モダン勢・ハイタニが躍進 EVO 2023『スト6』競技結果から操作タイプの議論を再考する

『スト6』操作タイプ議論を再考

 8月5日、世界規模の格闘ゲームの祭典・The Evolution Championship Series 2023(以下、EVO 2023)が開幕した。

 2023年6月にリリースを迎えた『ストリートファイター6』にとっては、初の大きな大会となった同イベント。発売前後には、操作タイプをめぐる議論も加熱した経緯があったことで、さらなる注目を集めた。

 本稿では、EVO 2023における『ストリートファイター6』の競技結果から、「クラシック」「モダン」の議論を再考する。

四半世紀以上の歴史を持つ格闘ゲームの祭典『EVO』

対戦格闘ゲームに特化したeスポーツ大会『EVO』
対戦格闘ゲームに特化したeスポーツ大会『EVO』

 The Evolution Championship Series(以下、EVO)は、対戦格闘ゲームに特化したeスポーツ大会だ。『Battle by the Bay』という名で1995年に発足して以降、基本的には毎年欠かすことなく、夏のアメリカを舞台に開催されている(※)。2018年からは日本でも、地区大会として『EVO Japan』が開かれるようになった。世界で最も有名であると言っても過言ではないeスポーツ大会のひとつがEVOである。

 競技種目には例年、そのときポピュラーなタイトルなどが運営によって選定されている。“格闘ゲームの祭典”という建付けであるため、同ジャンル以外から選ばれることは多くないが、2006年には例外的に『マリオカートDS』がラインアップされた。

 EVO 2023で競技種目に選ばれたのは、『ストリートファイター6』『GUILTY GEAR -STRIVE-』『ドラゴンボール ファイターズ』『鉄拳7』『THE KING OF FIGHTERS XV』『MELTY BLOOD: TYPE LUMINA』『Mortal Kombat 11 Ultimate』『ULTIMATE MARVEL VS. CAPCOM 3』の8タイトル。うち『ストリートファイター6』は、2023年6月にリリースされたばかりであるため、今回が初の大きな大会となった。向こう1年のシーンの情勢を占う意味でも、EVOは、存在意義・注目度ともに高いイベントとなっている。

※2020年はゲーム会社のボイコット、2021年・本選は新型コロナウイルスの感染拡大の影響により開催中止となった。

EVO 2023で『ストリートファイター6』に注目が集まった背景は?

 今大会において、より多くのファンの視線が注がれた『ストリートファイター6』をめぐっては、発売前後から新たな操作システム「モダン」が話題を集めていた。「モダン」とは、必殺技ボタン、もしくはそれに方向キーなどを組み合わせることで、各キャラクターが持つ必殺技やコンボを複雑な入力なしで簡単に繰り出せる操作タイプのこと。格闘ゲームにとって参入障壁となっていた入力面を補助することでビギナーにも門戸を開こうとする、『ストリートファイター6』で初めて実装された仕組みである。

ボタン1つで波動拳!『ストリートファイター6』モダンタイプ実践映像【リュウ編】

 ボタンのみで当該操作を完結できる点が特長で、入力の難しさを緩和し、ミスを防ぐ。一方、「必殺技の火力が低く設定されている」「弱・中・強ボタンによる必殺技の打ち分けができないキャラが多い」「一部通常技・特殊技・必殺技がそもそも使えない」といったデメリットも存在する。開発・発売元であるカプコンは同システムの導入により、格闘ゲームにおける操作の簡略化(≒参入障壁の撤廃)を目指している。ジャンル全体を盛り上げていくために、こうした“テコ入れ”が必要と考えたというわけだ。

 しかしながら、「モダン」について、一部のトッププレイヤーたちは、「格闘ゲーム人口が増えることはプラス」としながらも、「試合中の駆け引きを大きく変える可能性がある」と、現行での運用に難色を示していた。「これまで築き、守ってきた同ジャンルの文化性やゲーム性を破壊しかねないものになる」として、危惧してきた経緯がある。

 初の大きな大会を迎えた『ストリートファイター6』に注目が集まった背景には、「ストリートファイター」シリーズがジャンルを牽引し、いまなお人気タイトル・人気種目であり続けていることとは別に、「新たな操作タイプがどこまで競技シーンの環境を変えるか」に視線が注がれた部分もあるだろう。その論争に関する現時点での回答を見せてくれたのが、EVO 2023だった。

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