LJLキャスター・Revolに聞く『Worlds 2023』のメタとチームの“ガチ分析” 日本代表・DFMの鍵となるのは「BO5」マッチか

LJL解説・Revolの『Worlds』“ガチ分析”

 世界でも有数の人気を誇るオンラインゲーム『League of Legends(リーグ・オブ・レジェンド、以下『LoL』)』。5人のチームで戦うストラテジーゲームで、2009年のリリースから現在に至るまで多くのプレイヤーを魅了して止まない長寿タイトルだ。

 『LoL』ゲームシステムにおける公平性・競技性の高さから「eスポーツ」の種目としても定番タイトルとして知られている。そして、その世界大会『Worlds 2023』が10月10日からいよいよ開幕する。

 今回は日本の『LoL』プロリーグ『LJL(League of Legends Japan League)』で解説者を務めるRevol(レヴォル)氏にインタビューを実施。後編となる本稿ではすでに『LoL』にドハマりしている方へ向けて、Revol氏による『Worlds 2023』の“ガチ分析”をお届けする。各リーグの特徴から戦力分析、現環境の解説まで、これを読めば“より深く”『Worlds』を楽しめること間違いなしだ。

「地域によってまったくスタイルが異なる」世界のトップリーグ

ーー早速ですが、『LoL』のプロシーンにおける4大リーグ(LCS、LEC、LCK、LPL)の特徴と、注目リーグやチームについて解説をお願いいたします。

Revol:「LCS」は、NA(北米)地域のプロリーグで、特徴としては伝統的にボットレーンが強い地域なんです。なので、そのボットレーナーのパワーが育った、つまりアイテムが完成したタイミングでの集団戦が軸になっている地域だと思います。

 そこまでの積み上げ方でいうと、レーニングのところで着実にボットの優位を作りながら、中盤以降は大局的な視点、マクロゲームに繋げる。そこで自分たちのADキャリーをぶつけていく、というテンポ感で戦っているチームが多いですね。

 反面、トップやミッドなどのソロレーンにおいては、歴史的にタレントが揃わないことが多い地域でもあります。国際的に見ると、ボットレーンは戦えているんだけど、ソロレーンのところで負けてしまってにっちもさっちもいかなくなる。そんな展開が散見されることもありますね。そして、その傾向はおそらく今年も変わらないでしょう。

 今年の夏シーズンは「NRG」というチームが悲願の初優勝を果たし、素晴らしいパフォーマンスを発揮していました。ですが、やはり課題となるのはトップレーンとミッドレーンが他地域の強豪レーナーたちと戦えるのかどうか。ここがポイントになってくると思います。

ーーLCSのチームはボットレーンに注目、他レーンでリードをとられないことが重要ということですね。

Revol:そして次はLECなんですが、こちらはEU(欧州)ですね。このリーグはとてもクリエイティブな地域でして、本当に予想もしていないチャンピオンをピックすることがあります。

 さらに、そもそも現在の『LoL』においてメタとなっている、トップ1人、ジャングル1人、ミッド1人、そしてボット2人というレーンの割り振り「EUスタイル」を生み出した地域で、その組み合わせ、トップはタンクもしくはファイター、ボットレーンはADキャリーとサポート、ミッドはメイジというスタンダードを作ったのもEUです。

 そういったところでいうと、メタをどんどん動かしていく地域というところで、びっくり箱のような存在なのかなと僕は思っています。くわえて、「G2 Esports」というチームがEUに現れてからは、よりハイテンポで攻撃的なリーグになったというのが僕のEUに対する評価ですね。積極的なプレイでどんどん有利を作っていって、マップ全体のリソースを全部拾って、「とにかく相手よりも上回って勝つんだ」みたいな展開が非常に多い。それはいまも変わりません。個人的には、LEC代表の「G2 Esports」は『Worlds』で優勝候補の大穴になれるくらいの実力を持っていると思います。

