声とテクノロジーで変革する”メディアの未来”
“ビキニ写真集”で制作費を稼ぐ? マユリカに聞く、激戦の芸人Podcast界で『うなげろりん』が人気を博すワケ
コロナ禍の影響もあり、Podcastやインターネットラジオ、音声SNSなど“音声”を軸としたサービスが増加し、ユーザー数を増やしている昨今。そんな広がりを見せ始めた音声メディアや音声サービスについて、パーソナリティやサービスの企画者に未来を予想し考察してもらう連載企画「声とテクノロジーで変革する“メディアの未来”」。
Spotify、Amazon Musicなどで続々とオリジナルコンテンツが登場し、注目されているPodcast。そのなかでも特に人気を集めているのがお笑い芸人による番組だ。地上波ラジオのように枠数が決まっていないため、知名度や人気に関わらずPodcast番組を配信できるようになり、各プラットフォームのランキングでは、軒並み芸人の番組が上位を埋め尽くすようになった。そんななか、マユリカの阪本と中谷によるPodcast番組『マユリカのうなげろりん!!』(以下、『うなげろりん』)が先日Apple Podcastの「2022年ベスト番組」に選出された。競争の激しい芸人Podcastのなかでも、なぜ一線を画すことができたのか。マユリカのふたりに直接話を聞いた。
Podcastを知らない状態で始まった番組の制作費は“ビキニ写真集”で捻出
ーーAppleがエディターやリスナーに高く評価されたPodcastを紹介する「2022年ベスト番組」のひとつに『うなげろりん』が選ばれました。おめでとうございます。
中谷:あんまりPodcastについては詳しくないので、どれくらいすごいものなのかをあまり理解してないんですけど、どうやらものすごいモンスター番組と一緒に選んでいただいたみたいで、めちゃくちゃうれしいです。
阪本:僕もあんまり知らなくて、並びの番組がすごいということを聞いて後からじわじわ嬉しくなりました。
ーーこれまでも度々SpotifyのPodcastランキングの上位に入ったりと、人気番組に上り詰めた印象がありますがおふたりはどう感じていますか?
中谷:たまにランキングは入るんですけど、最近はニッポン放送さんやTBSラジオさんの人気番組が続々Podcastに進出してきているので、どんどん追いやられている感じはありますね。それでもありがたいことに上の方に行かせていただいているんで、すごいなと思ってます。
ーー周りからの反響はいかがでしょうか。
中谷:「2022年ベスト番組」に選ばれたときは、紅しょうがの稲田(美紀)にだけ「なんか入ってたやん。すごいやん」と言われました。同じラジオ関西で番組やっていて、彼女は『うなげろりん』のヘビーリスナーなんです。あとは、この前自転車に乗っていたらギャルの方に追い越されながら「マユリカやんな? 『うなげろりん』聴いてるで」と言われましたね。街で声をかけられることは増えたかな。
阪本:あとはテレビに出るときに番組のスタッフさんによく言われたり、取材で触れられる機会も増えましたね。Podcastになってからは気軽に聴けるようになったんで、同じ吉本でも福岡とか東京の人からも「聴いてるで」と言われたのは嬉しかったですね。
ーー『うなげろりん』はもともとラジオ関西で放送していた『マユリカのうなされながら見た夢のあとで!』(以下、『うなゆめ』)が年4回の放送に減ってしまったことで定期的に配信できるようPodcastに転身した番組ですよね。Podcastに対して最初はどんなイメージを持っていましたか?
中谷:僕らはPodcastというものを知らなくて。言葉は聞いたことあるけどどういうものなのか全くわからない状態で始めました。
阪本:「Podcastって何? もう終わったわ」と思って。趣味に近い感覚でやるもんなのかなと思ってましたから。
中谷:誰が聴いてくれはるんやろうっていう。
阪本:もし始まったとしても、Podcastって聴くハードルが高いと思ってたんで、本当に僕らのことが好きで応援してくれる層だけが聴くんだろうなくらいに思っていました。でも意外とそうでもなく、ラジオより簡単に聴けるものだったんで、Podcastだからこそこんなに多くの人が聴いてくれることに繋がったかもしれないなと思うと、結果的にすごくありがたかったですね。
ーー収録環境やスタッフさんも『うなゆめ』のときから変わらずですか?
