ヒカキンの謝罪は「理に適っている」? 謝罪のプロが説く“YouTuberの正しい謝り方”

謝罪のプロが解く、YouTuberの正しい謝り方

「謝罪は目立たない方がいい」 謝罪における成功は“すぐに忘れられること”

――今回のヒカキンさんの謝罪動画は、すごくいい謝罪の仕方だったということですね。少しお辞儀が深すぎるなど違和感を覚えたところがあったのですが、このお辞儀はどうでしょうか?

増沢:ヒカキンさんは動画制作のプロで、YouTuberとしてトップに立っている方なので、ポジティブな意味で構成や演出をすべて考えていらっしゃる。だからこそ長く深いお辞儀だったのだろうと思います。ただやはり、10秒ほどの長いお辞儀はすごく違和感があるし、あれはやらない方がいい。それは変な目立ち方をしないというのが、謝罪においてすごく大事なポイントだからなんです。

 過去に芸能人で捕まった方が釈放された際に、警察署のエントランスの真ん前で土下座したということがありましたが、これは傍目から見ると異様に映ってしまいます。土下座などで、謝罪の意を見せるというのは、効果があるどころか押し付けになりやすい。謝罪をされた側にはメリットがない。礼儀正しく数秒間頭を下げるというのが一番目立たないし、この目立たないっていうのが謝罪においてすごく大事なポイントです。

――謝罪は目立たない方がいいとは驚きです。

増沢:事態を収集したいわけなので、「あの人の謝罪は感動したね」とずっと言われ続けたら、それは印象に残ってしまっているわけですよ。「こんなことあったっけ?」と忘れてしまうくらいになることが謝罪における成功です。

――なるほど。ちなみに謝罪の仕方は時代によって変化しているのでしょうか?

増沢:私は10年くらい前からこういった話でよく声がかかるようになったのですが、これはインターネットの影響だと思っています。インターネットを皆んなが気軽に使えるようになったのは、21世紀になってからですよね。一般の人たちはそれまで世間と直接交流する窓口がなかったので、昭和の大物芸能人や政治家のような人以外はそもそも謝罪する場所がなかったんです。いまはネットを通じて姿が簡単にスマホで見れてしまうので、謝罪が届きやすくなった。インターネットが普及する前と後ではまったく違うと思います。

――深すぎるお辞儀や印象よくするための作法的なところでも、謝罪動画というのはかなり難しいコンテンツな感じがします。

増沢:印象に残らないようにすればいいわけですから、難しくはないと思います。私はコンサルタントとしていろんな会社の顧問をやってきましたが、トラブルはいくらでもありました。この件で思うのは、自分が悪いと思ったらなんのストレスもなく「申し訳ない」と皆謝れるんですが、そうじゃないことが多いということ。部下や上司がトラブルを起こした場合に「私は悪くない」と本能のままに行動したら、ビジネスができなくなってしまいます。こういうときは収拾することが仕事で、私は「土下座もします」というぐらいのことをやっていました。

 これはよく「ビジネス土下座」とか「ビジネス謝罪」といわれますが、要はこういう気持ちを持てるかどうかなんです。事態を収拾するために頭を下げらることは、まさにプロの姿になります。個人の思いを言ってしまうのは素人です。

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