 それから、この地域は新しい才能がどんどん出てくるんです。毎年、LEC代表のメンバーには新人選手が一人か二人は入ってきていますから。今年の「G2 Esports」にもジャングラーのYike選手という、LECに今年デビューしたばかりの選手が出てきています。

ーー伝統と革新、両方を併せ持つ地域ということですね。2019年には決勝まで上り詰めた『G2 Esports』に今年も期待したいところです。

Revol:そして、LCKは韓国のリーグですね。ここ数年、国際大会では中国のLPLと互角の勝負を演じる形が多く、彼らからすると後退してしまっているという状況だと思います。ただ、やっぱりLECがメタのスタンダードを築いた地域だとしたら、LCKはそこの上積みを作り上げていった地域という印象が強いですね。

 韓国という国は、もともと『StarCraft』のようなRTS(リアルタイムストラテジー)ジャンルが盛んであった地域というところもあり、マップ理解度や視界の重要性といった大局的な視点を持っているコーチ・選手たちが多い印象です。そうした基礎の上に作り上げられていた部分が非常に大きいと思います。

 なので、端から見ていると「LCKが強い時ってサプライズが少ないことが多いな」というところがあります(笑)。細かな有利を着実に作り上げるような、小さな有利をゆっくり広げていくスタイルが非常に多いので、展開がガチっと固まってしまうことも多いです。近年はそうならないようにてこ入れを試みているようですが、結果的にLCKの得意なスタイルが封じられてしまったような印象も受けますね。

 ただ、そうしたスタイルを実行できる「作戦遂行能力」みたいなところは、世界でも頭一つ抜けています。そんなリーグを勝ち上がってきたチームなわけですから、とてつもない強さであったり、個人技を持っているというのは間違いないですね。

ーーLCKの注目チームについてはいかがでしょう?

Revol:個人的には、この夏LCK優勝を果たした『Gen.G Esports』は有力な優勝候補の一角だと考えています。もう、本当に隙がないですね。ミッドレーナーのChovy選手は、おそらく世界中の誰もがレーニングを参考にしている選手だと思います。参考にしないプレイヤーは、プロ選手だといないくらいだと思います。

 そして、ジャングラーのPeanut選手はベテランに差し掛かってきていて、チーム全体はもちろん、マップコントロールなどゲームについても理解していますし、自分がすべきことを実行できる選手です。序盤のジャングリングで不利を背負っても全く慌てないですし、取り返す術を知っている安定感もありますね。

 一番のサプライズだったのはボットの2人が新人であるということでしょうか。本来、メンバー変更をするのであれば、ベテランと新人の組み合わせが理想ですから、前任者のRuler選手という世界最高峰のADキャリーの後釜に新人を置くのか! というのはかなり驚きました。ですが、期待以上の成果で勝ち上がってきていますから、「Gen.G Esports」は「どのチームを見たらいいかわからない」という方が追いかけていくべきチームのうちの一つになると個人的には思っていますね。

ーーほかでいうと、「T1」は近年優勝こそできていませんが、安定した成績を誇っている印象です。

Revol:今シーズンはLCK2位となってしまったT1ですが、夏はFaker選手の怪我などもあってスターターが固められず、そこのトラブルを夏の決勝戦でも引きずってしまった結果、決してフルパフォーマンスで戦えたというわけではなかったんですよね。

 反対に言えば、そういった怪我のような突発的なトラブルに起因するパフォーマンスの低下だったので、ワールドまでにはしっかりと仕上げてくると思いますから、T1も優勝候補の一角だと僕は考えています。

 それから、個人的な思いとしてはDeft選手が昨年優勝を果たし、今年のアンセムではFaker選手が悪役のような形で描かれてしまっているのが複雑な気持ちですね……! もちろん、Deft選手目線だと幾度となく勝利を阻まれてきたライバルということになりますから、それはそうなんです。けれど、Faker選手が主人公となってハッピーエンドの物語を紡ぐ姿を見たいなという気持ちもあるので、“復活のT1”も楽しみにしたいなと思っています。