中谷:一緒ですね。ただ、プロデューサーの神吉さんは『うなげろりん』から入ってくれて。もともとラジオ関西で番組をやるってなったときに声をかけてくれたのも神吉さんなんです。でも『うなゆめ』が始まるときにちょうど異動になってしまって。それで年4回になったときに、ちょうど神吉さんがデジタル系の部署の方だったんで、そこに紐づける形でPodcastとして『うなげろりん』を一緒に立ち上げてくれたんです。
ーーなんとしてでもラジオ関西に残そうという神吉さんの熱量が伝わってきます。そこから『うなげろりん』が始まったわけですが、また制作費という難題がのしかかってきて……。
中谷:「番組の制作費がないから自分たちで稼いでね」なんてこれまで言われたことないですよ(笑)。そんな金額自分らで捻出できるわけないし、聞いたときは無理すぎて逆に何も感じなかったですね。
ーー基本的には広告がつかないPodcastならではですよね。Tシャツやトートバッグなどのグッズを販売するなか、ビキニ写真集『Perfect!!』は衝撃的でした。
阪本:男がビキニを着た写真集なんてグロテスクでしかないと思ったんですけど、完成したものはクオリティが高くて。普通に見れたんでびっくりしましたね。
中谷:阪本の冗談で始まった企画だったんで、当初の想像では画質も荒くて粗悪なものが出来上がるだろうなと思ってました。当然売れないだろうと思いましたし、まぁ笑い話になればいいかなくらいやったんですけど、まさかプロの編集さんとカメラマンさんが名乗りあげてくれてあそこまでちゃんとしたものになるなんてびっくりですね。
ーー現在3000部出版して在庫切れというかなりの人気ぶりですが、この写真集についても周りから反響があったのではないでしょうか。
中谷:紅しょうがの稲田に「めっちゃええやん」とは言われました。
阪本:写真集を劇場に持っていって周りの芸人に見せたら、みんなちょっと笑って「キモいやん」とかいいながら顔は羨ましそうでしたね。
中谷:いや羨ましいとは思ってないやろ! クオリティは高いとは思ってくれてるやろうけど。
ーー写真集のあとは『マユリカのうなされながら見た夢のあとで!CD-BOX「きくゆめ」』も好評でした。当分は大丈夫かと思うのですが、今後また制作費を捻出するとなった際にはどんなことをしたいなど考えていますか?
阪本:まったく考えてないですね。1発目がビキニ写真集なのでハードルが上がってしまったからこそ次はどうしようって感じですね。
中谷:毎回やばいってなってから考えるんで、切羽詰まってからアイデアが出てくるんですよね。
阪本:同じ路線なら「着エロ」とかもうそんなんでもええよね。
中谷:あかんあかん。誰が俺らの「着エロ」見たいねん。
『うなゆめ』『うなげろりん』があったからこそできた『オールナイトニッポン』
ーーこれまでラジオやPodcastは聴いてこられたんでしょうか?
中谷:僕は芸人になってから同期の番組をちょこちょこ聴き始めたくらいで。全然疎いですね。
阪本:僕も芸人になってからくりぃむしちゅーさんの『オールナイトニッポン』やおぎやはぎさんの『メガネびいき』をちょこちょこ聴いていたくらいで、ラジオは全然通ってきてないです。
ーー『うなゆめ』が初めてのラジオレギュラー番組とのことですが、これまでラジオを聴いてこなかったにも関わらず、おふたりのやりとりには慣れや落ち着きを感じます。
阪本:『うなゆめ』が始まったときは正直誰も聴いてないやろと思って。それこそ『オールナイトニッポン』だったらもっとガチガチだったと思うんですけど、いい意味で遊び感覚でできたというか。
中谷:番組の時間帯も夕方だったんであんまり聴かれてないんやろうなとは思ってました。だからこそリラックスできてたのかもしれないですね。
ーー地上波の番組でいえば今年の8月に『マユリカのオールナイトニッポンX(クロス)』を担当されましたがそのときはいかがでしたか?
中谷:さすがに生放送なので緊張しましたね。『うなゆめ』も『うなげろりん』も収録なので。放送中に緊急地震速報が入るというイレギュラーなことも起きてさすがにテンパりました。
阪本:僕は『うなゆめ』『うなげろりん』とやってきたんで、まぁ大丈夫だろうなという気持ちでリラックスしてました。でも始まったら中谷が緊張しててムカつきましたね。
中谷:僕、結構あがり症なんで……。