「番組のサビは『結論』じゃなくて『脱線』」 『奇奇怪怪』TaiTan×玉置周啓が語る“面白くてキモくないコンテンツの作り方”
本というよりもフィギュアのような新刊『奇奇怪怪』
――8月17日には書籍化第二弾である『奇奇怪怪』も発売されました。『奇奇怪怪明解事典』とは、アートワークもガラリと変わっています。
Taitan:それこそ音楽的なノリというか、軽やかさみたいなものを表現したくて。だったら今回は“事典”じゃなくて“漫画雑誌”でいこうと。じゃあ雑誌らしさって何かと考えたときに、まずこだわったのが脆弱性です。雑誌って、読めば読むほど型崩れしていきますよね。言い換えれば、それは読んだ記憶が本に残っていくということで、つまり脆弱性から固有性が生まれているんですよ。
――なるほど。それであえて本としては弱くつくっているんですね。
Taitan:一方で「見た目のインパクトはほしいよね」と話し合うなかで、天・地・小口の三面を青く塗ったらどうかというアイデアが出て。でも漫画雑誌で使われるような弱い紙に塗装すると、染料で紙がふにゃふにゃになっちゃうんですよ。そこをいかにクリアして、脆弱性とインパクトを両立させるのか。そのあたりは版元の石原書房さんに、かなりがんばってもらいました。
――今回はリスナーから広告枠を募集するという新たな試みもされています。
Taitan:漫画雑誌って絶対に広告が入ってるじゃないですか。それを再現したいと思ったのがきっかけで。架空の広告を入れるよりも、どうせならリアルな広告を入れたい。ならばいっそ広告枠をリスナーに売っちゃおうと。それが上手くいって、今回は制作費がペイした状態で本づくりをはじめられた。そうすると、モノにとことんこだわるれるようになる。「あとはとにかく良いものをつくればいい」という状態で制作を進められたのは、めちゃくちゃ良かったですね。
――玉置さんのこだわりのポイントもぜひ教えてください。
玉置:レタリングをたくさんしたので、楽しかったです。なんか遠足の感想みたいですいません。うん、でも前よりもポップで賑やかになったよね。文字も大きくなったし。『奇奇怪怪明解事典』は、ちょっと読めないくらい字が小さかったんで。そういう意味では、ポッドキャストのノリの変化に合わせ、書籍の雰囲気も変わったんだなっていうのが、手に取ったときの実感としてもありました。
Taitan:やっぱりこういうのって、めくったときに「楽しい!」と思ってもらえないと駄目なんすよ。生理的に、視覚的に、触覚的に気持ちいいものにしたかったから、周啓くんが全ページに描き下ろしてくれたレタリングも、目のフックになっていていいんじゃないかなと。
玉置:カッコよくてオモロイものって、ウチにあったら嬉しいじゃないですか。だからいわゆる「本」というよりも、フィギュアとかに近いものなのかなって。
――たしかに内容を知りたいだけなら、ポッドキャストを聴けばいいんですもんね
Taitan:そうなんですよ。それでも本にするのだから、いいもの、見たことがないものをつくりたいっていう思いがありました。代官山蔦屋書店でやっている刊行記念ポップアップ『圧と密』も、そういう意識で企画していて。三面を青く塗られた本が何千冊と並んだら、本が本を超えた物体性を帯びるんじゃないかと。それで「何だコレ?」と立ち止まってくれる人がいたら、本が本を広告していることになるわけです。こっちは本を積んでるだけなのに。そういう変なことを、日本でも第一級の書店である代官山蔦屋書店でやったらどうなるんだっていうのが今回のポップアップです。9月17日までやっているので、ぜひ足を運んでもらえたら嬉しいです。
――ポップアップの反響はいかがですか?
Taitan:多分、代官山蔦屋書店の年間売上ランキングでは一位を取れるんじゃないかなっていう。あとは歴代記録にどこまで迫れるかの勝負ですね。まあ、あれだけの冊数おいてもらってるのでチートなのですが(笑)
『奇奇怪怪』のラストシーンが、俺は嫌で嫌でしょうがないんです
――『奇奇怪怪』の今後の展望などがあれば教えてください。
Taitan:2人で集まって喋るっていう、人間のすごく原初的な営みから始まった活動が、3年間で2冊も本になって、アニメにもなって、TBSラジオで地上波の番組にもなって、みたいなことが起きているので、ここから活動の規模をどこまで拡大できるかっていうのには、すごく興味があります。具体的にこういうことをやりたいっていうのは、僕のなかに明確にあるんですけど、それはどこかのタイミングでリスナーに最初にお伝えしたいなと。周啓くんに伝えたところ「俺はそんなことをするために上京したわけじゃない」っていうアンサーをいただいたので、これは必ず成し遂げようと思います。
玉置:モチベーションがおかしいんですよね。俺を苦しめたくてさらに頑張っていこうっていう人ですから。
――玉置さんのいまのモチベーションは?
玉置:Taitanの家に毎週遊びに行こうかなっていうね。
Taitan:そうそう、遊んでるだけなんです。これ、本当にスカしてるわけじゃなくて。こうやって仲間とお金をかけて面白いことをできるようになるっていうのが、一番楽しい遊びじゃないですか。だからそれをやるために、めちゃくちゃ頭を使って、めちゃくちゃふざけてって感じです。それがいつまで続くかはわかんないですけど、実は最終回はさっきも言ったみたいに僕のなかで明確なイメージがあって。もうラストシーンの画が頭のなかに浮かんでいる、そこに向かって突き進んでく感じですね。
玉置:俺はそれが嫌でしょうがないんですよね。そのラストシーンのカットが本当に嫌だ。ぜひそうなってほしくない。まあでもそのときは、また取材してください。
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