象徴が、いま令和に甦る。
〈キャスト〉
神木隆之介、浜辺美波、山田裕貴、青木崇高、吉岡秀隆、安藤サクラ、佐々木蔵之介
〈スタッフ〉
監督 脚本 VFX:山崎貴
音楽:佐藤直紀
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〈発売・販売元〉
発売元/販売元:東宝株式会社
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