『スーパーマリオRPG』リメイクは“完全復刻版”に ファンの不安を杞憂にした模範解答
11月17日、Nintendo Switch版『スーパーマリオRPG』が発売を迎えた。
復刻が絶望視されていたなかで、2023年6月にその存在が明らかとなった同タイトル。発表時には、ファンから驚きや喜び、期待、不安といったさまざまな感情の入り混じった声が上がった。
なぜファンは複雑な感情を抱いていたのか。『スーパーマリオRPG』が持つ魅力を踏まえつつ、不安の行方を考えていく。
任天堂とスクウェアが共同で開発したRPG史の金字塔『スーパーマリオRPG』
『スーパーマリオRPG』は、1996年にスーパーファミコンで発売された同名の作品を、27年ぶりにNintendo Switchで復刻したリメイクタイトルだ。プレイヤーは、シリーズでおなじみの「マリオ」や「クッパ」「ピーチ姫」に、「マロ」「ジーノ」を加えた総勢5名のキャラクターからパーティーを編成。クラシカルなJRPGの要領で、同作オリジナルのボス「カジオー」の打倒を目指す。
原作は、任天堂とスクウェア(現スクウェア・エニックス)が連名で開発し、日本国内を中心に200万本以上を売り上げた。四半世紀以上が経った現在も、ジャンルの金字塔として名前を挙げられる機会が少なくない、不朽の名作に類する作品だ。そのような背景からリマスターやリメイクを強く望まれていた同作だが、大手ゲーム会社が共同で開発したことに起因する諸々の問題などから、復刻が絶望視されていた。2023年6月にリメイクの存在が明らかとなったときには、当時を知るファンから驚きと喜びの声が上がった。
対応プラットフォームはNintendo Switchのみで、価格は、パッケージ版が6,578円(税込)、ダウンロード版が6,500円(税込)となっている。発表から約半年。近年でも屈指の注目リメイクがついに発売を迎えた。
面白さの根源は、シリーズとコマンドRPGの良さを高次元で調和した点に
時代を超えて愛され続けるスーパーマリオRPG。その面白さの根源はどのような点にあるのか。ひとつは、任天堂が誇る「スーパーマリオ」シリーズらしいアクションと、スクウェアが誇る往年のコマンドRPG、双方の良さを高次元で調和させている点だろう。「それぞれの要素を取り入れる」と言葉にするのは簡単だが、プレイヤーがどちらのエッセンスもしっかりと感じられる形でひとつの作品にまとめるのは、決して容易ではない。
『スーパーマリオRPG』では、フィールドにおいて、ジャンプやダッシュといった「スーパーマリオ」シリーズおなじみのアクションが行える。このときに使うボタンは、スーパーファミコン世代の本編とおなじもの。ジャンプがBボタンに、ダッシュがYボタン長押しに割り当てられている。さらに、どのようなRPG作品にも存在するマップ上の宝箱は「ハテナブロック」となっており、マリオをジャンプさせ、下から叩くことで開封できる。全体をRPGとしてまとめながら、「スーパーマリオ」の世界観を失わない設計が目立っているのだ。
同様の工夫はバトル中にも確認できる。『スーパーマリオRPG』において、主人公であるマリオは、「ジャンプ」や「ファイアボール」といった彼らしい技を覚えていく。この程度の世界観の共有ならば、ほかのコラボレーションでもよくあることだろう。驚くべきはその先。これらの技は、ボタンを連打したり、タイミングよく押したりすることで、効果や演出が変化し、ダメージを加算できる仕様を持っている。こちらもまた、RPG的要素の代表格であるコマンドバトルに、シリーズらしいアクションをうまく取り入れた例だと言える。「スーパーマリオ」とRPG、どちらの良さも失わず、上手に世界観を構築している点が、『スーパーマリオRPG』のこの上ない個性なのである。
また、紹介した長所は、ゲーム中にふんだんに盛り込まれているミニゲームにも生かされている。なかにはアクションではなく、別のジャンルから遊び心を拝借しているものもあるが、このような遊びに対する考え方こそが、「任天堂らしさ」と言えるのではないか。当時はまだ(少なくとも現在ほどは)、そうした同社のアイデンティティに注目が集まることはなかったように思う。が、いまとなっては、「遊び心の具現化と言えば、任天堂」とされるほど、ユーザーのあいだで認知が広がっている。「スーパーマリオRPG」は、現在まで続く任天堂らしさのひとつのルーツとも言えるのかもしれない。