『フリースタイル日本統一』#10ーー1回戦の全バトルが終了 Zeebraが番組に求めることは?
歩歩、TERUとの大将戦でも“歩歩節”を発揮
前回の【#9】より引き続き、1回戦(壱万石の戦い)にて、TEAM大阪(ミメイ×POWER WAVE×歩歩)とTEAM京都(REDWING×Fuma no KTR×TERU)が対戦中。バトルもいよいよ佳境を迎え、残すは歩歩とTERUによる大将戦のみとなった。この後、バトルの結果を端的に示した後、内容の振り返りをするのだが、まずは両者のバースを抜粋したものをご覧いただきたい。
歩歩:街から街 Coast to coast 何を残ず お前もっと個性を残せ お前ちょっと上手いからのぼせあがってる 俺が勝ってる ガッテム 分かってる俺はブチ上げる コイツ言ってる事 口だけ それじゃ無理やで 俺はフリースタイルでお前ら全員まとめてプチ上げる
TERU:ブチ上げる デカい花火を打ち上げる ピューパンつって お前の首元刈ってくるだけだぜ
歩歩:ブーメラン シュ スバーン 切れてもOK 俺はHIP HOPゾンピご存じ 俺 装備なしMicrophone I'm sorry ごめんなさい お前勝つの5年は無い 俺しかいない 京都を背負ってる しょっぺえ事は言えねえ しょんべん 負けん気 俺は間違いない
TERU:俺のテンションだって最高潮 俺だって背負ってる 天下の台所
あくまで抜粋ではあるものの、先攻の歩歩が完璧なアンサーを返していることがわかるのではないだろうか。ジャッジも文句なし、5-0での圧勝である。歩歩も勝利に確信を持ってか、判定前にはガッツポーズを構える場面も。TEAM京都のREDWINGに、チームメイトのミメイとPOWER WAVEが2枚抜きをされた後、背水の陣をひっくり返す見事な逆転劇を繰り広げてくれた。
歩歩がもし負けるとしたら? アンサーしながら“明後日の方向”に向かうバトルスタイル
そんな歩歩のラップについては【#9】で破られたFuma no KTRも「強すぎますね〜」と苦笑まじりに語っていたところ。これまでバトルで当たりたくない相手として、TEAM北関東のDOTAMAの名前を挙げていたが、この日を境に歩歩に変わったというほどだ。その理由も、TERUとのバトルで視聴者にさらに色濃く伝わったはずである。
というのも、Fuma no KTRもTERUも思い通りのラップをさせてもらえないという、非常に類似した負け方をしていたから。今回であれば〈デカい花火を打ち上げる ピューパンつって〉と、擬音語を用いたラインから、歩歩も文脈を読みとりすかさず〈ブーメラン〉だと反応。しっかりとアンサーを返しているのだが、それ以上にスタミナ無尽蔵で、本当に好き勝手にラップを展開してくる。
野球でたとえるならば、野手が打球を見失うことがたびたびあるが、あの感覚に近い。しかも気づいた頃には、ボールはバックスクリーンに直撃で、言葉も出ない。歩歩のラップも同様で、たった8小節のはずなのに、“なんでそんなところに?”とツッコミを入れたくなるほど、バースを重ねるたびに、対戦相手にとって明後日の方向に話と熱量を持って行かれてしまうのだ。これには、さすがのFuma no KTRやTERUでも自身のよさを発揮するのが難しく、とてもやりづらそうな表情を浮かべていたのが印象的である。今回のバトルビートとなったUZK「Gentleman」との相性もあるが、フロウの観点でもなかなか思い通りにならず、最終バースでも言葉が詰まる場面すら見られた。
『フリースタイル日本統一』に限らず、これまでの歩歩を見ていても、彼が負けるのは自らのラップや言葉選びについて、“たしかに言われた通りかも”となにかに気づき、反省をした瞬間があったときが多い気がする。逆に言えば、自身のラップを俯瞰さえしなければ、無敵。このままトップオブザヘッドで、次回以降のバトルも勢いよく乗り切ってしまうのか。そして、まだ隠し持っている(が、すでに広く知られている)お決まりの“あのフレーズ”や“このフレーズ”なども、いつ出してくるのかが楽しみで仕方ない。