サックス奏者・canaはなぜライブ配信を続けるのか 「その曲がありたいように」より良い音を追求する想い

canaがライバーを続ける理由

 ライブコミュニケーションアプリ「Pococha(ポコチャ)」で行われた「Your Storyーあなたの物語にはチカラがあるー」で、「cana」が見事インタビュー権を獲得した。サックス奏者のcana はコロナ禍をきっかけに、本格的にライブ配信をスタート。クラシックを身近にしたいとの思いを胸に「Pococha」で出会ったリスナーとの絆を広げ、ついに京都公演を実現させる。日頃のライブ配信で“より良い音”を追求する姿勢やファミリーとの固い結びつきについて、canaにたっぷりと語ってもらった。(Nana Numoto)

――「Pococha」では音楽ライバーとしてサックスを演奏しているcana さんですが始めたのはいつごろですか。

cana

cana:9歳のときに小学校のブラスバンドで始めました。小学校、中学校、高校、大学とずっと部活でサックスをやっていましたね。

――一度就職した後に、音大に進学してサックス奏者の道に進んだそうですね。

Cana:「音楽は趣味の方が幸せに続けられる」と親から言われていたこともあり、一般的な大学を卒業してから楽団がある会社に就職しました。練習の時間が取れるはずだと思って入社したのですが、残業時間も長く、忙しくなってしまって。練習と仕事のどちらをやりたいのかを考えたときに、自分の中では楽器がうまくなる方が大切だと思い、仕事を辞めて音大に進学して楽器の先生の資格を取ることにしました。

――そのようななかで、ライブ配信をやろうと思ったきっかけは?

cana:以前から、モデルの仕事を少しやっていた関係で、他のライブ配信アプリを入れていたんです。そのときに意外と面白いなと気づき、いろんなアプリを見てみようと思ったうちの一つが「Pococha」でした。その後のコロナ禍で、演奏の仕事が全て飛んでしまったときに「今はこれをやれということなのかも」と思い、本格的にライブ配信をするようになりました。

――実際にライブ配信をやってみて、いかがでしたか?

cana:最初はアイテムでの反応がないと「私の演奏に価値がないのかな」という気持ちになってしまいました。ターニングポイントは「Pococha」でバースデーライブをやったこと。そのときのリスナーさんの応援で、きちんと演奏を聴いてくれているんだと実感できて。「想いはちゃんと伝わる」と感じて、そこからは一生懸命吹くようになりました。

――改めてcanaさんの枠がどんな枠なのかも知りたいです。

cana:演奏配信なのですが、リクエストではなく、季節に合わせた内容や自分の今の気持ちに合わせ、吹きたいものを選んでひたすら吹いています。 もともとのレパートリーではクラシックが多いけれど、やはりライブ配信だとウケる曲が違うと感じたことからJ-POPも吹くようになりました。いまはレパートリーが600曲くらいありますが、自分のなかでルールを決めて、1日1曲はクラシックを吹かせてもらうようにしています。みんなに楽しんでもらえて盛り上がる曲の合間に、私の得意な曲をやるようにしていますね。

ーーライブ配信を始めて嬉しかったことはありますか?

cana:もう3年半くらいライブ配信をしていますが、リスナーさんが、だんだん私の好きな曲や私の音に合う曲をわかってくれるようになり「canaの演奏のこの曲がめっちゃ好き」と言ってくれたんです。さらに、クラシックに全然興味がなかった人たちが、私の演奏がきっかけで興味を持ってくれて。他の曲もいろいろと聴いてくれたりと、そういう変化がすごく嬉しかったです。

――リスナーさんにとっても新しい曲との出会いになっているなんて、すごいですね。

cana:私がリクエストをとらない理由はそこなんです。リスナーさんは自分の知っている曲しかリクエストできないけれど、私が曲を提案することで新たな曲との出会いが生まれるかもしれません。演奏家としてそうありたいと思っているので、ライブ配信でも同じように心がけています。

――サックスのライブ配信をする上で工夫していることがあれば教えてください。

cana:ミキサーを経由して吹いていて、入力はサックス用のマイクと手元のマイクを分けています。ミキサーは、いまは3台目。最初はとても小さなものでしたが、いまではスタジオにあるような大きなものを使っています。私は、“いい音”のためにはお金をかけようと思っています。防音室もはじめは0.8畳でしたが6畳くらいの広さになりました。クラシックの場合、サックスのベルの近くよりも、遠くにマイクをおいて録った方がいい音になるんです。なるべく“空間に響く音”を届けられたらいいなと思い、そのための工夫をしています。

――なるほど、ありがとうございます。では、canaさんの枠のリスナーさんはどんな雰囲気の方が多いですか?

cana:優しい人が多いです。静かに応援してくれる方が多いですね。私のやりたいことを尊重して、見守ってくれています。

――「Pococha」で出会った方が実際の演奏会に来てくれることもあるのでしょうか。

cana:たくさん来てくれています。私の最終目標は生音を聴いてもらうこと。だからライブ配信はしているけれど、生の演奏会にも来てもらいたいんです。演奏会では自分の得意な演奏をクローズアップして、クラシックと映画音楽もやっています。これまでは地元の宮城といま住んでいる東京の2カ所でしかコンサートの経験がなかったのですが、ライブ配信を始めて関西のリスナーさんも増えたことで、、京都で2回演奏会を実現させました。これはライブ配信で出会ったお客さんが中心だったので、「Pococha」があるからこその演奏会だと思っています。

――今回、なぜ「Your Storyーあなたの物語にはチカラがあるー」に挑戦しようと思いましたか。

cana:まだ私のライブ配信を見たことがない人はたくさんいるので、そういう方に私がやっていることを紹介したかったからです。世の中のライブ配信に対するイメージと、私が実際にやっているライブ配信は少し違うような気がしています。私にとってのライブ配信は「ありのままの自分でいる」場所だし、普段の演奏会や生演奏を聴きに来てもらうことにつながる活動でもあります。そのことを伝えられる場があればいいなという気持ちで、このイベントに挑戦しました。

――実際に音楽分野でライブ配信をやってみて、よかったなと思うことは?

cana:やはり全国にファンができたことです。京都公演が実現したことも大きな出来事ですね。あとはやりたいことの幅が広がりました。唱歌の「朧月夜(おぼろづきよ)」など、和風の曲に挑戦するようになったのはライブ配信がきっかけでした。私は演奏の内容と関係のない衣装は着ないと決めているのですが、浴衣を着てライブ配信をする人を見て、私もいつか浴衣を着て吹いてみたいと思っていたんです。“浴衣を着て吹くことで伝わる曲”ってなんだろうと考えた時に、文部省唱歌がいいかもと思いついて。それで「朧月夜」のような綺麗な曲をやってみたらクラシックサックスにすごく合うという発見がありました。それを演奏会でもやってみようという動きに繋がったので、ライブ配信のなかで挑戦してみてよかった曲を演奏会で吹くという流れも面白いなと思っています。

――演奏家としての幅も広がったのですね。「Pococha」を始めて嬉しかったことはたくさん話してもらいましたが、逆に大変だったこともあると思います。

cana:やはり伸ばすためにどうするかというところです。盛り上がる曲の方が絶対ウケはいいんですよ。でも自分が得意なのは、それこそ「ムーン・リバー」みたいな曲。ちょっとしっとりした曲の方が自分の音が映えると思うので、そこのバランスをどうやってとっていくのかでずっと悩み続けていました。最近はみんなが「いいね」と言ってくれるので気持ちが楽になりましたが、枠の体制を確立するまでは結構苦しかったです。

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