『Nothing Ear (a)』の新色はなぜイエローだったのか 担当デザイナーが語る“デザインのルーツと日本への愛”

Nothingデザイナーが語る“ルーツと日本愛”

 4月18日、都内某所でおこなわれたNothingの新製品発表会。スタジオの一角を借り切っておこなわれたこの会では、あらたに2つのオーディオ製品『Ear』『Ear(a)』が発表された。

 日本拠点の設立、ChatGPTとの連携や新たなケースデザインなど、さまざまな発表のなかで、特に筆者が注目したのは『Ear(a)』の新色・イエローの存在。これまでモノトーンのデザインを軸としてきたNothingが、なぜこのタイミングで新色を出したのか。デザインチームの担当者・Frank Lin氏に、Nothingが日本にむけるまなざしや、スケルトンデザインのルーツなど、話を伺った。

透明なケースをレンズに見立てて伝える、Nothingの“デザイン哲学”

ーー本日の発表会では「日本とデザイン」という話題があがっていましたが、Nothingが日本に向けるまなざしとはどのようなものなのでしょう?

Frank Lin(以下、Frank):個人としても、デザインチームとしても、日本にはずっと注目してきました。日本が持つ「テクノロジーを積極的に取り入れる姿勢」「細やかな部分まで突き詰めていく職人技」「デザインを深く掘り下げるものづくり精神」など、文化やデザイン、企業の在り方など、すごく特別な国ですよね。

 くわえて私たちはソニーや任天堂が大のお気に入りで、とくに80〜90年代の製品は、その一つひとつが“ゲームチェンジャー”でした。当時のゲーム機はもちろん、ウォークマンなど、誰も予想していなかったようなものがどんどん出てくるし、それまでの製品とまったく異なる。自分たちのブランドやデザインを育てていくにあたって、私たちNothingもそういう風なブランドでありたいと思っています。

ーー90年代の後半といえば、ソニーや任天堂はもちろん、さまざまな企業が「スケルトン」の製品を世に送り出しています。Nothingの特徴であるスケルトンデザインは、そうしたブームからも影響を受けていますか? それとも単なる偶然なのでしょうか。

Frank:強いて言えば、半々でしょうか。もちろん日本から影響を受けている部分は大いにありますし、私たちが掲げる哲学のひとつも大きく影響しています。私たちはテクノロジーを通して「人間の温かみ」を伝えることを常に考えていて、「楽しさ」「自己表現」なども同様です。そしてデザイナーというのは、デザインをつくる仕事であると同時に、課題解決と向き合う仕事でもあります。

 そうしたときに、「透明性」もすごく大切になってくると考えています。ユーザーが製品の内側を見たときに、どういう設計になっているのか、どういう技術を使って製品化されているのか。こういうことがユーザーにわかる形にしています。いわば、これらの透明なケースは我々のビジョンを垣間見ることができる、課題解決に向き合う姿を伝える「レンズ」のようなものなのです。

 

モノトーンでの展開は“戦略”だった 新色で原色のイエローを採用した理由

ーー「ビジョンを透明なケースを通して伝えてきた」ということですが、今回追加された新色・イエローにはどのような意図が込められているのでしょうか。これまではモノトーンでスタイリッシュ、というのがNothingのイメージだったので、ここまでポップなデザインに仕上がっていたことに驚かされました。

Frank:これにはいくつかの理由があって、ひとつはこれまでの我々がまだ新しいブランドだったことです。最初からいろいろなカラーを出すのではなく、まずはブランドのイメージをしっかり固めて、みなさんに知ってもらうためにホワイトとブラックの2色でやってきたというところです。

 今回の『Ear』『Ear(a)』は、我々にとってもう5世代目の製品となりますから、このタイミングで新色を投入しようと決めました。くわえて「なぜイエローなのか」というところですが……遊び心があって派手な色であること、そして今回のケースデザインと一番マッチしたことが決め手でした。

 それと、イヤホンというものは顔の近くにつけるもので、イエローというのは多くの人の肌の色と近く、馴染みやすい色なんですよね。それでいて原色なので、人から見られたときに目を惹くワンポイントにもなります。

ーー最後に、あらためて今後のことや、なにか一言ユーザーに向けてコメントがあればお願いいたします。

Frank:そうですね、今後の展開についてはこれから随時お伝えしていくので、楽しみにしていてほしいと思います。それと今回の来日、ロンドン本社のデザインチームからはすごく嫉妬されたんです(笑)。あらためて、我々Nothingが日本のことをいかに愛しているか伝われば幸いです。

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