ーーそうですね。Faker選手は先日開催された『アジア競技大会』でも優勝していますし、かなり仕上がった状態で臨んでくるのではないかとにらんでいます。

Revol:Season3でデビューしてから、『LoL』のアイコンとも呼べる存在になっていますからね。彼がこれだけ長くキャリアを続けている中で、2017年を最後に『Worlds』で優勝できておらず、しかも昨年は決勝争いまで行ったわけですから、「今年こそは」という思いも強いと思います。昨年と同じメンバーですし、楽しみですね。

ーー毎年のことながら、やはりT1の活躍には要注目ですね。最後に、LPLについてもお願いいたします。

Revol:中国リーグであるLPLは、苛烈なスタイルが目立つリーグですね。ガンガンぶつかり、敵を倒して「より大きな有利を作っていこう」という考えを持っている地域なので、非常にアグレッシブで攻撃的なところが特徴です。

 そんなリーグを勝ち上がってきたわけですから、もちろんどこのチームも非常に攻撃的なプレイが目立ちます。ただ、その攻撃的な中でも、スタイルはそれぞれ違っているな、という印象です。

 「LNG Esports」は、LPLというよりも少しLCKっぽいスタイル、着実な有利を広げていく傾向が強いチームかな、と思っています。一方で、「Bilibili Gaming」はより攻撃的、とくにトップとボットでどんどん有利を広げていく印象です。特にトップレーナーのBin選手はいま、世界最高峰のトップレーナーの一人となっていますから、彼の個人技を活かしてどんどん有利を広げていく動きに期待したいところです。

 そしてLPL夏シーズンを優勝した「JD Gaming」は、とにかく全員の個人技が高く、たとえば作戦のところで若干負けていたとしても、シンプルな5対5の強さで勝ちを重ねていくという地力がありますね。

 そういった個人技の強さ、チームとしての集団性の強さというところがありますから、それぞれのスタイルの違いというのが非常に面白い地域だと思っています。そして今挙げた3チーム、LNG Esports・Bilibili Gaming・JD Gamingはどのチームも『Worlds』の優勝候補で、特にJD GamingはLCKのGen.G Esportsと並ぶ本命かなと思っています。

ーーこうやってお話を聞くと、各地域のスタイルに着目して観戦してみる、というのも『Worlds』を楽しむコツに思えます。

Revol:そうなんですよね。Season1のころからそうなんですけど、たった1体のチャンピオンに対しても、地域によってまったく評価が違ったりするんですよ。そこも『LoL』とeスポーツの面白いところだと思います。

 eスポーツというだけあって、これだけグローバルに情報や試合を見られるわけですよね。たとえば、少し前のサッカーとかの場合だと、インターネットも発達していないので情報を得る手段がテレビに限られている。データがないからワールドカップにならないと展開の予想がつかない、みたいなところがあったと思うんです。

 ですが、特にeスポーツは常日頃のリーグ戦など、レギュラースケジュールからでもすべての試合を誰でも見ることができる。なのにもかかわらず、地域によってまったくスタイルが異なるというところは、やはり非常に面白いポイントですね。

ーーちなみに、各地域ごとの違いでいうと、日本のLJLはどういった特徴がある地域なのでしょうか?

Revol:LJLはお隣の韓国からコーチや選手を獲得しているので、やはりLCKからの影響が強い印象があります。ですから、LCK同様にチャンピオンドラフトのところで着実に有利を積み上げていって、その有利をゲーム内でもゆっくりと広げていこうという傾向が強いのかな、と思っています。

 ただ、近年はLPLの代表が国際大会で結果を残していることもあり、徐々にLPLのエッセンスを取り入れていこうとしているチームもいる印象です。

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